米国ならではのメインフレーム研究、成果に学び、視野を広げ、知識を深める ~SHARE Sacramento 2018 Report

米カリフォルニア州サクラメントで3月11日(日)〜16日(金)の6日間、「SHARE Sacramento 2018」が開催された。

 SHAREは年2回、米国で開催されるカンファレンスで、各種セッション、ハンズオンラボ、展示会など、多彩なプログラムで構成される。IBMユーザー、IBMエンジニア、関連ベンダーなど、IBM Zに携わる多くの人々が参加している。

 筆者はもともと日本GUIDE/SHARE(JGS)で研究活動に取り組んでいた経験があり、その縁で毎年3月に開催されるJGS主催のツアーに参加した。

 今回のSHAREでは、伝統的なIBM Zメインフレーム、z/OSと各種ソフトウェアのマイグレーション、新機能の紹介をはじめ、DevOps、機械学習、ブロックチェーンなど多彩なテーマについてセッションが開催された。

 とくに関心の高かったテーマの1つとして、セキュリティが挙げられる。z14ではこれまでのセキュリティ機能に加えて、サーバー全体の暗号化を実行する「File or Dataset Level Encryption」などの機能に大きな関心が集まっており、その機能や性能への影響を解説するセッションが多数エントリーされていた。

 また、z/OSに対するハッキングをテーマにした基調講演にはその分野の第一人者が登壇し、ハッキングツールの開発から実際にハッキングするまでのプロセスを実証した研究成果が発表された。z/OSへの現実的なハッキングリスクを目の当たりにし、会場も大いに盛り上がっていた。

 昨今のITトレンドとして注目されるDevOpsやブロックチェーン、機械学習、クラウドコンピューティングに関するセッションも多数開催された。筆者が参加したセッションから、z/OS上での機械学習をテーマにした以下の2つを紹介する。

①学習結果をもとにアプリケーションモデルを構築・開発し、リリースまでを1つのデプロイメントパイプラインとして管理する手法を紹介する。

②クラウドとオンプレミスの優位性を比較し、大量データ通信に伴うコストや情報漏洩リスクの観点から、オンプレミスの優位性を説く。

 ①のセッションでは、昨今のITトレンドを反映する具体的なシステム構築事例が紹介され、とても参考になった。②では、オンプレミスで運用できる物理的な環境を用意できるのなら、十分検討の余地があると考えられ、選択肢の広がりを感じた。

 ほかにもz/OS V2R3へのマイグレーションを解説するセッションや、ハンズオンラボでz/Linux とDockerによりアプリケーションサーバーを稼働させる実習など、多くのセッションとイベントに参加して新たな知見を得られ、大変有意義な時間を過ごし。

 もう1つの感想として、米国のメインフレームユーザーは技術の深耕・継承に向けてとても努力していると感じた。

 エンジニアのなかでもスペシャリスト、さらには「zマニア」と呼ばれる人々が発表者として登場するセッションが多数見受けられた。彼らの活動がほかのエンジニアに伝播することで、技術の向上へとつながっているように思う。

 その一方、後進の育成については、米国も日本と同じように危機感を抱いている。JGS委員会の大内美樹委員長に随伴し、現地のSHARE事務局メンバーと意見交換する機会を得たが、そこでも後進育成が話題に上がり、「日本ではどうしているのか」と質問される場面があった。カンファレンスでも、ハッカソンやz Next
Gen(若手エンジニアに向けてコミュニティ活動や技術取得の機会を提供する活動)により若手を育て、技術を継承していこうとする様子が伺えた。

 以上、筆者の視点でカンファレンスを概観した。上記以外にも、参加者の関心に応じて多くの気づきが得られるだろう。興味をもった方は、ぜひSHAREに参加していただきたい。

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著者|佐藤 紘希 氏

三菱総研DCS株式会社
技術推進事業部 銀行基盤開発室 銀行基盤第三グループ

配属当初からIBM Z、z/OS、Linuxベースのシステムを担当し、主にミドルウェア(WMQ、IIB、WAS)のシステム管理に携わる。2017年度のJGS研究活動に参加。LPIC Level2、情報処理技術者(応用、旧情報セキュリティスペシャリスト)などの資格を保有。

[IS magazine No.19(2018年4月)掲載]

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