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気づきをもらい、コツコツ実装|「ホウレンソウ」は時代遅れというけれど(倉橋徹次)

こんにちは、株式会社ZeroDivideの倉橋です。

最近、読んだネットの記事で「ホウレンソウ=時代遅れ」というものをいくつか目にしました。説明するまでもないかもしれませんが、「ホウレンソウ」とは「報告・連絡・相談」のことで、日本のビジネスマンであれば基本的な知識だと思います。

記事によれば「ホウレンソウ」は過去の文化であり、テレワークやビジネスの国際化などにより職場環境が変わった現代では、時代遅れの遺物のようなものだそうです。

ただし私個人としては、とてもそうは思えません。

私は自身の会社で働いているわけですが、ほとんどの仕事は1人で行います。お客様先に伺う場合も自分でアポイントを取りますし、開発も自分でスケジュール管理を行います。基本的にはすべて自分で考えて自分で決断を下して行動しているわけです。

しかし外部の人間と連携をする上では、「ホウレンソウ」は欠かせません。こちらからは必要に応じて情報の連携を取るように心がけています。皆さんのメールもCCがたくさん付いていると思いますが、私のメールもご多分に漏れずにそうなっています。お客様と直接連絡を取る場合でも、代理店側の担当営業がわかる時はCCを入れるように心掛けています。

テレワークの導入やビジネスの国際化などにより職場環境が変わったり、一緒に仕事をする人種に変化があることも多くなっていることは理解できますが、だからと言って「ホウレンソウ」がなくなるわけではなく、単に形を変えるだけではないかと思っています。そうでなければ、オンライン会議やビジネスチャットがこんなに盛況なわけがありません。

重要なことは「なぜそれが生まれたのか?」という根本的な欲求に立ち返って、今の時代に合っている手段を探すことではないでしょうか。「一部の人間にとって不要だからなくなっていい」という考え方は、あまりに近視眼的だなぁ~と思うわけです。

 

ビジネスの国際化というけれど

ビジネスの国際化という言葉も良く耳にします。私は残念ながら国内のお客様しかビジネスの対象ではありませんので、海外の方と仕事をした経験はほぼありません。せいぜいお客様先に外国人の技術者の方がいらっしゃるくらいでしょうか。

ただ、個人的な考えではありますが、国際化とは海外のルールを日本に持ち込むことではなく、海外と日本の違いを認識した上で、それぞれの文化間でうまく連携を取っていくことではないかと考えています。要はお互いの文化の特質を活かしたビジネス環境を考えるべきであり、ビジネスのために世界を均質化するのは間違っている、ということです。

例えば最初に話した「ホウレンソウ」ですが、海外にはこうしたものはないそうで、もし上司に対して「ホウレンソウ」に沿った行動を行うと怒られるそうです。日本では逆に、「ホウレンソウ」を行わずに独断専行すると怒られますよね。

ただ、「ホウレンソウ」を通して文化の違いを見てみると、日本と海外の根本的な違いが見えてきます。つまり組織の成り立ちが日本は「公」を主体にしているのに対して、海外は「個」を主体にしている点です。

海外の組織、つまり「個」を主体にした組織の場合、「公」は「個の集合体」のように見えます。そのため個々人の仕事の範囲は明確だし、パーツを取り換えるように個人を置き換えることができます。ワークシェアリングなどはやりやすい組織運営と言えますね。言い方が悪いのですが、人を「パーツ」のように扱うことで、「会社」という「機械」を合理的に維持・管理できる優れた方法だと言えます。

逆に、日本の組織は「公」を主体に考えてきたため、個の位置づけは「組織に属する個」となります。そのため公の目的を達成するために個が存在することになるので、個人の仕事の範囲はあいまいです。なぜなら決められた仕事以外でも、時として目的達成のために個人が能力を発揮することが求められるからです。要は皆が同じ方向を向いて力を合わせて仕事に励むわけです。

ただしこういった組織運営は問題もはらんでいます。

例えば、人の異動や人員の入れ替えにより今までのような仕事ができなくなるという問題があります。これは個人の資質や能力に依存した現場が運営されていることが原因の場合もあります。また連携により仕事が進んでいくため、特定の個人に仕事が集中していることが見えにくいという問題もあります。最悪の場合、キーとなる人間が抜けることで仕事自体が瓦解してしまう事態も起こりえます。お互いが相互に影響を与え合うためにワークシェアリングには向かない働き方でもあります。

一見すると「個の集合体」である海外の組織運営のほうが機能するのが難しそうですが、実際には相互に影響を与えあってしまう日本型の組織運営のほうがハードルはずっと高いように感じます。

そのため、会社組織としては海外のような組織運営が喜ばれるようです。事実こうした方向に組織を変えていこうという風潮が強いように感じます。派遣社員や契約社員などは、まさにこうした「人間のパーツ化」の最たるもののように見えます。

しかし、考えてみてほしいのですが、世界的に長寿の企業は日本に多いわけですし、サービスや製品の品質についても日本は世界トップクラスを誇ります。つまり日本の昔ながらの「公」を主体にした組織運営は、西洋的な合理性に欠けるように見えて、実は製品やサービスを生み出す「器」として見た場合、大変優れたものだと言えるのではないでしょうか。

むしろ日本的な組織運営が難しくなったのは、社会が複雑になったとか、時代が変わったからではなく、日本人が元々持っていた感性や哲学から遠ざかって、うわべだけを西洋的な組織運営に切り替えたからではないでしょうか。

海外を参考にするのはいいと思います。でも自分たちは日本人なんだから、取り込むなら「日本式」に作り変えて取り込んでいかなければいけません。

 

自分は自分でよい

私自身、会社を経営していますし、独自の製品を開発して販売やサポートを行っているわけですが、弊社と関係のある販売代理店などでは他社製品の販売に力を入れているところが多いのが実情のようです。というのも、実際にお客様に直接呼ばれて話を聞く時に、弊社の製品を扱っている代理店が出入りしたにも関わらず、紹介した製品は他社製品だったりするわけです。

こういう時は非常に残念な気がしていました。

ただ、こうしたことが比較的長く続いてくれたおかげもあってか、以前からあった「自分は自分でよい」という意識がますます強くなっています。いろいろな機能実装の案があるのに、なかなか手が付けられていないのが実状なのですが、これからも自分が面白いと思う機能やお客様に喜んでもらえるような機能を実装していけるような、そんな我が道を楽しく歩んでいけたらと思っております。


気づきをもらい、コツコツ実装

 

第1回 開発について日々感じていること

第2回 開発した「日本語機能」への反応に開発者として思うこと

第3回 「ツールと設計書」の関係は「カーナビと地図」に似ている