事例|田中電機工業 機械から「いちご」まで独自のIoTビジネス 

田中電機工業 株式会社

電機・コンピュータ・ソリューションの3事業部が連携し
プロジェクトチームを結成

 

90年の歴史をもつ
配電盤などの電機事業

田中電機工業は、1929(昭和4)年の創業以来、約90年にわたって電機事業を推進してきた会社である。生産設備用の制御装置や配電盤、電子応用機器などを、顧客の求めに応じてオーダーメイドで設計・製造する事業で、現在は広島県下に4つの工場・事業所を構え、自動車、鉄鋼、繊維、印刷機械、食品製造などさまざまな分野の多様なニーズに応えている。

一方、1983年からはコンピュータ事業に参入し、電機に次ぐ柱として成長させてきた。なかでもIBM i(AS/400)はとくに強みとする分野で、製造業を中心に約80社の基幹システムの構築・運用・保守で数々の実績を築いてきた。またノーツも古くから手がけ、得意とする分野である。

近年はWeb系・オープン系でも数多くの実績を残し、これらを含めてコンサルティングから設計、開発、運用、保守までトータルにサービス/サポートを提供する体制を整えている。

目下の注力分野について、執行役員の青山秀氏(コンピュータ事業部 開発統括部 統括部長 兼 第二グループ部長)は、「中堅のSEを対象に、PM(プロジェクトマネージャー)教育に力を入れています」と、次のように話す。

「お客様のニーズが複雑になり、かつスピードが求められる現在、中堅のSEにもPM的な考えに基づく行動やお客様への対応が求められます。若いうちから知識と基本を身につけてもらうべく、PM経験豊富なベテランを招いて隔週ペースで勉強会を実施しています」(青山氏)

青山秀氏 執行役員

機械のアフターサービスに
IoTを活用できないか

同社の2つの柱である電機事業とコンピュータ事業は事業領域が異なるため、従来は交わることなく別々に推進されてきた。それが最近、「大きく様相が変わりつつあります」と、青山氏は説明する。

「きっかけは、ある製造業のお客様からの依頼で、販売した機械のアフターサービスにIoTを活用できないか、精査してほしいというものでした。当社のなかで、機械に詳しいのは電機事業部であり、センサーで集めたデータを蓄積し分析・活用する仕組みはコンピュータ事業部の得意分野です。そこで両事業部からメンバーを選抜してプロジェクトを結成し、検討作業に入りました。2016年のことでした」

その検討作業は約1年に及び、2017年初めに顧客に対し提案を行いシステム全体を一括受注。4月から装置類の選定とアプリケーション開発に入り、8カ月後の12月にカットオーバーした。同社として初めて完成させたIoTシステムである。

仕組みは、顧客が製造した機械の要所要所にセンサーを取り付け、そこからのデータを電気信号に変換してデータ収集装置に収集。それをルータと通信網などを経由してクラウドへ送信し、クラウド上でデータの管理と解析を行い、閲覧システムで見える化する、というものである。

メーカーが販売した機械は現在、海外でも使われ、現地にIoT用のデータ収集システムを設置してインターネット経由で日本のセンターにデータを集め、顧客自らが集中的な監視・運用を行っている。

「この案件をゼロからスタートして1年でまとめられたのは、当社が電機事業とコンピュータ事業の両方を手がけ、経験を積んでいたからだと考えています。IoTは、データの取得対象となる機械・装置と、取得したデータをどう活用するかによって仕組み自体が違ってきますから、機械・装置に精通し、かつITを得意とする当社にとって活動の領域を大きく広げる分野です。この案件をきっかけに、顧客から第2弾の依頼もあり、電機事業部とコンピュータ事業部による共同プロジェクトが新たに走り始めました」(青山氏)

【図表 IoTを軸とするビジネス展開】

 

 

IoTビジネスの推進の
「IBMクラウドチーム」を結成

同社では、この3月に「IBMクラウドチーム」と呼ぶ社内プロジェクトをスタートさせた。IoTビジネスの推進母体となるプロジェクトで、電機事業部とコンピュータ事業部、そして2015年に発足したソリューション事業部の配下にある農業部門のメンバーで構成されている。

農業部門では、「安芸こまち」(右写真)というブランド名のいちごを栽培し、ネット販売を行っている。一般的ないちごの糖度が7〜8なのに対して15もあるという芳醇な甘みをもつ高級品種で、水素水を用いた低農薬のいちごである。

IBMクラウドチームでは、この安芸こまちの栽培にIoTを適用する「いちごIoT」の検討を始めた。「農業IoTのソリューションはすでに他社から提供されているので、当社ならではの特色をもつIoTを追求します」と青山氏。

同社では今年度(2018年度)、ディープラーニングの調査・研究と、第1弾で構築した一連のデータ収集システムのパッケージ製品(アプライアンス)化、さらにスマートアグリ(IT化農業)の実用化に向けた調査・研究を進める計画。いずれもIoTにつながる取り組みばかりで、2018年は同社にとってIoTを飛躍させる年になる。

Company Profile

本 社:広島県広島市
創 業:1929(昭和4)年
資本金:5000万円
売上高:125億7428万円(2017年3月)
従業員数:260人(2017年3月)
事業内容:[電機事業部]電気電子制御盤などの設計・製作・販売/[コンピュータ事業部]ITソフトの開発、OA機器http://www.tanaka-elec.co.jp/

昭和4年(1929年)に産声を上げた田中電機工業は、来年、創業90周年を迎える。創業以来、1983年までは制御システム関連の電機事業を一筋に、1983年からはコンピュータ事業をもう1つの柱に据えて、ビジネスを推進してきた。従来2つの事業が交わることはほとんどなかったが、IoTとAIのフィールドで急速に連携が進む。創業90周年を前に、従来にないユニークな取り組みがいろいろと始まっている。