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テンプレート、RAG、管理機能など法人ユースを想定したIBM i向けの生成AIソリューション ~ベル・データ |特集 生成AIとIBM i 7社の取り組み

発売から1年で機能を強化
各種支援サービスも提供

ベル・データは2024年10月に、IBM i向けの生成AIサービスである「生成AI連携サービス for i」の販売を開始した。

IBM iユーザーを対象に、生成AIのチャットアプリを通して、大規模言語モデル(LLM)がもつ一般的な学習情報に、IBM i内の資産や社内ドキュメントを組み合わせることで、IBM iにおけるIT業務の支援やアドバイス、新たなアイデア創出などを可能にするクラウドサービスである(図表1)。

図表1 生成AI連携サービス for i の概要

Azure上で構築され、LLMは、「Azure OpenAI Service」がベース。当初のGPT-3.5の対応から、現在では最新のGPT-5も利用できる。LLM選択を柔軟にできるアーキテクチャを採用しているため、今後はGeminiやClaudeなど他のLLMを選択可能にすることも視野に入れている。

生成AI連携サービス for iは発売開始から約1年間で細かく機能拡張を重ね、現在は以下のような機能を搭載している(図表2)。

図表2 生成AI連携サービス for iの活用環境イメージ

●ダッシュボード
ユーザー個々のアプリケーション使用量や、利用料金に応じた使用量の過多・過少などを把握することで、生成AIの積極的な活用を促す。

●チャットインターフェース
ユーザーが自然言語でやり取りできるチャット画面が用意されている。

●ドキュメント検索
規定や文書などの社内ドキュメントを生成AIに読み込ませ、問い合わせやキャッチコピー、説明文を作成する。検索した文書の内容を表示し、それをもとに回答を生成する。

●ナレッジ登録
AIの回答生成時に考慮すべき社内固有の用語や情報、データ検索時のルールなどを事前に登録する。登録内容により、回答精度を高められる。

●ユーザー管理・権限管理
業務別などにメンバーを分けてグループを作成すれば、グループ別に使用するチャットメニューなどを作成できる。

●チャット履歴の保存と共有
各個人のチャット履歴を保存し、過去のチャットのやり取りから選択し、追加で質問するといった対話が可能になる。またチャット履歴を共有することで、ほかのユーザーから参照できるようになる。

●ベースエージェント
AIが回答を生成するうえで必要な設定を行う。言語モデルの選択、システムプロンプトによる振る舞いの設定、IBM iへの接続、Db2 for iの照会や更新の有無、IBM iプログラムソースの取得有無、ドキュメント検索の有無、回答に創造性を含むかどうかなどを細かく設定・調整できる。

●AIアシスタント
ベースエージェントに紐づけてよく使う質問をメニュー化し、保持できる。ベースエージェントはそのままに、業務ごとのAIアシスタントを作成することも可能である。

また導入時の構築支援サービスは、同サービスを利用するために必要となるAzure上の各種準備を一括でサポートする。具体的には、「アプリケーションを動かすための環境」「Azure OpenAI を利用するための連携設定」「IBM iと接続するための仕組み」、そして「社内ドキュメントを活用する環境」の構築を支援する。さらに導入後は、活用を支援するための伴走支援サービスも提供される(図表3)。

図表3 生成AI連携サービス for iのサービス概要

テンプレートにより
生成AIの活用をスピードアップ

生成AI連携サービス for iは、企業内での汎用的な利用が可能である。発売当初は、「一般社員向け」(規定集やマニュアルなどの社内ドキュメントに対する問い合わせと回答など)、「マーケティング部門向け」(チラシや提案資料用のキャッチコピーや説明文の作成など)、「IT部門向け」(ITヘルプデスクへの問い合わせに対する回答支援や、SQL生成を活用したデータ抽出業務の効率化など)といったように、企業内の幅広い業務を対象に想定していた。

しかし同社がIBM iユーザーに強く、かつそのIT部門との付き合いが多いことから、現在PoCを推進中の6社は、いずれもIBM iユーザーのIT部門である。IBM iでのIT業務である開発・保守運用に関連する効率化・自動化を対象に、RPGのコード解析、テストケース・仕様書 の作成、データ抽出依頼の支援、プログラム作成支援など具体的な活用検証を進めている。

IBM iの開発言語の多くはLLMで一般的に学習されていて、プログラム解析・生成は、CL、RPG Ⅲ、RPG Ⅳ、FF RPG、SQLなどさまざまな言語で活用できるが、IT業務で実際に活用するにはベースエージェントの設定やプロンプトエンジニアリングが重要である。 

同社がこれまでIBM iユーザーに提供してきたアプリケーション技術やIBM iのインフラに関する知見・ノウハウをもとに、こうしたエンジニアリングを伴走支援している。

また、同社がさまざまなIBM iユーザーへ提供してきた知見やノウハウの活用は、企業内での利用を想定した管理機能のサポートにも表れている。それらは主に業務テンプレート、RAGによるナレッジ管理、そして認証・権限管理などである。

たとえばテンプレートでは、業務目的に応じて、IBM iとの連携や業務文書の活用、プロンプトチューニング、メニューなどがあらかじめ雛形として設定されている。

現在は、以下の6種類のテンプレートが標準で用意されている。

●ナレッジ保存済みSQL実行
ナレッジに保存されたSQLを実行。

●Query定義からSQL生成
Query定義を、F6で印刷した結果そのままの形でコピー&ペーストして活用可能。

●SQL文作成支援
質問に答えながらSQL文を作成・保存。

●RPG Ⅳ テスト仕様書とテストデータ
RPG Ⅳコードとデータベースをもとにテスト資料を作成。

●RPG Ⅳ 概要仕様
RPG Ⅳの概要仕様を出力。そこからの深堀りも可能。

●ベル・データの契約条項・規定
具体的な社内ドキュメントをもとに回答するチャットボットのサンプル例。ベル・データが一般公開している契約条項・規定に関する質問が可能。

このほか、社内の活用や検証をもとに、標準テンプレートから加工した個別テンプレートも多くある。これらのテンプレートは30種類(2025年10月時点)近くに上り、 たとえば個別のテンプレートを活用してAIチャットを作成したり、IBM iのソースコードを検索し、要約解説や修正案を提示したりできる。

こうしたテンプレートは簡単に作成でき、ユーザー自身でもテンプレート化が可能である。伴走支援する中で、ユーザーと検討しながらこれらの個別テンプレートを使うことで、より短時間での生成AIアプリケーション活用が可能になる。ベル・データでは、社内活用やPoCからのフィードバックをもとに、さらなるノウハウとしてテンプレートの種類を増やしていくようだ。

企業ユースを想定した
各種の管理機能

またRAGの活用方法も、生成AIの活用を大きく左右する。

RAGとはRetrieval Augmented Generation(検索拡張生成)の略で、LLMが回答を生成する際に、外部のデータベースや文書を検索し、その情報を組み合わせて回答の精度を高める技術である。

最新の情報や社内データに基づいて回答するので、ハルシネ―ション(事実に基づかない回答)を抑制できる効果があり、またLLMを再学習させる必要がなく、外部データベースを更新するだけで最新の情報を反映できるなどのメリットがある。

LLMのアウトプットを改善する費用対効果の高いアプローチなので、RAGをどうコントロールするかが、生成AIの回答精度や正確性、有用性に大きく影響する。生成AI連携サービス for iでは、前述したように「ナレッジ登録」により、企業独自の情報やルールをナレッジベースとして事前登録しておくなど、RAGを効果的に利用するための機能を備えている。

さらに注目されるのが、企業内での活用を前提にした各種の管理機能である。たとえば「ダッシュボード」では、個々のユーザーがどのぐらい生成AIを活用しているか、あるいは活用していないか、会社全体でどのぐらい利用しているか、従量課金である場合は現在までの利用料金がいくらか、などを可視化できる。

また「ユーザー管理・権限管理」では、通常のアプリケーションに求められるのと同様のアクセス管理が可能。「ベースエージェント」では、Db2 for iへの接続有無をはじめ、AIが回答を生成するうえで必要な各種の設定を管理できる。

これらは、個人ではなく企業が生成AIを利用する際に必須となる管理機能であり、通常のアプリケーションには必ず求められる機能でもある。

このように企業ユースを想定したさまざまな機能追加が行われている。ベル・データはIBM iの特性を考慮し、テンプレート作成とナレッジ登録を組み合わせることにより、実用性のあるAI活用の実現を目指している。IBM iのアプリケーション構築に精通し、生成AIの企業ユースを想定した機能群を揃えている点が、同社の強みと言えるだろう。

生成AI連携サービス for iと
GeminiotでAI戦略を展開

前述したように、生成AI連携サービス for iは汎用性が高く、企業内での多様な利用方法を想定しているが、現状では同社と最も距離が近いIBM iユーザーのIT部門で、トライアル導入やPoCが進行している。開発・運用業務周辺の効率化を追求するとなると、やはりRPGのコード解析やコード生成の支援、テストケースの作成などが中心となる。

「生成AIを使って何をしたいのか」を模索する、つまり明確な回答を持たないユーザーは多く、そのために導入し、PoCでどこまで実現できるか、何ができるかを確かめたいと考える。ベル・データはそのユーザーの動きに寄り添っていこうとしている。

同社がAI戦略の柱に据える製品は、実はもう1つある。AI分析モデルを活かした第3世代クラウドBIソリューション「Geminiot」(ジェミニオ)である。これは同社がIBM i向けにカスタマイズし、デジタルツイン作成やETL機能、AI分析モデル、ダッシュボード機能など、データ活用に必要なすべての機能をオールインワンで搭載する。

予測分析や需要予測、故障予知などに向けてAI分析モデルを自動生成し、AI技術者がいなくても業務へのAI活用が可能な環境を実現できる。需要予測や販売予測に役立てるというイメージのわかりやすさもあって、こちらもユーザーからの引き合いが多い。

当面は生成AI連携サービス for i とGeminiotの両立てて、同社はAI戦略を展開していくことになる。

 

[i Magazine 2025 Winter掲載]

 

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