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事例|株式会社鈴木楽器製作所 ~IBM i Access for Windowsに代わる5250エミュレータとして、TCPLinkを選択

本 社:静岡県浜松市
設立:1954年
資本金:9230万円
売上高:42億円(2019年12月末)
従業員数:206名(2019年12月末)
事業内容:鍵盤ハーモニカをはじめとする各種教育楽器の開発・製造・販売、教育用ソフトウェア事業、生涯学習向け事業など。海外展開も積極的に進める。
https://www.suzuki-music.co.jp/

「楽器作りは単なる物作りではなく、音を作ることであり、さらにはその音が人と人を結びつけ豊かな生活環境をも育てるもの」との考えが、ホームページの「代表挨拶」に記されている。製造する楽器は、鍵盤ハーモニカのほか、アコーディオン、リコーダー、オルガン、電子楽器、和楽器、木琴・鉄琴と幅広い。鍵盤ハーモニカやハーモニカ、ハモンドオルガンなどの音楽教室も全国で展開している。

 

システム/34時代から
自社開発・自社運用の方針

楽器の街、浜松。そこで学校教育用のハーモニカ作りを目指して1953年に産声を上げたのが鈴木楽器製作所である。創業時から、楽器の音色と品質へのこだわりをモットーとし、それを実現するために部品の開発・製造から完成品の組み立てまでを一貫して行う「自社一貫生産」に取り組んできた会社でもある。

1961年に鍵盤ハーモニカ「メロディオン」を開発。これが文部省(当時)の「教材基準」に指定されて大ヒット商品となり、その後、オルガンやリコーダー、電子楽器、打楽器、和楽器などの教育用楽器を次々に開発し、事業の領域を広げてきた。近年は、学校教育分野のほかに生涯学習分野にも進出し、大人向け楽器の製造や音楽スクールの運営なども推進中だ。

基幹業務のシステム化は、1970年代末のシステム/34の導入から始まった。それ以降、システム/36、AS/400、iSeries、System iと代々のIBMミッドレンジサーバーを使用してきた。現在のメインサーバーはPower 814である。

「システム/34の時代から自社開発・自社運用を方針として、基幹システムのほぼすべてをRPGで開発し、運用してきました。一時期、受注系システムをWindowsサーバーへ移行させましたが、その後運用を見直し、現在は再度IBM i上で稼働させています」と、情報管理部の飯尾みえ課長は話す。

飯尾 みえ氏 情報管理部 課長

 

 

「Windows 10に対応せず」で
エミュレータの見直しへ

業務部門のユーザーが基幹システムを利用するためのインターフェースとしては、システム化の最初期から5250画面を中心に据えてきた。

端末がWindows PCへと変わった1990年代後半以降は、IBM i Access for WindowsとキヤノンITソリューションズのエミュレータ「TCPLink」を混在させて利用していたが、IBM i Access for Windowsの無償化以降は同ツールが中心となった。2000年代中盤から約10年間は、その体制での運用である。

ところが2010年代中盤になって、同社がPCの標準OSとしていたWindows 7のサポート終了がマイクロソフトからアナウンスされ、さらにIBM i Access for WindowsがWindows 10以降をサポートしないとの発表がなされたことから、エミュレータの見直しがにわかに大問題となった。

ちなみに、Windows 7のメインストリームサポートの終了は2015年1月13日、延長サポートの終了は2020年1月14日、IBM i Access for Windowsのサポート終了は2019年4月30日である。

「当社では、グループ会社を含めて約100名の業務部門のユーザーがIBM i Access for Windowsを使っているので、大きな問題となりました。エンドユーザーにとってはエミュレータが原因で基幹システムの利用が困難になると、とたんに業務の遂行に支障をきたします。ユーザーにとって違和感のない新しい環境にいかにスムーズに移行するかをテーマに、まずは後継のIBM i Access Client Solutions(ACS)の検証を行うことにしました」と語るのは、情報管理部の房野史寛係長である。

しかしながら、その結果は「当社が期待するようなものではありませんでした」と、房野氏は振り返る。

「機能面では、使用中の外字が正しく表示されないなどの問題がありましたが、それよりもACSを動かすためのクライアント側のJavaのバージョン管理やOracle Javaのサポート有償化などの問題があり、ACSの維持・管理に大きく手間がかかりそうなことがハードルとなり、採用を見送ることにしました。有償のPCOMMのほうはコストがかかり過ぎるので、最初から見送りとしていました」(房野氏)

房野 史寛氏 情報管理部 係長

 

操作や機能の不明点を
細かくメーカーに確認

そうこうするうちに、次の候補として浮上したのが、かつて一部の業務で利用したことのある「TCPLink」だった。同製品は、IBM i Access for Windowsの無償化をきっかけに利用を停止したが、「ユーザーはサードパーティ製ソフトウェアであることを意識することなく、ごく自然に使いこなせていました」と、飯尾氏は話す。

さっそく体験版をダウンロードし、検証を試みた。

「当社の業務を想定して一通りの機能を使ってみましたが、TCPLinkは、IBM i Access for Windowsとの互換性をアピールしているだけあって、当社のエンドユーザーも違和感なく使いこなせるだろうという感触を得ました。その点がツール選択のポイントだったので、次に操作面や機能面で引っかかりのあった点をメーカーに問い合わせ、確認することにしました」と、エミュレータの選定を担当した情報管理部の河合貴浩氏は説明する。

河合 貴浩氏 情報管理部

 

たとえば、次のような問い合わせと回答である。

●問い合わせ

・IBM i Access for WindowsでHOMEキーを押すと入力可能フィールドの先頭にカーソルが移動するが、TCPLinkでは画面の左上隅(1,1)に移動する。これをIBM i Access for Windowsと同じにできないか。

◎回答

・設定により対応可能。

●問い合わせ

・TCPLinkで漢字を含む文字列をコピー&ペーストすると、貼付時に0E、0Fの外側に半角スペースが挿入される。この半角スペースをなくせないか。

◎回答

・設定により対応可能。プロパティ設定の項目にチェックを入れると、半角スペースは挿入されない。

 

スムーズな導入の決め手は
データ転送定義への対応

同社では2016年春にTCPLinkの検討を開始し、約1年後に採用を決めたが、採用までの質問と回答のやり取りのなかで、「TCPLinkをスムーズに導入できた最大のポイント」として河合氏が挙げるのが、IBM i Access for Windowsで作成済みのデータ転送定義への対応である。

TCPLinkの検証段階ではIBM i Access for Windowsのデータ転送定義に未対応で、キヤノンITソリューションズの回答も当初は「検討する」というものだったが、その後ほどなくして対応を決め、機能強化モジュールの提供を実施した。「IBM i Access for Windowsのデータ転送定義に未対応であると、お客様への影響がきわめて大きいと判断しました。TCPLinkへの移行をスムーズに進めていただくためにも必要な措置と考えました」と、キヤノンITソリューションズでは説明する。

「当社には、IBM i Access for Windowsで作成したデータ転送定義が数百本もあり、その1つ1つをTCPLink用に書き換えるのは、気の遠くなるような時間と労力が必要になります。しかし、それでもやるしかないと覚悟を決めていたところに機能強化モジュールの提供を知らされたので、救われる思いがしました」(河合氏)

また房野氏は、「今回の一連のやり取りでは、当社からの問い合わせに対して即座に回答があり、また情報のアップデートも頻繁だったので、意思決定を的確に行うことができました。TCPLinkの採用を決めたのは、IBM i Access for Windowsと比べて違和感のない操作性や機能に加えて、キヤノンITソリューションズの対応の速さときめ細かさを高く評価した結果です」と述べる。

一方、キヤノンITソリューションズのほうでは、「現場ニーズに即したご指摘によって、IBM i Access for WindowsからTCPLinkへの移行をスムーズに行うための情報がたくさん得られました。IBM i Access for Windowsのデータ転送定義や印刷定義、キーアサインファイルへの対応、既存のマクロファイルを利用したマクロの実行など、鈴木楽器製作所をはじめ多くのお客様から寄せられたご要望を、現在、標準機能として搭載済みです」と話す。

TCPLinkへの移行は、PCをWindows 10搭載マシンに切り替えるたびに実施し、2019年秋にほぼ完了した。

飯尾氏は、「TCPLinkは、エミュレータを頻繁に活用するヘビーユーザーにも、ごく限定的な使い方しかしないビギナーにもフィットする点が素晴らしいと感じています。当社では、TCPLinkのようなツールの力を借りて、5250画面を業務の標準インターフェースとして長く使っていくことになると思います」と感想を述べる。

[i Magazine 2020 Spring(2020年2月掲載)]

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