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電子契約サービスは「進化」する ~後発の強みをテコにした「WAN-Sign」の4つの特徴とは

3種類の契約形態に対応
後発の強みを発揮した特徴

本サイトの誌読者の中には「ワンビシアーカイブズ」という名前を聞くと、「磁気テープ保管の?」とか、「機密文書保管の?」といったことを思い浮かべる人も多いだろう。まさにその会社で、ワンビシアーカイブズは磁気テープや機密文書の保管に始まり、情報資産(書類・媒体・デジタルデータ)の発生から活用、保管、抹消までのライフサイクルのすべてをカバーする情報資産管理の総合サービス企業(NXグループ)である。顧客数は、官公庁や金融・医療・製薬業を中心に4000社以上。「セキュリティ基準の厳しい企業の採用が多い」という。

「WAN-Sign」は、そのワンビシアーカイブズが2019年3月29日にリリースしたクラウドベースの電子契約サービスである。最近、IBM iユーザーの間で採用が広がりつつある。

電子契約サービスとは、「紙+押印」で行っている契約の締結を「クラウド上の電子的な押印」で済ませるもの。クラウドサービスなので契約締結のスピードアップや効率化、コスト削減、内部統制強化などが図れるが、調査会社によると、企業の導入率は30%程度と高くない。

その理由としては、契約の相手先からの同意が得にくい、書面契約との整合性や2重管理の懸念、電子契約のために必要なセキュリティや社内ルールの整備の負担、などが挙げられる。要するに、対処・考慮すべき事項が多いのと、市場に登場している電子契約サービスの多くが“帯に短しタスキに長し”であるために導入が進んでいないのである。

ワンビシアーカイブズの大川洋史 営業開発部 課長(WAN-Sign事業推進グループ長)は、「WAN-Signは、電子契約サービスとしては後発の部類。発売を遅らせたぶん、エンタープライズのお客様のニーズを十分に汲み取ってサービス化した製品です」と話す。その特徴と他社サービスとの違いは、次の4点という。

①多様な契約形態(当事者型・立会人型・ハイブリッド型)への対応

②紙と電子の一元管理

③高度なセキュリティ・内部統制機能(標準装備)

④国内自社データセンターによるセキュリティ・データ保全体制

 

大川 洋史氏 株式会社ワンビシアーカイブズ
大川 洋史氏 株式会社ワンビシアーカイブズ

 

①多様な契約形態への対応

電子契約の形態には、第三者機関である認証局の電子証明書を必要とする「当事者型」と、メールアドレスを署名者情報として利用する「立会人型」があり、どちらも電子署名法に準拠した契約形態である。WAN-Signはこの2種類の契約形態を利用可能で、当事者型を「実印版」、立会人型を「認印版」と呼んでいる。2つの契約形態を有しているため、1つの契約の中で当事者型と立会人型が混在する「ハイブリッド型」の締結も可能なのが、WAN-Signの特徴の1つである。(図表1)。そのうえに、3社以上の複数者契約や自社のみ/相手先のみの片側署名、複数宛先への一斉署名依頼や回覧系文書などの多様な契約パターンに対応している(図表2)。

 

 

 

②紙と電子の一元管理

一口に「契約書」といっても企業ではさまざまな契約書を使用し、所定の期間保存して参照・利用している。この運用のなかで、電子契約サービスを新規に検討するユーザーが最初に直面するのが、「紙の契約書と電子契約書の一元的管理の問題」と、大川氏は指摘する。紙と電子の契約書をそれぞれ別に管理するのは工数が増えるだけでなく、紛失や更新漏れなどのミスの増加が懸念される。ユーザーにとっては、電子契約サービスの多くが紙の契約書に対応していない点や、対応しても多額の追加費用が発生する点が悩みのタネという。

WAN-Signは、紙の契約書と電子契約書を一元管理する機能を標準で備えている。大川氏は、「その点が紙の契約書の保管・運用で50年以上の歴史と実績、ノウハウをもつ当社の大きな強みです」と強調する。WAN-Signはこれに加えて、他社の電子契約サービスで作成した電子契約書もあわせて一元管理可能である。また、WAN-Signの管理画面からワンビシアーカイブズへの書面契約の保管依頼・電子化依頼が可能で、保管センターと連動する仕組みを有している。この仕組みで「特許を取得済み」という(特許第6898416)。

③高度なセキュリティ・内部統制機能

紙ベースの契約を電子契約に切り替えるときにユーザーがもつもう1つの懸念は、「セキュリティ、内部統制、データガバナンス」と、大川氏は話す。たとえば、秘匿性の高い契約書を誤って送信することはないか、複製や転送が不正に行われることはないか、内容が勝手に書き換えられることはないか、など。セキュリティは大きな社会問題ともなるので、ユーザーの不安や懸念は尽きないという。

じつはWAN-Signは、製品開発の途上でヒアリングしたユーザーからセキュリティの問題を指摘され、機能の強化を行った経緯がある。

「WAN-Signは金融機関が求める高度なセキュリティ機能の実装を目標に開発を進めましたが、プロトタイプの検証をお願いした金融機関のお客様から厳しい指摘を受け、いくつかの機能を作り直しました。世に出たWAN-Signは、数ある電子契約サービスのなかで最も高度なセキュリティ・内部統制機能を備える製品だと自負しています」(大川氏)

たとえばWAN-Signには、契約書をクラウドへアップする「担当者」と、契約書に捺印して相手先へ送信する「捺印者」のほかに、「承認者」による承認を必須とする機能がある(図表3の⑥⑦)。これは契約内容の誤りや誤送信、担当者・捺印者による内容・宛先の改ざんを防ぐ目的で実装したものだが、元をたどれば金融ユーザーが指摘した機能である。

 またさらにWAN-Signのセキュリティ機能の特徴は、きめ細かいロール設定にも表れている。ロールとはWAN-Signを利用する人の役割・権限。WAN-Signでは10種類のロールを設定・管理でき、企業の運用に即したセキュリティ・内部統制の仕組みを構築できる。

 

 

④国内自社データセンターによるセキュリティ・データ保全体制

契約書は監査対象となることが多いので、どこにどのような形で保管・管理されているかは重要なポイントである。

ワンビシアーカイブズでは1966年の創業以来、顧客の書面契約書を国内の自社センターで保管・管理してきたが、その厳格なセキュリティ・ノウハウはそのままWAN-Signに継承されている。つまり、電子契約書は東西の自社センターで厳重な管理のもと保管され、相互にバックアップを取るなどのデータ保全体制が敷かれている。また顧客サイドの監査人がデータセンターに立ち入って調査を行うことも可能で、

「この点が、内部への立ち入りを認めないクラウドセンターを利用する他社電子契約サービスとの違いで、この点を高く評価されるお客様も少なくありません」と、大川氏は述べる。

 

全社への展開で注目を集める
フォルダごとのアクセス制限機能

大川氏によると、WAN-Signの利用は「個別部署から全社展開へと広がりつつある」という。

「WAN-Signには、初期費用なし、ユーザーID無制限、1契約締結ごとの従量課金という特徴があるのでスモールスタートされるお客様が大半ですが、2021年は導入済みのお客様が1部署から全社展開へと進む傾向が顕著に見られました」(大川氏)

そうした全社展開を図るユーザーの間で最近注目を集めているのが、「フォルダごとのアクセス制限機能」という。部署ごと、あるいは契約書ごとにフォルダを分けることができ、ユーザーグループごとにフォルダへのアクセス権限を設定できる機能である。大川氏は、「この機能に注目し、他社サービスからWAN-Signへと乗り換えるお客様も少なくありません」と語る。

WAN-Signは現在、多様なクラウドサービスとの連携を拡大している。外部のERPシステムやワークフロー、文書管理、顧客管理サービスなどとAPI経由で連携し、業務の一連の流れのなかで署名・契約処理が完結するソリューションが増えつつあるのだ(図表4)。またWAN-Signを組み込んだ外部クラウドサービスも複数あり、「お客様はWAN-Signと気づかずに利用されているケースも多くあります」(大川氏)という。

DXとはデジタル化による業務の革新。電子契約サービスはそのDXの基本を担う機能の1つになる。電子契約サービスの導入・活用を本格的に検討する時期にきていると言えそうだ。

 

 

・WAN-Signページ

 

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