Home 事例-IBM i関連 東北電化工業|3.11を契機に基幹システムを刷新、情報系・セキュリティ対策へと改革の取り組みが続く

東北電化工業|3.11を契機に基幹システムを刷新、情報系・セキュリティ対策へと改革の取り組みが続く

by kusui

東北電化工業では、東日本大震災を契機として基幹システムの刷新に着手、IBM iからWindowsサーバーへの移行を実施した。さらに、情報系システムの改革にも乗り出し、ノーツと外部メールサーバーをOffice 365へ移行、情報セキュリティ規定の策定を進めるなど、改革は現在も続いている。

 

 

IBM iの原価管理データを
ほぼすべてWindowsへ移行

 山形県全域と宮城・福島の両県に拠点を置き、電気工事業を展開する東北電化工業は、東日本大震災の際、宮城・福島沿岸の現場事務所や仙台市内の拠点で大きな被害をこうむった。さいわい、山形市にある本社は無事で、基幹系、情報系サーバーの大半を1年前にデータセンターへ移設していたため、業務に支障をきたすことなく済んだ。

 しかしその時は大事に至らなかったものの、震災を機にBCP対策の不備や基幹システムの脆弱性を強く意識することになり、2011年末に経営層からシステム刷新の承認が下りると、ただちにシステムの再構築に向けて動き出した。

 震災の瞬間、本社にいて上長が出張で不在の中、現場の判断でIBM iや各種サーバーのシャットダウンを続けた経営情報戦略室の友部奈津美主任(情報ストラテジー課)は、「サーバー内のデータを消失させてはならないと、必死で作業を続けました。その後しばらくの間、計画停電が定期的に実施されましたが、その都度、サーバーやストレージのシャットダウンと起動を繰り返しました。起動のたびにデータが無事か不安だったことを思い出します」と、当時の状況を振り返る。

 

友部 奈津美氏 経営情報戦略室 情報ストラテジー課主任(職位は取材当時)

 

 システム刷新の動きは、2012年春に複数のベンダーへRFPを送付することから始まった。同年8月に各社からプレゼンを受け、9月に1社に決定。10月から社員12名で構成されるワーキンググループを結成して、要件定義のための作業を開始するというスケジュールで進んだ。

 同社はそれまで20年来のIBM iユーザーであった。IBM i上で見積、販売・原価管理、財務会計、人事・給与などすべての基幹システムを稼働させてきた。しかしその基幹システムは、20年前に開発したシステムをベースにWeb化し、改修を繰り返してきたものである。そのため、システム自体の陳腐化、肥大化が目立っていた。

「たとえば、コード体系が当時のままで“ケタあふれ”を起こし、暫定対応が必要になっていました。また、電気工事業という業務の特性上、10年、20年の長期スパンでデータを保持する必要があるにもかかわらず、データ量が膨大で限界にきていましたし、さらには潜在的なバグも未だに懸念されていました」と友部氏は語る。

 再構築は「リセット」の考え方で進められた。「部分的な改修ではシステムの品質を保てない」(友部氏)と判断したからである。

 最終的に選択した基盤は、IBM iをWindowsサーバーへ切り換え、各種サーバーやその他の機器、ネットワークなどを徹底して冗長化するというものである。また基幹システムは、ERPパッケージをカスタマイズして利用することにした。カスタマイズする項目は、ワーキンググループの中で入念にFit&Gapを行い、「当社独自のやり方として、どうしても譲れないもの」(友部氏)をカスタマイズで対応することとした。開発は2013年春から始まった。

 大変だったのは、IBM i上にあった膨大な量の原価管理データの移行である。登録済みの工事件数は10万件以上あり、そのそれぞれに材料の明細が紐付いていた。1億円規模の工事であれば、数千種類の材料明細がある。10年前の明細データであっても、建物のメンテナンスや改修の際、施工当時の情報が必要になるため残す必要がある。「IBM i上の原価管理データはすべて移行しましたが、明細によってデータ・フォーマットがまちまちだったので、新しいシステムのデータ型式に合わせることに苦労しました」と友部氏は言う。

 新システムでは、承認ワークフローを導入した。従来は、書類への押印で承認処理を行っていたが、出先の現場事務所に詰めている時などはタイミングよく承認を受けられない場合があり、発注後に承認をもらうことが、やむを得ず行われていた。それを新システムではどこからでも申請・承認が行えるようにし、承認が下りない限り、作業が前へ進められない仕組みにした。

 システムのカットオーバーは2014年1月。IBM i上の基幹システムを丸ごと作り変えた新しい基幹システムがスタートした。

 

Office 365を採用し
情報系を一本化

 しかし同社のシステム刷新の取り組みは、それだけでは終わらなかった。基幹システムに続けて、2014年9月からは15年以上利用してきたノーツをマイクロソフトのOffice 365へ切り替える作業に着手した。

「当社では、ノーツのほかに外部のメールサーバーを利用してきましたが、情報系を一本化し、運用負荷を軽減できる方法としてクラウドサービスのOffice 365を選択しました。Office 365はActive Directoryとの連携が容易なので、今後の展開がいろいろと期待できることも魅力でした」と、友部氏は切り替えの理由を語る。Office 365は2015年4月にサービスインしている。

 そして、次に実施したのが「情報セキュリティ規程」の策定である。同社には、以前から「セキュリティ・ポリシー」と「セキュリティ規程」があったが、「現在の実情に合わせて見直しを行い、作り直した」(友部氏)ものだ。

 近年、同社では建設現場付近に事務所を設置し、担当者が常駐する体制の工事が増加している。その事務所にはLAN・WANが引かれ、本社・拠点と同じシステム環境で作業できる。当然、基幹システムや各種サーバーにアクセス可能なノートPCなども配備される。そのため新しい情報セキュリティ規程では、現場事務所における機器の取り扱い方法やノートPCを持ち出す際のルールなど、同社独自の内容をきめ細かく明記した。

「最近では、ゼネコンや自治体などからの工事発注の際に、情報セキュリティ規程の提示を求められることもあります。しかしそのためだけではなく、業務の実情に合った規程は、事業継続の観点からも不可欠です。新しい規程の適用はこの4月にスタートしましたが、今後も時々の状況に合わせてバージョンアップを継続していく予定です」(友部氏)

 同社の工事現場では今、ワークスタイル変革の取り組みが始まっている。現場の作業員にタブレットをもたせ、その活用によって仕事の進め方や働き方を変えるのが狙いである。現在はテスト運用の段階で、少数の希望者のみの利用としているが、従来プリントアウトして持参していた図面やカタログを、タブレットの表示で代替させる例などが報告されている。

 友部氏は、「基幹システムの刷新をはじめとして、システム基盤の整備という大きな取り組みをここ数年、続けてきましたが、まだまだ途中経過です。どうすれば会社がさらに成長していくための基盤を整備できるのか、システム利用者・管理者ともに全社員がより働きやすい環境を作るには何をすればよいのか、システム担当としてやるべきことは、まだたくさんあると思っています」と話す。

 

・・・・・・・・

Company Profile

東北電化工業株式会社

本社:山形県山形市
設立:1941年
資本金:7500万円
売上高:99億2000万円
従業員数:332名
事業内容:電気工事業および関連事業
http://www.tohoku-denka.co.jp/

 

[i Magazine 2016 Summer(2016年5月)掲載]

related posts