MENU

04 Powerの仮想化 ~IBM Powerが備える多様な仮想化機能、VIOS、仮想イーサネット、仮想ストレージなど |新・IBM i入門ガイド[基礎知識編]

VIOS (Virtual I/O Server)

VIOSは、PowerVMの一部としてネットワーク・アダプターやストレージ資源などの物理リソースを仮想化し、複数のクライアントLPARで共有を可能にする専用オペレーティング・システムである。VIOSはAIXをベースとしてカスタマイズされたOSであり、他のOSと同じようにIBM Powerサーバー上のLPARとして導入する。

VIOSは、仮想化ストレージと仮想化ネットワーク・アダプターの両方をクライアントLPARに提供できる。

仮想イーサネット

仮想イーサネットは、仮想的なイーサネット・アダプターを作成・実装できる機能である。クライアントLPARではイーサネット・アダプターとして認識され、パーティション間のIP通信を行うことが可能となる。実際にはPowerハイパーバイザーを通じたメモリ間のデータコピーであるため、LPAR間の高速通信が可能となる。

仮想イーサネットはあくまでも筐体内での仮想的なネットワークを提供するものだが、VIOS上の物理イーサネット・アダプターを通じて筐体外のシステムとの通信を構成することも可能である。この機能をSEA(Shared Ethernet Adapt
er/共有イーサネット・アダプター)と呼ぶ。

SEA(Shared Ethernet Adapter、共有イーサネット・アダプター)

SEAは仮想イーサネットと筐体外部のネットワークを接続するためのブリッジの役割を持っており、VIOSに割り当てられた物理イーサネット・アダプターと仮想イーサネット・アダプターを利用して構成される。SEAを利用することで仮想イーサネットから外部ネットワークにL2レベルでの通信を行うことが可能になる(図表1)。

図表1 仮想イーサネットの構成例

仮想ストレージ

VIOSは、2つの方法でストレージの仮想化を実現できる。1つ目はvSCSI(VirtualSCSI、仮想SCSI)と呼ばれる方式でVIOS上に実装されている物理ストレージを仮想化し、クライアントLPARに提供することができる。

2つ目はNPIV(N_Port ID Virtualization、仮想ファイバー・チャネル)の機能を利用して、物理ファイバー・チャネル・アダプターを仮想化してクライアントLPARに提供することで外部ストレージ・システムとのSAN(Storage Area Network)接続を可能にする。

vSCSI(Virtual SCSI、仮想SCSI)

vSCSIは物理的にVIOSに割り当てた内蔵ストレージやファイバー・チャネルを通じてVIOS上のストレージ装置をクライアントLPARに仮想的に割り当てる技術である。クライアントLPARには物理ボリューム/LUNあるいは論理ボリューム単位での割り当てが可能で、クライアントLPARからは物理ボリュームとして認識される。vSCSIを利用すると、以下のようなストレージの仮想化が可能となる。

・VIOSから直接接続されたストレージ全体
・VIOSに接続されたSANストレージ
・上記のいずれかのディスク上に定義された論理ボリューム
・光ストレージ・デバイス
・テープ装置

NPIV(N_Port ID Virtualization、仮想ファイバー・チャネル)

NPIVは物理ファイバー・チャネル・ポートを仮想化する業界標準の手法であり、物理ファイバー・チャネル・ポートを複数のクライアントLPARで共有することができる。

NPIVを構成されたクライアントLPARは、SANストレージ (ストレージ装置、テープ装置)に接続できる。その場合、SANスイッチやSANストレージがNPIVに対応している必要がある(図表2)。

図表2 vSCSI校正とNPIV構成

VIOSの冗長化

VIOSによりI/Oを集約/仮想化してクライアントLPARに割り当てている場合、VIOSが冗長構成されていないとVIOS自体が単一障害点となり、障害時にはサーバー全体に与える影響が大きいため、VIOSによるI/Oの集約・仮想化を行う場合には、同一筐体内でVIOSを2重化することが強く推奨されている。

VIOSを冗長化することにより、VIOSの単一障害点を回避できるだけでなく、クライアントLPARにもI/Oの冗長化を構成することが可能になり、クライアントLPARの可用性の向上にも貢献する。

VIOS冗長化のための機能として、仮想イーサネットではSEAフェイルオーバーの機能が提供されている。またストレージについては、クライアントLPAR上でvSCSIやNPIV接続を2重化することで冗長性を実現できる(図表3)。

図表3 SEAフェイルオーバー機能を使用したVIOS二重化構成の例

VIOSを活用してI/Oを集約/仮想化することにより、LPAR追加時にI/Oアダプターの追加が必要なくなり、LPAR増設の難易度が低くなる。またI/Oアダプターの利用効率を高めることができ、I/Oアダプター数や拡張筐体数を削減可能となり、スペース、電力、空調、管理運用コストの削減が可能となる。

著者
茂木 映典氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 
IBM Power テクニカルセールス

新・IBM i入門ガイド[基礎知識編]

01 IBM iの歴史
02 IBM iの基本用語
03 IBM iの仮想化
04 Powerの仮想化
05 IBM iのストレージ・サポート
06 IBM iのインターフェース
07 IBM iとデータベース
08 IBM iとファイル・システム
09 IBM iと文字コード
10 IBM iとOSSサポート
11 IBM iのHA/DR
12 Power10のポートフォリオ
13 Powerプロセッサの歩み
14 IBM iのLPMとCoD
15 IBM Power Virtual Serverの概要
16 IBM iのライセンス
17 基礎知識編FAQ

[i Magazine 2025 Spring号掲載]

新着