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Zend Server Basicがサポート終了へ! コミュニティPHPへの移行を日米の最強タッグチームで支援

米Seiden Groupと提携した中部システムの牛田吉樹氏に話を聞く

牛田 吉樹氏

株式会社中部システム
テクニカルアーキテクト

今年4月14日、IBMとZend Serverの開発企業であるPerforce Software社は共同で、6月30日からIBM i(OS)のライセンスに無償提供のZend Server Basic for IBM iを含めないことと、2021年6月30日にサポートを終了することを発表した。今後もZend社の無償ディストリビューションを使い続けるには、「コミュニティPHP」への切り替えが必要になる。PHP on IBM i市場で何が起きているのか、コミュニティPHPへの切り替えに伴う各種支援サービスを米国のSeiden Groupと共同で提供することを発表した中部システムの牛田吉樹氏に話をうかがった。

 

 

ライセンス形態が変更
Zend Server Basicがサポート終了へ

i Magazine(以下、i Mag) PHP on IBM iに関わる市場で今何が起きているのですか。

牛田 昨年(2019年)12月にIBMとPerforce社の2社は共同で、IBM iユーザーの間で広く使われているZend Server Basic for IBM i(以下、Zend Server Basic)に代わる次世代製品として「コミュニティPHP」という名称のディストリビューションをリリースしました。今後はコミュニティPHPのほうを使ってくださいというわけです。そこでコミュニティPHPを調べると、現行のZend Server Basicとの違いがいろいろと見えてきました。

i Mag たとえば、どういうものですか。

牛田 いろいろありますが、大きなものを挙げるとDb2へ接続するためのモジュールがないのです。どうするのだろうと調べてみると、ODBC接続が推奨されている。また、Zend Server Basicは32ビット対応だったのですが、コミュニティPHPは64ビット対応がなされており、32ビット版は存在しません。そのほかにもいくつか違いがあるのですが、いずれにしてもZend Server Basicをご利用中のユーザーがコミュニティPHPへ移行するとなると、アプリケーションの改修が必要になる。当社にもZend Server Basicを使ってIBM iを運用中のお客様がたくさんいますから、これは大変なことになったと思いました。

i Mag 移行のためのソフトウェアやモジュールは、Perforce社から提供されていないのですか。

牛田 今のところないですね。そして4月になると、Zend Server Basicの配布中止(6月末)と2021年6月末のサポート終了が発表されました。

i Mag のんびりと構えていられられなくなったのですね。

牛田 もうコミュニティPHP用のモジュールを自分たちで作るしかないと思いました。それで実際に開発を進めたのですが、Linux系とIBM iの違いは大きく、どうしてもコンパイルが通らないケースや、コンパイルはできてもモジュールテストでエラーとなってしまうケースが出てくるのです。それでも何とか完成させなければならないと思い、ネットでいろいろ調べました。そのときにSeiden Groupのサイトに行き当たったのです。「コミュニティPHPへの移行サービスを提供」というリリース文の掲載があって、そのなかに「Db2 for iへの接続」がありました。

i Mag 牛田さんが作りたいと思っていたものを既に実現していたのですね。

牛田 それで、同社サイトの問い合わせフォームから「ほんとうにDb2 for iに接続可能なのですか?」と質問を投げたのです。そうしたらすぐに、そのモジュールの開発者であり社長のアラン・セイデン(Alan Seiden)氏から「もちろんです!」というメールが返ってきて、それから毎日のようにメールを交わして、最初の連絡から2週間後には、提供してもらったDb2 for i接続モジュールを日本語環境でテストし始めました。5月末のことですね。

i Mag 結果はどうでしたか。

牛田 ある程度順調に日本語テストを進めていくと、いくつか正常に動作しないケースに遭遇しました。もちろん、彼らにとって2バイト環境は未知の領域で、我々もテストで発生する障害を彼らに説明するのに苦労しました。テストを始めた頃は、日本語で発生している障害を英文に置き換えて説明して伝わるのか、という不安もありました。しかし、彼らの優秀なスキルと迅速な対応もあり無事テストを乗り切ることができました。

 

アラン・セイデン氏 Seiden Group 創立者、IBMチャンピョン

 

2社の提携と支援サービスを
日米同時に発表

i Mag 9月21日にSeiden Groupと中部システムとの提携を日米同時に発表しました。どのような内容ですか。

牛田 Zend Server BasicからコミュニティPHPへの移行に伴う各種問題を解決する支援サービス「CS^2(CSC & Seiden Collaboration Service)」を日本のIBM iユーザー向けに提供します。私ども中部システムは、Seiden Groupが開発したコミュニティPHP用拡張モジュールを日本語環境で検証し、それとともに日本のお客様が適用される際の各種サポートを提供します。また、そこで生じた課題やリクワイアメントをSeiden Groupへフィードバックする役割も担います。

i Mag どのような拡張モジュールが提供されるのですか。

牛田 代表的な拡張モジュールとしては、Db2関数を使用してDb2 for iへアクセスするための「ibm_db2」、ファイルアーカイブ用の「zip」、Oracle用の「oci8」、LDAP用の「LDAP」などですが、そのほかにもたくさんあり、今後も日本語対応モジュールを増やしていく予定です。

i Mag サービスを利用するユーザーのメリットは何ですか。

牛田 サービスを利用すると、Zend Server BasicのDb2関数で作成した既存アプリケーションをそのままコミュニティPHPへ移行できます(PHP 7.3への対応は必要)。さらに、PHP本体が64ビット環境に変わるため、一部の処理でパフォーマンスの改善が期待できます。PHPも7.3へと更新されるため、セキュリティリスクも低減されます。またCS^2は、日本語環境で検証済みのモジュールをご利用いただけるので、安心してアプリケーションの移行が可能となります。何か技術的な問題が発生した場合でも、我々がSeiden Groupと密に連携し、お客様の問題を解決させていただきます。

i Mag アラン・セイデン氏は、グローバルでは「PHP on IBM iの第一人者」と評されている人のようですね。

牛田 第1級のエンジニアであり、会社のリーダー、そしてIBM iオープンソース・コミュニティのリーダーです。彼自身、IBMチャンピョンですが、Seiden Groupにはそのほか2人のIBMチャンピョンがいます。優秀なメンバーばかりで、問い合わせをするとすぐに的確な答えが返ってきます。今回の提携は、お客様が今後もIBM i上でPHPを使い続けられるようにしたいという、日米のエンジニアの気持ちが1つになった提携だと思っています。

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株式会社中部システム
https://www.cscweb.jp/
Seiden Group
https://www.seidengroup.com/

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牛田 吉樹氏プロフィール
2001年中部システム入社。RPG技術者として数多くの受託開発案件を担当。その一方、オープンソースの習得も並行して進め、コミュニティ活動にも積極的に参加する。PHP、JavaScript、Node.jsなどに造詣が深い。TwitterやQiitaなどでも積極的に発言。アイマガジンサイトでブログ「ushiday@Hackな日々」がスタート。

[i Magazine 2020 Autumn(2020年10月)掲載]