第一屋製パン|5工場5台の国産汎用機をIBM iへ統合、COBOLのストレートコンバージョンで基幹プラットフォームを刷新

 

 

国産汎用機からIBM iへ
COBOLのストレートコンバージョン

「第一パン」の商標で知られる第一屋製パンは、1947年創業の長い歴史のなかで培われたパンおよび菓子分野の技術力・商品力をベースに、業績を順調に拡大してきた。モットーは、「おいしさに まごころこめて」である。

 甘く煮込んだリンゴをパン生地に入れた「アップルリング」は、1982年の発売直後から爆発的な売れ行きで注目を集め、今も愛され続ける超ロングセラー商品になっている。また1998年に発売したポケモンパンシリーズもロングラン・ヒットを続けており、同社の看板商品に成長した。

 同社は40年近く使い続けた国産汎用機の基幹システムを、COBOLのストレートコンバージョンによりPower SystemsのIBM iへ移行し、2015年から新たな環境で運用をスタートさせている。このコンバージョンの経緯を詳しく見てみよう。

 すでに2000年問題に対応していたころから、同社では汎用機の将来性を憂慮し、基幹システムの移行を検討していたという。しかしその後も実現には至らず、汎用機のモデルをリプレースした2011年に、「これを最後のリプレースとし、次期更改までには基幹システムの移行を実現する」と決定した。

 コーポレート本部業務部のITソリューショングループではこの決定を受けて、すぐに各種セミナーへ参加するなどして、新たな基幹プラットフォームに関する情報収集を開始した。

 同社が新しいプラットフォームの要件としたのは大きく3つ。まず長年にわたり蓄積してきたCOBOLによる開発スキルを活かせること。次に40年近くを費やして完成させた既存システムの強みを継承しつつ、業界・業務の変化に応じた機能の追加や強化、新しいテクノロジーの利用を可能にすること。そして汎用機と同等の安定性を備えること。

 2013年半ばには、上記要件を満たす選択肢を3つに絞り込んだ。オープン系(WindowsもしくはLinux)サーバー、Power Systems上のIBM i、そして国産汎用機のメーカーが提案するオフコン系サーバーである。いずれも現行のCOBOL資産のストレートコンバージョンが前提であった。

 同社では各工場間でのデータ通信が頻繁であったため、それぞれの提案に対して、半年以上をかけODBCによるデータ通信テストを実施。その結果、JBCCが提案していたIBM iを採用した。その理由を、ITソリューショングループの勅使河原厚樹グループリーダーは次のように語る。

「オープン系サーバーでは汎用機と比べた安定性・信頼性に不安を感じる一方、国産汎用機のメーカーが提案する後継製品では、今までの課題を解決できないと考えました。IBM iであれば、汎用機と同等の安定性を備えると同時に、外部とのスムーズなデータ連携や新たなニーズに柔軟に対応できると判断し、最終的に導入を決定しました」

 

勅使河原 厚樹 氏 コーポレート本部 業務部 ITソリューショングループ グループリーダー

 

 

障害対策として
2重化体制を実現

 2014年6月には、本社にPower 720を導入し、同年9月にマイグレーションプロジェクトがスタートした。

 大阪、金町、小平、高崎、横浜の5工場では汎用機上で、「受注業務→集計→生産指示→配送指示→納品伝票発行」や「売上管理」「主要マスター管理」などの基幹系システムを運用していた(高崎では本社システムも稼働)。基本的な設計は同じであるものの、各工場の特性を反映した個別のシステムが稼働していたのである。

 プロジェクトではこれらのシステムを1工場ずつ、IBM i上に設定した5つのLPARへ段階的に移行していくことになった。5工場で稼働していたCOBOLソースや画面ファイル、CLISTは合計で約1万5000本。1工場で平均3000本になる。

 最初の移行は、大阪の工場でスタートした。JBCCとともに調査分析、機能設計、試作、ツール開発と量産設計などを実施する「移行設計」に約6カ月、ツールによる量産(機械変換)と手作業による部分的な変換およびコンパイルに約2カ月をかけ、変換が終了したプログラムから順次、テスト・検証を行った。そして1年後の2015年9月に、大阪での本稼働がスタート。順調な運用を確認すると同時に、汎用機を撤去した。

 その後、同じプロセスを約7カ月で終了し、2016年7月に金町工場が本稼働を迎えた。2017年4月には小平、10月には高崎、2018年5月には横浜で移行が完了する予定である。

 また2016年7月には、バックアップ機としてPower S814を導入。HAソリューションに「MIMIX」を採用し、2重化体制を実現している。最初は金町と大阪で同期を開始。残る3工場でも移行が完了し次第、バックアップ機と同期させていく予定である。

「今までは5工場に5台の汎用機を導入していましたが、今後はIBM iに統合するため、万一障害が発生した場合、業務停止の影響範囲が全工場に及びます。そのため、2重化体制が必須と判断しました。ただし現時点では障害対策の意味合いが大きいので、本番機とバックアップ機の双方を本社内に設置しています。今後は切り替え要員の配置などを考慮しつつ、設置場所の変更が必要と考えています」と、ITソリューショングループの吉田隆哉マネージャーは語る。

 

吉田 隆哉 氏 コーポレート本部 業務部 ITソリューショングループ マネージャー

 

 同社は今回のマイグレーションを完了したあと、2020年には全工場の基幹系システム統合を見据えている。IBM i導入によるプラットフォーム変革は、その準備段階と言えそうだ。

 

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COMPANY PROFILE

第一屋製パン株式会社

本  社:東京都小平市
設  立:1947年
資本金:33億556万円
売上高:238億円(2015年度)
従業員数:1511名(2015年12月末)
事業内容:各種パン類、和菓子、洋菓子、クッキー等の製造および販売
http://www.daiichipan.co.jp/

[i Magazine 2017 Sprng(2017年2月)掲載]