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BERTで機械学習した仏教対話AI「ブッダボット」、産・宗・学連携で開発 ~AI倫理にも配慮

 

 

 

京都大学の熊谷誠慈 准教授や天台宗の青蓮院門跡、Quantum Analytics社らの研究グループは、自然言語処理アルゴリズム「BERT」を用いた仏教対話AI「ブッダボット」を開発した。

最古の仏教経典「スッタニパータ」から抽出して作成したQ&Aリストと同原典の現代語訳をデータセットとしてBERTに機械学習させ、ユーザーからの質問に文章形式で回答できるようにしたもの。

機械学習に用いたBERTは、Googleが2018年に公開した自然言語処理手法で、公開時は複数の自然言語処理ベンチマークで最高の性能(スコア)を示したことから世界的に大きな話題となった。

BERTは、その名称にあるように(Transformerによる双方向のエンコード表現=Bidirectional Encoder Representations from Transformers、BERT)、1つの文章(シーケンス)から別のシーケンスを予測・派生させて同時に学習させるため、従来の単一のシーケンスしか処理しなかった自然言語処理モデルと比べて、格段に精度が向上したと評価されている。ブッダボットもこの手法の適用により、精度の高い“問答”が可能になった。

 

ブッダボットの概略図

 

ブッダボットの意義について研究グループでは、「『産・宗・学連携』という新たな枠組みを呼び起こし、それぞれに大きな波及効果を与える可能性がある」としたうえで、学術・宗教・産業のそれぞれの分野へ影響を記している(下図)。

 

ブッダボットの効果・価値・可能性

 

研究・開発面では今後、「スッタニパータ」以外の仏教経典の学習と、ユーザーからのフィードバックの再学習によってブッダボットの回答の質の向上に取り組む。また、現在は経典の文言の現代語訳をそのまま用いているが、ユーザーの意図に応じて回答文を構築できるようプログラムを改良していく予定という。

今回の発表で注目されるのは、「プロジェクトに関する倫理的な議論や今後必要となる社会的な議論」について言及している点である。

ニュースリリースでは、「ブッダボットの回答精度の低さ、誤用、意図的な悪用等により、ユーザーを誤った道に導く危険もあり、一般公開には注意が必要です」とし、以下のような方針を掲げている。

・当面は、学術利用およびモニター利用のみとし、不特定多数への一般公開はしない
・機械学習させる仏教聖典は、仏教徒たちの信仰の対象であることから、その扱いについては慎重に行う必要がある
・仏教学者を中心とする本研究グループは、他の宗教への転用は考えていない。当該宗教の教学者たちの見解をしっかりと尊重することが必要であり、他宗教への安易な技術転用は避けるべき

現在、AI技術がさまざまな分野に適用され、一部で倫理的・道徳的な問題を起きている(たとえば顔認識への適用)。今回のブッダボットの開発は、こうした問題へも配慮したうえでの取り組みで、研究の今後も注目される。

・京都大学ニュースリリース「ブッダで悩みを解決、仏教対話AI「ブッダボット」の開発 ~伝統知と人工知能の融合」
・詳細説明文(PDF)

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