事例|キャタピラー九州株式会社 ~2 in 1型PCとiPhoneを配布し デバイス環境を大きく刷新

本 社:福岡県筑紫野市
設立:1965年
資本金: 1億円
事業内容:米キャタピラー社の建設機械、道路機械、発電機・船舶用エンジン・産業用エンジン、発電機・環境リサイクル機器などの販売、新車・中古車の販売とレンタル、部品販売・修理販売・建設機械の教習など
https://www.cat-kyushu.co.jp/

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社内の固定電話を廃止
2 in 1型PCとiPhoneを配布


 キャタピラー九州ではシステム/38時代から、長年にわたりIBM i上で基幹システムを運用している。

 同社では2018〜2019年にかけ、ITに関して大きく2つの取り組みを進めてきた。1つは固定電話、スマートデバイス、PCなどを含めた端末デバイスをトータルに刷新すること。もう1つは内部統制の強化に対応し、基幹システムと連携した業務ワークフローシステムを実現することである。

 以下に詳しく、その取り組みを見ていこう。

 同社では2018年後半に具体的なデバイス計画を決定し、2019年度から本格的な展開を開始した。

 まずは社内の固定電話を全面的に廃止し、全社員にiPhoneを配布する。次に営業系の社員を中心に「2 in 1型」のPCを配布する。そしてそれ以外のPCに対しては、Windows 10に移行するという内容である。

 2 in 1型のPCは、Windows 10を搭載するノートPCのように使ったり、キーボードを取り外してタブレットのように使用できるのが特徴である。WiFiモデルなので、営業担当者はiPhoneのテザリング機能を利用してアクセスする。

 今までは携帯電話、ノートPC、タブレットをワンセットで携帯して外出していたが、今は2 in 1型PCとiPhoneが営業の基本セットである。

 すでに全社員へのiPhone配布を完了し、 2019年5〜12月の予定で、営業担当者に2 in 1型PCの導入を進めている。7拠点の支社・支店で配布を完了し、現在は残る20営業所への展開を行っている段階にある。

 固定電話の廃止とiPhoneへの移行で、通信コストを大きく削減したのに加え、2 in 1型PCとiPhoneの配布により、社外での業務効率が向上し、働き方改革への貢献も見られるという。

 また今年5月からはWindows 10への移行と並行して、IBM iのエミュレータ機能をサポートする「IBM i Access Client Solutions」(ACS)の導入にも着手している。

 


LongRangeを活用し
タブレットアプリケーションを開発

 同社ではここ数年、進化するデバイスを利用して、業務の生産性をどう高めるかを考え続けてきた。

 現場業務の効率化を目指す取り組みとしては、2017年から「LongRange」(ランサ・ジャパン)を導入し、RPGのスキルを利用して、iPadのネイティブアプリケーション開発をスタートさせた。

 第1弾の開発対象に選んだのは、キャタピラー製品の不具合情報を共有するアプリケーションである。同社では製品の初期不良や発生頻度の多い不具合などについて、メーカーである米キャタピラー社にレポートし、有償・無償の修理内容を判断したり、今後の品質向上に役立てている。

 今まではこうしたレポートをExcelのフォーマットで作成し、デジタルカメラで撮影した故障個所の写真データを貼り込み、PDFに変換して米国に送っていた。

 LongRangeによるアプリケーションは、キャタピラー製品が稼働する建設現場でのiPad利用を前提に開発されている。

 最初の画面で担当者や部署、不具合の件名・区分などを入力する(バックグラウンドでIBM iの基幹DBからデータを受信)。次にiPadで製品に添付されたQRコードをスキャンし、機種やシリアル番号などの固有情報を自動入力する。

 さらにiPadで故障個所を撮影すると、その写真データをレポートに自動で貼り込む。終了ボタンを押すと、データがIBM i側へ送信され、スプールデータからPDFを生成する仕組みである。このアプリケーションは、2018年4月に完成している。

 続く第2弾の開発対象となったのは、レンタル機械の入出庫管理システムである。製品をレンタルする場合、返却の際に数量や損傷の有無などを顧客と確認するため、入出庫時に証書を残す必要がある。

 現在は紙ベースでやり取りしているこの証書を、iPadでペーパレス化しようという試みである。

 最初の画面で、車両を選択する(IBM iの基幹DBからデータを表示)。次に点検項目と現在の状態を入力する。そしてiPadで車両を撮影し、その写真データを貼り込む。

 顧客はその場で、iPadを見ながら貸出情報を確認したうえで、電子署名する。入力が完了したら、データはIBM iへ送信され、PDFを作成。顧客へメール送信、もしくは紙で受け渡す仕組みである(図表1)。

 

 顧客の目の前で撮影し、システムに登録するのでコンセンサスを取りやすい。またその場で署名して書類をメール送信するので、トラブルを未然に防ぐ効果もある。

 第1弾のアプリケーションはキャタピラージャパンが同種のサービス提供を開始したので、いったん利用を停止している。また第2弾のアプリケーションは、2019年8月にキャタピラージャパンから営業譲渡を受け、キャタピラー九州の子会社となったCatレンタル九州合同会社での利用が計画されている。

 同社はこのアプリケーション開発で得た使い勝手や性能、業務との適合性などを検証し、より現場に近い業務でデバイスをどのように利用していくかの青写真を描いていく方針である。

 

基幹システムと連携した
ワークフローシステムを構築

 同社が今年、もう1つ注力してきたのが基幹システムと連携したワークフローの実現である。

 もともと同社では交通費や出張旅費などの経費精算で、すでに承認ワークフローシステムを利用している。しかしこれはワークフローだけの閉じた運用で、基幹システムとは連携していない。

 2017年10月にJR九州が同社の全株式を取得してグループ子会社となったのを機に、親会社に準じた内部統制の強化が図られてきた。その強化対象となった業務の1つに、新車・中古車等の車両を販売するときに提出される各種の書類管理・承認業務がある。

 車両を販売する場合、担当者は受注伺書、見積書、注文書、受領書、売買契約書、請求書、ファイナンスリース伺い、販売稟議書という合計8種類の書類を作成し、その都度、承認・決済を取りながら顧客とのやり取りを進めていく。

 今までは各担当者がExcelで書類のフォームを作成し、紙に印刷して承認・決済を得たり、顧客に提出するなどしていた。

 しかしこうした運用では、担当者ごとに作成するフォームが異なったり、データの重複入力が発生する。記載するデータ項目は130種類以上に及び、それを基幹システムへ入力するのも相当な業務量となっていた。

 かねてから業務効率化への対応が必要との指摘が寄せられていたのに加え、申請や承認などの業務の流れをデジタル化し、標準化することが、内部統制の観点からも求められていた。

 そこで情報システム課では、この業務をワークフロー化しようと考えたのである(図表2)。

 

 ワークフロー製品を選ぶ際にポイントとなったのは、IBM i上の基幹システムとスムーズに連携可能なインターフェースを備える点である。

「各書類を作成するのに営業担当者が何度もデータをExcelに入力し、最終的には業務担当者がIBM iに入力していました。業務のプロセスで発生する共通項目の重複入力を排除し、一度入力したデータは他部門でも再利用可能にし、最終的に基幹システムへ自動連携できるように、IBM iとの連携性を重視して、ワークフロー製品を探しました」と語るのは、業務本部 業務部次長 兼 情報システム課課長の加藤玲氏である。

加藤 玲氏
業務本部 業務部 次長
兼 情報システム課 課長

 

 同社では、代表的な8つのワークフロー製品を綿密に検討した。そのなかで基幹システムとの連携性という観点で選んだのが、NECのWeb型承認ワークフローシステム「EXPLANNER/FLⅡ」である。

 同製品はJDBCで多彩なシステムと連携するインターフェースを備えており、他製品と比較して、IBM i上の基幹システムと最もスムーズに接続できる点を評価して導入を決定した。

 検討開始は2018年秋。約半年の検討期間を経て、2019年春に製品を決定した。現在は2020年4月の本稼働を目標に、ワークフローの導入・準備作業を進めている段階だ。

 このワークフローが無事に稼働し次第、レンタル業務など基幹システムとの連携が必要な各種申請業務へと利用を拡大していく方針である。

 同社はIBM iを中核に、デバイスからワークフローまで業務システムをきめ細かく見直しながら、さらにダイナミックな運用に向けて、前進していく。

 

[i Magazine 2019 Winter掲載]