広島の産業・歴史・文化に触れながら 未来へのイノベーションを考える|早稲森 豊 氏◎ IBMユーザー・シンポジウム実行委員長

5月17日(木)・18日(金)の両日にわたり、第56回 IBMユーザー・シンポジウムが広島で開催される。
中国研としては14年ぶり、4回目の開催。
IBMユーザー論文の発表の場であると同時に、広島の産業・歴史・文化に触れながら、
未来のイノベーションを考える2日間。
初夏の広島の地で、「広島らしさ」がいっぱいの研鑽と交流を目指す。
早稲森豊実行委員長に、その大会コンセプトを聞く。

 

異なる業種・立場のユーザーが
さまざまに語り合う

i Magazine(以下、i Mag) 中国研の会長を4年間務められたのち、今回の広島大会では実行委員長に就任されました。U研とのお付き合いは長いのですか。

早稲森 私が中国研の会長に就任したのは、2013年です。当時、私の上司が会長を務めていたのですが、退任とともに、それを引き継ぐことになりました。私がU研に携わったのはそのときが初めてで、U研の活動をまったく経験しないまま、いきなり会長に就任したわけです。でも周りの会員の方々にいろいろと助けていただき、事務局がしっかりサポートしてくれたおかげで、戸惑うこともなく、とても楽しみながら会長を務めてこられました。

i Mag 初めてU研の活動に携わることになったときの印象を教えてください。

早稲森 当社ではさまざまなメーカーやベンダーのユーザー会に参加していますが、U研はそのどれとも違っていて、「ユーザー主体」のコンセプトを体現していると感じました。会員の方々が自分たちで考え、主体的に企画や運営に携わっていますし、理事会などでは皆、真剣に議論を戦わせています。今振り返ってみると、ユーザーの1人として私自身、とても勉強になる貴重な機会を与えられたと感謝しています。私は自動車業界に身を置いていますが、同業者との交流は多いものの、異業種の方々と知り合う機会はあまりありませんでした。しかしU研では、さまざまな業種のユーザーが集まり、それぞれの立場や視点から、意見や考えを伝え合っています。その一方、業種や企業は違えども、システム部門の担当者たちが集い、人材育成や新しいテクノロジーへの取り組みなど共通する課題について解決策を追求しています。そうした活動を目の当たりにし、自ら参加することで、とても多くのことを学びました。

 

産業・伝統・歴史・文化に触れる
充実した2日間に

i Mag 中国研での大会開催は14年ぶり、4回目となりますね。

早稲森 そうです。2004年に第42回 IBMユーザー・シンポジウムが開催された前回の広島大会から10年ほどしたころ、「次は中国研で」という声が聞こえてきました。しかし広島の陸の玄関口であるJR広島駅で、2012年から大規模な改修工事がスタートしていたのです。多くの参加者をお迎えするなら、やはりその工事が完了したタイミングを待ちたいと考えていました。2017年10月に、乗り換え通路、店舗が立ち並ぶコンコース、南北自由通路を含めた巨大な橋上駅舎の建設が完了し、全面開業するのを待って、2018年に広島大会を開催することになりました。

i Mag 「ひろしま発! 豊かな未来へのイノベーション」という大会テーマに込められた思いを教えてください。

早稲森 中国地方、なかでも広島には古くからこの地に根差す産業があります。たとえば「たたら製鉄」と呼ばれる古代からの製鉄業および鉄に関連する産業、古くは海軍工廠のあった呉の造船業、マツダが拠点を置く自動車産業、それにオタフクソースなど食品産業も盛んで、いずれも長い歴史を誇ります。そうした古くからある産業の力を肌で感じ、世界遺産である厳島神社に代表される広島の伝統・歴史・文化に触れながら、未来に向けたイノベーションを皆で考える大会にしたい。そうした思いを大会スローガンに込めました。

i Mag 大会ロゴには、鯉がデザインされていますね。これは広島東洋カープを体現しているのですか。

早稲森 それもありますが、広島城は別名、「鯉城(りじょう)」と呼ばれています。広島城のある一帯が、昔は「己斐浦(こいのうら)と呼ばれていたことに由来するようで、広島東洋カープの名前はこれにちなんでいます。つまり鯉は、もともと広島という街のシンボルなので、大会ロゴにもこのイメージを使おうと決めました。

i Mag 本番に向けて、オープニングの基調講演、そしてクロージングの特別講演に登壇するスピーカーなど、着々と企画が決まっているようですね。

早稲森 オープニングの基調講演では、予防医学研究者で医学博士の石川善樹氏に「これからの人工知能時代において、人がより良く生きるために」という演題で、またクロージングの特別講演では元プロ陸上選手でコメンテータの為末大氏に「スポーツとイノベーション」という演題でお話しいただきます。お二人とも広島県のご出身です。石川氏には予防医学や行動科学の知識を交えながら、これから人工知能とどう共存し、長い人生をどのように生きていくべきかを「イノベーション」という観点で語っていただく予定です。また為末氏には以前、U研のイベントで講演していただき、私も拝聴したのですが、スポーツにありがちな根性論などではなく、経営的な視点でのチームマネジメント論がとても印象的でした。経営者や管理職、マネージャーの方々が参考にできるような、イノベーションのヒントに満ちたお話しになるのではないかと期待しています。

 

しばし日常業務を離れ
広島の地で新たな発想を得る

i Mag 地域セッションの講師についてはいかがですか。

早稲森 呉の「大和ミュージアム」の館長や県立広島大学宮島学センターの大知徳子助教、それにマツダで車の設計に携わる開発者などが地域セッションに登場し、広島の産業・文化・歴史についてお話しする予定です。このほか恒例のオプショナルツアーのコースや、大会会場、交流会などで「広島らしさ」を感じていただける企画づくりを進めています。去年の京都大会では、舞妓さんや抹茶など京都らしさが満載でしたが、それに負けないように実行委員会のメンバー全員で知恵を出し合っているところです。

i Mag いろいろな場所で「広島らしさ」を感じられるとよいですね。

早稲森 そう願っています。今年の大会は、会場が2カ所に分かれていて、初日に広島国際会議場で分科会を終えたあと、交流会が開催されるリーガロイヤルホテル広島まで歩いて15分ほどの道のりがあります。ここを散策がてら、ぜひ歩いていただければと思っています。広島国際会議場は平和記念公園内にあり、世界遺産・原爆ドームや平和記念資料館の傍らを歩くことになりますから、国際平和文化都市である広島がもつ別の面を感じられるでしょう。もちろん雨天の場合や、お身体の調子などで歩くのが難しい方もおられるでしょうから、一定数のシャトルバスは用意する予定ですが、初夏の気持ちのよい季節に開催されるので、気分転換も兼ねて、ぜひ広島の街を散策していただきたいですね。

i Mag インターネットで膨大な情報を入手できる今、遠方の地へ足を運んでイベントに参加することの価値について、いろいろと議論されています。これについては、どうお考えですか。

早稲森 もちろん広島へ来ていただくのは時間もコストもかかりますが、それだけ得られる価値は大きいと思っています。冒頭に申し上げたように、私自身がU研に関わるようになって、日常とは異なる場に身を置き、業種や立場、年齢の異なる人たちと語り合うことで、多くを学び、大きな刺激を受けました。そういう時間はとても貴重で、どんな立場の人にも必要だと思います。しばし日常業務を離れて広島を訪れ、その土地に触れ、普段の生活や付き合いの範囲では出会えない人たちと交流する。それによりヒントやインスピレーションを得たり、発想を転換できたりするはずです。インターネットが普及し、居ながらにして膨大な情報を入手できたとしても、「外に出る」ことはとても重要です。ぜひ広島大会へお越しください。実行委員会一同、ご参加を心からお待ちしております。

 

 

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