事例|高周波鋳造株式会社

 

震災後にネットワークのレスポンスが大幅に劣化

地震が収まった午後3時頃、正門前に集合した全社員に向けて工場長が帰宅命令を出した。総務企画部総務室課長の中村勇人氏は、八戸市に出された3mという大津波警報に半信半疑ながら、午後3時半すぎに車で会社を後にした。市内全域の停電で、いつもの帰宅路は信号機が止まっており、渋滞にも捉まって、1時間ほどかけて自宅に帰り着いたちょうどその頃、八戸港には6mを超える大津波が到達していた。

高周波鋳造の本社・工場は八戸港のすぐ近くに立地するが、港から陸に入り込む内港側に立っていたため、直接海に面した外港のような被害は受けずに済んだ。本社建屋は無事だったが、それでも敷地内にある工場は40cmほど冠水し、ラインの一部が浸水した。

神戸製鋼グループの一員であり、日本高周波鋼業の子会社である同社は、ダクタイル鋳鉄をはじめとする鋳鉄品を製造している。生産の主要設備である溶解炉は停止後7時間を経過すると、溶けた鉄が中で固まる。そのため今回の震災では固まった鉄を撤去し、炉を修繕する築炉作業が必要となった。

浸水した生産設備の調査と修復を進め、燃料不足の中、同社の製造現場が再開したのは3月22日。築炉作業を完全に終了し、震災前の生産量に戻せたのは1カ月後の4月12日である。

震災翌日の午前7時に出社した中村氏は社内で唯一のシステム担当であると同時に、資材調達も兼務するため、その日は燃料の確保に走り回った。停電が復旧したのは3月14日。その前日に大型の自家発電機を手配し、事務棟に通電させた。80台ほどあるPCのうち約半数を立ち上げる。またこの時点で、マシン室のサーバーを再起動した。

生産管理、受注・売上・出荷管理、予算管理、売掛管理、資材調達、原価計算等を運用するのはSystem i(9406-520)。ファイルサーバー、ノーツ、セキュリティや技術指示書の管理、大手顧客へ出荷状況を通知するWebシステムなどのPCサーバー9台とともにマシン室にある。

UPSを接続しており、System iは停電後、自動でシャットダウンした。しかしUPSの電源供給時間は10分程度なので、いったん屋外へ退避し戻った頃には手動シャットダウンは間に合わず、PCサーバーは異常終了していた。ところが再起動すると、PCサーバーの方は無事。System iは地震の衝撃ゆえか、ミラーディスクの1つに障害が発生していた。急ぎIBMの保守サービスに連絡し、空路で交換部品を入手している。

また通電後、ネットワークのレスポンスが異常に劣化するという現象が現れた。東京支店とテレビ会議システムを使おうとしても、あまりにレスポンスが悪いので会議にならない。いくら調べても原因がわからないので、ネットワーク構築に携わった仙台の工事会社に懇願し、3月21日、担当者が高速バスに乗って6時間かけ来社した。その結果、ハブスイッチの設定が停電時にすべて初期化したためと判明した。

中村 勇人 氏 総務企画部 総務室 課長
中村 勇人 氏
総務企画部 総務室 課長

 

停電によるコミュニケーションの途絶

中村氏は今までシステム面の災害対策が手薄であったことを認めつつ、今回の地震では、停電とそれによるコミュニケーションの途絶が盲点になったと振り返る。

同社にはIP電話交換機が設置されているが、自家発電機で通電する13日まで東京支店との内線はもちろん、外線も受けられなかった。

「まったく電話が通じなかったため、親会社も取引先も関連会社からも、当社が津波で壊滅したに違いないと心配されました(笑)」(中村氏)

交換機を通さない災害用電話も2回線用意していたものの、ISDNに接続しており、ターミナルアダプタが停電で使えず、結局利用できないまま。衛星電話サービスのイリジウム携帯も契約していたが、11・12日は通話が殺到したためか、まったくつながらない。「さらにこのような大災害時は、携帯電話はまったく当てにならないと改めて痛感しました」と、中村氏。結局、通電によるIP電話交換機の回復を待つことになった。

震災後はNTTドコモの衛星電話サービスを東京・八戸で契約し、緊急時コミュニケーションの維持に備えている。

中村氏が今回の震災を経て、実施を決意した災害対策にはほかに、安全にシャットダウンできるだけの間、電源供給を維持できるようにUPSを最新モデルに更新すること。サーバールームを含めて事務棟(および工場)に、自家発電機を装備することなどが挙げられる。

さらに重要なのは、データ保全の安全性を確保することであろう。現在同社ではSystem iの基幹データはテープに、PCサーバーは別のディスクにそれぞれバックアップしているが、どちらも同じマシン室の中に保管されている。

そこでPCサーバーのバックアップ先は、本社とは別のロケーションに専用サーバーを設置して早急に対処することにした。現時点での有力候補は富山。ここには、親会社である日本高周波製造の主力工場がある。

一方、System iの基幹データをどう保全するかについて、中村氏はずっと頭を悩ませている。サーバーを二重化するのが理想だが、早急に予算を確保するのが難しい。データセンターに委託すれば地震や停電時の可用性は高まるが、ネットワーク回線に障害が生じれば利用不能になる。実際、回線障害は頻繁にではないが、それでもまったく発生しないわけではない。

同社では生産管理システムをSystem iで運用しており、System iが停止すれば、ラインも稼働できない。今回の震災ではラインもシステムも停止したので、ある意味問題にならなかったが、システム担当者としてはシステムだけが停止するという事態は絶対に避けたい。

「トラブル発生時に迅速に対処できる点も、やはり手近にSystem iを置いておきたいと考える理由です」(中村氏)

基幹データの保全性という点については、今後予算とのバランスを図りながら、現実的な選択肢を調査し、そう遠くないタイミングで最善策を選ぼうと考えている。

 

東日本大震災発生からの 主な動き

3月13日 自家発電装置で本社建屋に通電、サーバー再起動。Systemiのミラーディスクに障害
3月14日 電源復旧
3月21日 ネットワークの不具合を解決
3月22日 生産を一部再開
4月12日 操業を全面再開

  

COMPANY PROFILE
創業:1951年
設立:1981年
資本金:4億円
売上金:68億円(2008年度)
従業員数:201名(2009年3月)
業務内容:鋳鉄製品の製造・販売
http://www.koshuha-foundry.co.jp/