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豊鋼材工業株式会社

 

POINT

・生産の進捗状況を把握できない問題が顕在化
・無線端末などを活用し、生産情報をホスト機にリアルタイム収集
・Delphi/400を導入し、生産情報を多面的に活用

 

 

生産の進捗状況が
リアルタイムに把握できない

「鋼材のことならあらゆるニーズに応える企業」をモットーに、鋼材および各種金属の加工・販売を行っている豊鋼材工業は、2005年度から生産情報のリアルタイム収集とその共有化に取り組み、2006年度にカットオーバーしたが、一般的なシステム化にとどまらず、受注・生産情報の「見える化」にまで踏み込んだ、きめ細かな作り込みを行った。

従来、同社における生産は、受注明細・使用鋼材などを明記した作業指示書が工場の作業担当者に手渡され、加工作業が終了するとその作業担当者が終了報告書(紙)に所定事項を記入し、それを工場の事務担当者がシステムへ入力するという流れで行われていた。

しかしながら、この方法では作業の進捗状況が見えにくいうえに、顧客から納期などの問い合わせがあると担当者が工場の現場へ出向いて確認する必要があった。また、リアルタイムに進捗状況が把握できないので、遅滞している作業への対応が後手に回ったり、予定・繁閑情報が共有されないといった問題があった。

さらに、「最も問題であったのは」と、製造総括部部長代行の石井裕昭氏は次のように説明する。「スタッフの多くが日々のルーチンワークに手を取られていて、生産性の向上や顧客満足度の改善を推進すべき担当が本来の業務を行えないでいる、といった問題が顕在化していました。結果的に、高コストで創造性が低い企業体質になっており、業務全体の効率の悪さが目立ってきていたのです」

そこで同社が取り組んだのが、基幹ホストであるSystem  iへのリアルタイムでの情報集約と、それを活用するための仕組み作りである。

前段として、2004年度に工場のネットワークインフラを整備した。これは、高速化・無線化・セキュリティへの対応である。そして、2005年度に生産情報をリアルタイムに収集・活用するための端末として、5250エミュレータを搭載した無線ハンディターミナルとWindowsCE機を導入した。5250エミュレータ搭載なので、System iとダイレクトに情報をやり取りすることが可能である。

また、System iのホストデータを直接印刷できる鋼材の識別用ラベルプリンタも設置した。生産情報のリアルタイム化は、次のような仕組みによって実現した。まず、作業指示書のキー情報を既存の帳票上に新たにバーコード化して印字する。

そして各工程での作業終了時に、新たに導入したWindowsCE機のバーコードリーダーで作業指示書のバーコードと使用鋼材のラベルのバーコードを読み取るとともに、鋼材の残材が発生する場合はその寸法を入力することで直ちに残材用のラベルがプリンタより自動発行される。これによりリアルタイムでの作業進捗把握が可能となり、同時に鋼材の識別管理の徹底、在庫情報の信頼性向上が図れる。

次に、これらの情報を活用する仕組みだが、これはDelphi/400を使ってアプリケーションを開発した。開発ツールの選定にあたっては、VisualBasicとの比較検討を重ねたが、「他社ユーザーへのヒアリングでレスポンスがよいとの評価を聞いたことや、System iに特化した機能が多く備わっていること」(石井氏)が決め手となったという。

現在、受発注別の進捗状況や出荷実績を瞬時に把握できるほか、各種素材の在庫数や工場ごとの日別・月別・年別の生産量なども表示できるようにした。個々の受発注データには、受注部門・担当者、顧客名、納品先、納期、ロット、完成時間、積込予定、配車、出荷などの項目が設けられており、工程の進捗に伴って実績データが更新されていく仕組みだ。顧客から出荷予定などの問い合わせを受けた際は、この画面を開けば一目瞭然で、即座に回答が可能になる。

石井 裕昭 氏 製造総括部 部長代行
石井 裕昭 氏
製造総括部 部長代行

 

判断材料になってこそ
情報に価値が生まれる

普通なら、ここでシステム化のレポートは終わってしまうところだが、同社の特徴はここから、エンドユーザーに情報を活用してもらうための工夫や仕掛けを凝らしていくことである。

石井氏は、「情報は、確認できるだけでは意味がなく、次にどのようなアクションを起こせばよいか、その判断材料となることが重要です。そのためには、単に表を作って見せればよいのではなく、トレンドを見るのならその目的に合ったグラフで、注目すべき点は内容に応じて表示色を変える、また着目したポイントをグラフ上でクリックすると詳細データが表示できるなど、直観的に把握できる仕組みが必要だと考えました」と、「見える化」に取り組んだ理由を語る。

 

例えば、受発注別の進捗状況を示す表では、作業未着手の案件は「ピンク」、出荷済みは「水色」、配車待ちは「黄緑」などに自動的に色分けしたり、選択行を強調表示したりする作り込みを行った。これについてはユーザーから「データの値を見なくても色で進捗状況が分かるので、作業がはかどる」との反響があるという。

また、日々の生産量把握では、グラフによる可視化のほか、表と組み合わせて表示もできるようにした。従来は、印刷帳票からExcelへ手入力しグラフ化していたので、大幅な作業効率の向上となった。

こうした作り込みもDelphi/400の機能を活用したが、「作っては直し、作り直しては修正するといった試行錯誤の繰り返し」だったという。「Delphi/400のよいところは、こういう視点で見たいというシステムや画面が簡単に開発できる点だろうと思います」と石井氏は評価している。

 

 

 

COMPANY PROFILE

設立:1958年
本社:福岡県粕屋郡
資本金:4億5000万円
売上高:250億円(2007年度)
従業員数:273名
http://www.yutaka-steel.co.jp

 

 

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