Home Watson-AI Cognitive AD-check Platform|AIが不適切な広告クリエイティブを自動的に判定する ~薬機法や景表法への抵触、ブランドイメージの毀損をチェック |Watson Solution Book●パソナテック

Cognitive AD-check Platform|AIが不適切な広告クリエイティブを自動的に判定する ~薬機法や景表法への抵触、ブランドイメージの毀損をチェック |Watson Solution Book●パソナテック

by kusui

 

不適切な広告を審査する
Watsonソリューション

 ITやエンジニアリング分野に特化した専門人材サービスを提供するパソナテック。2017年に発足した同社のストラテジックソリューション部はそのなかで、「テクノロジーを活用して人材を活かす」という観点から、主にAIやIoTなどを軸にしたソリューション事業を展開している。

 2017年4月に「IBM Watsonエコシステムプログラム」のパートナーとなり、AIビジネスの可能性を模索するなか、同部の小野寺悟部長はかねてから付き合いのあった(株)AJAとの会話から、Watsonソリューション実現へのヒントを得た。

 

小野寺 悟氏 株式会社パソナテック ストラテジックソリューション部 部長

 

 AJAは、(株)サイバーエージェントの100%子会社であり、「Ameba」を中心とするメディアデータを活用したアドテクノロジー事業を展開する。同社は広告クリエイティブ審査ソリューション「AJA GREEN」を通じて、日々大量に出稿されるサイト広告が、薬機法や景表法などに抵触しないか、企業イメージやブランドを毀損していないかなどを、自社のルールに基づき、広告1件1件について審査している。

 広告クリエイティブ審査業務は、多大な作業工数と担当者の専門的な知識や経験を必要とする一方で、しばしば作業工程が属人化しやすい傾向にある。また人材育成の面でも、育成に時間を要するため、業務の効率化を進めるうえで課題は多い。

 そこで人的依存度の高いこの審査業務を、AIを活用することで効率化し、審査精度の向上を実現し、かつ業務の属人化を防ぐソリューションとして実現できるのではないかという発想から、2018年4月にAI広告審査システム「Cognitive AD-check Platform」(以下、CAP)が誕生した。

 CAPの仕組みは、以下のようになる。ネットワーク広告では通常、一元的な広告配信プラットフォームである「DSP(Demand-Side Platform)」や、広告収益の最大化を目的とした媒体側のプラットフォームである「SSP(Supply-Side Platform)」を活用して、各種メディアに広告を流している。

 そこでSSPやDSPに流す広告のクリエイティブデータ(テキストデータ)をCAP側のAPIシステム(「IBM API CONNECT」を使用)を経由して、WatsonのAPIである「Natural Language Classifier」(以下、NLC)に送信する。

 またCAPは、「CRM」と呼ばれる管理ソフトウェアを搭載している。審査結果と判定理由の詳細などを記したレポートの出力(ダッシュボード)、確信度の閾値を管理するパラメータ設定、コーパスの学習支援、問い合わせフォームやFAQなどはCRMで操作する。

「AIで広告審査が可能かどうか、あれこれ机上で考えるより、まずはトライしてみることが重要だと考えました。そこで2017年春から2?3カ月かけて、 PoCのさらに前段階となるプレPoCを社内で実施しました」(小野寺氏)

 このときはAJAの保有する数万件の審査結果データを教師データとして活用し、Watsonに審査内容を学習させた。そして最初のテストで、確信度が約70%前後という結果を得た。

「最初の結果としてこの評価であれば、十分に実用に耐え得るソリューションを構築できると自信をもちました」と語る小野寺氏。そこでさらに教師データを増やし、本格的なコーパスの構築に着手。検証のプロセスを繰り返し、最終的に確信度約90%以上の結果を得たところで、実際にAJAの環境とのAPI接続を実施した。

 SSPやDSPと連携させて、2018年4月からCAPの提供を開始。5月からは、段階的な実運用への適用をスタートさせている。

 CAPとの連携により、新たにAIを活用した審査機能を追加した「AJA GREEN」は、広告クリエイティブを自動で判定し、薬機法および景表法に抵触する恐れのある、あるいはメディアのブランド毀損につながるリスクの高い広告クリエイティブを優先的に抽出できる。従来、100%の工数を要していたと仮定すると、CAPの利用により、70%以下で対応可能になると想定されている。

 また審査処理時間の短縮に加え、知識と経験など、審査担当者の習熟度合いによる判断のばらつきを平準化できることや、人材の育成の観点でも、これまで審査業務経験を積むのに必要としていた時間が減るという点で、CAPの導入効果は大きい。

 

 

次バージョンでは
画像認識APIを搭載

 CAPはユーザーが保有するデータをもとに独自のコーパスを構築する必要があり、学習データの受領からPoC、コーパス構築、実装まで、目安として約4カ月を想定している。初期費用は250万円?、月額費用は50万円?(月固定30万円+重量課金、いずれも税別)である。

 現在、広告代理店をはじめ、さまざまな企業から問い合わせが寄せられている。もともとの狙いである広告クリエイティブの審査はもちろんだが、ある金融業界のケースでは、Webや紙媒体を問わず、マーケティング活動で展開する広告やカタログ、ポスターなどを対象に、業界の表示規約、景表法や版権、自社の独自ルールへの抵触チェック、さらに記載の漏れや文字サイズの妥当性の確認などに利用したいと検討を進めている。

 また今秋には、Watsonの画像認識APIである「Visual Recognition」(以下、VR)を搭載した次バージョンをリリースする予定である。VRを搭載すれば、テキストだけでなく、広告画像の妥当性を審査できるのに加え、たとえば自社のロゴ使用の条件に適合しているかのチェックなどにも使用できる。

 広告の審査を超えて、CAPは今後さまざまな領域に広がっていくことになりそうだ。

[IS magazine No.21(2018年9月)掲載]

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