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分析&BIツールの「リーダー」は、マイクロソフト・Tableau・Qlikの3社 ~Gartnerがマジック・クアドラント「アナリティクス&ビジネスインテリジェンス・プラットフォーム」を発表

Gartnerは3月22日(現地時間)、「アナリティクス&ビジネスインテリジェンス・プラットフォーム」のマジック・クアドラントを発表した。マイクロソフトの「Power BI」、タブロー/セールスフォースの「Tableau」、IBMの「IBM Cognos Analytics with Watoson」「Cloud Pak for Data」といった製品カテゴリーの市場分析である。

今回調査対象とした「アナリティクス&ビジネスインテリジェンス プラットフォーム」は、次の12のコア機能を備える製品と定義している。

・セキュリティ
 プラットフォームのセキュリティ、ユーザー管理、プラットフォームへのアクセス認証・監査を可能にする機能。

・ガバナンス
 プロトタイプから製品化まで、使用状況を追跡し、情報の作成と共有方法を管理する機能。

・クラウド対応分析
 オンプレミスおよびマルチクラウド上のデータを、クラウド上で分析するリケーションの構築・展開・管理機能。

・データソースの接続性
 オンプレミスとクラウドの両方で、さまざまなタイプのストレージに接続しデータを取り込める機能。

・データの前処理
 ドラッグ&ドロップで、異なるソースからのデータを組み合わせ、分析モデルを作成できる機能

・カタログ
 コンテンツを見つけやすく、使いやすく表示する機能。カタログは検索可能で、ユーザーに対するレコメンド機能ももつ。

・インサイト(洞察)の自動生成
 機械学習技術を適用して、エンドユーザー向けにインサイトを自動生成する機能。

・データの可視化
 洗練されたインタラクティブなダッシュボードを備え、チャート画像の操作によるデータ探索を可能にする機能。

・自然言語クエリー
 自然言語や音声でデータの検索・照会が可能。

・データ・ストーリーテリング
 見出し、説明文、可視化データ、オーディオビジュアルコンテンツを組み合わせたニューススタイルのデータストーリーを作成する機能。

・自然言語生成
 データから発見された洞察を、豊かな言語で自動的に記述する機能。

・レポーティング
 ページ分割されたレポートを提供し、大規模なユーザーコミュニティに対してスケジュール設定やバースト処理を行える機能。

 

マジック・クアドラントとは、特定の市場を対象に、製品(企業)を4つのタイプに分類するGartner独自の競合分類手法。4つのタイプは、以下のように分類される。

・Leader(リーダー):ビジョンを実行できており、将来のポジションを確立している製品・企業

・Challenger(チャレンジャー):現在高い業績を誇っているか、大きなセグメントを支配していても、市場の方向性を理解していることを示していない製品・企業

・Visonary(概念先行型):市場の方向性を理解している、あるいは市場ルールを変えるビジョンを持っているが、実行に移せていない製品・企業

・Niche Player(特定市場指向型):小さなセグメントに焦点を合わせることで成功を収めているか、焦点が定まっていないために他社よりも革新的ではなく、実績も他社を凌ぐものではない製品・企業

今回の4つのタイプに分類されたのは、次のとおりである。*(カッコ内は製品名)

Leader(リーダー)
・マイクロソフト(Power BI)
・ブロー/セールスフォース(Tableau)
・Qlik(Qlik)

Challenger(チャレンジャー)
・グーグル(Looker)
・Domo(Domo)

Visonary(概念先行型)
・ThoughtSpot(ThoughtSpot)
・Sisense(Sisense Fusion)
・オラクル(Oracle Analytics Cloud)
・SAP(SAP Analytics Cloud)
・TIBCO(TIBCO)
・SAS(SAS)
・IBM(IBM Cognos Analytics with Watoson、IBM Cloud Pak for Data)
・Yellowfin(Yellowfin)
・Tellius(Tellius)

Niche Player(特定市場指向型)
・AWS(Amazon QuickSight)
・アリババ(Alibaba Cloud)
・Zoho(Zoho)
・MicroStrategy(MicroStrategy)
・Pyramid Analytics(Pyramid)
・Incorta(Incorta Enterprise Analytics)

マジック・クアドラント「アナリティクス&ビジネスインテリジェンス・プラットフォーム」 Source: Gartner (March 2022)
Source:  Gartner (March 2022)

Leader(リーダー)に選出したマイクロソフトとTableau(Salesforce)、Visonary(概念先行型)のIBMについて、その「強み」と「注意点」をGartnerは次のように指摘している。

マイクロソフト(Power BI)*Leader(リーダー)

Office 365による大規模な市場開拓、および包括的で先見性のある製品ロードマップを有している。Power BIは、主にAzure上で稼働するSaaSオプションとして展開されているが、「Power BI Report Server」という低機能のオンプレミスオプションも提供されている。

マイクロソフトは、Power BIをOffice 365、Teams、Excel、SharePointと密接に連携させることを続けている。2022年のマイクロソフトのビジョンは、Power BIを組織におけるデータと分析のハブとすることである。

◎強み

・Office 365、Teams、Azure Synapseとの連携・統合は、ビジネスユーザーにとって魅力的。Power BIとAzure Synapseの連携は、複数のデータ/分析のユースケースに対応する。

・Power BIのクラウドサービスは、拡張アナリティクスや自動ML(AutoML)機能とのセットを含む豊富な機能を備えている。

・マイクロソフトは、Power BI、Power Apps、Power Automateを横断的に活用し、ビジネス価値を向上させる明確なビジョンを持っている。Power Appsは、Power BIのダッシュボードへの組み込みやPower BIのデータセットへのアクセスが可能で、Power Automateのフローは、データに基づき多様なアクションを起こすように構築できる。テキスト分析、センチメント分析、画像分析などのAIを活用したサービスは、Power BI Premium内で利用可能。

◎注意点

・オンプレミス用のPower BIは、クラウド対応版と比較すると、ダッシュボード、ストリーミング分析、プリビルドコンテンツ、自然言語による質疑応答、自動化された洞察、アラートなどの重要な機能に欠ける。

・Power BIサービスはAzureでのみ実行されるため、IaaS選択の柔軟性に欠ける。

・公開されたPower BIアプリと作成のためのワークスペースが1対1の関係であるため、組織は何百ものワークスペースを手動で管理している可能性がある。これは大きな管理オーバーヘッドにつながる可能性がある。ただしこの問題は、マイクロソフトが解決のためのロードマップを公表している。

Tableau/セールスフォース (Tableau) *Leader(リーダー)

Tableau CRMは、アナリストや市民データサイエンティスト向けの分析機能を提供する。また2021年にはSlack統合を発表し、すべてのライセンスタイプに含まれるようにした。Tableauは、行レベルのセキュリティと、データテーブルの抽出と管理を可能にする仮想データ接続を追加することで、エンタープライズ機能を向上させた。

◎強み

・Tableauは、ビジネスユーザーがデータを視覚的に探索するための直感的なエクスペリエンスを提供している。特許取得済みのVizQLエンジンによって、コード不要のドラッグ&ドロップ体験が可能。データストーリーテリング・ベンダーのNarrative Scienceの買収により、Tableauの自然言語生成(NLG)とデータ・ストーリーテリング機能が今後向上していくものと思われる。

・ユーザーはTableauに対して“ファン”のような態度を示している。Tableauのアナリティクス・エコシステム「Tableau Economy」は、ユーザー、パートナー、アナリティクススキルを持つ多くの人々に広大なコミュニティ空間を提供している。そこで生まれた「Hire Me」は、Tableauのスキルを持つ人材の雇用支援機能となっている。

・Salesforceのデータプラットフォームに対する継続的な投資により、そのエコシステムの一部として市場拡大のチャンスがある。

◎ 注意事項

・他のクラウドベンダーと比較すると、Tableauのライセンスコストは高価である。

・Tableauの全体的なサービス/サポートは平均よりも下回る、との報告がある。

・Einstein Discoveryのノーコード機械学習モデルの構築・展開のプロセスは、Tableauのユーザーエクスペリエンスから切り離されて、手間がかかる。これへの対応は、Tableauの2022年のロードマップに記載されている。

 

IBM(IBM Cognos Analytics with Watoson、Cloud Pak for Data)*Visonary(概念先行型)

IBM Cognos Analytics with Watsonは、ハイブリッド、マルチクラウド、パブリック、プライベート、オンプレミスの展開において、一貫したコア機能を提供している。

またCloud Pak for Dataは、AWS・Azure・GCP・IBM Cloudをサポートし、ストレージ、データ仮想化、データ精製、データカタログ、DSMLサービスなどのIBMのD&Aサービスのコンテナ化スタックと組み合わせて使用する選択肢を顧客に提供している。

2021年にIBMは両製品に対しユーザーインターフェースを強化してWatson搭載BIソリューションへ発展させ、Watson MomentsとNLP、データのストーリーテリングのためのNLG、NLQアシスタントによる自動インサイトも統合させた。さらにプランニングとアナリティクスを統合するための投資も行っている。

◎強み

・IBM Cognos Analytics with Watsonは、単一のプラットフォームで、エンタープライズレポート、セルフサービスのビジュアル調査、データのビジュアル化、拡張分析、組み込みなど、多様なユースケースに対応し得る数少ないプラットフォームの1つである。

・IBMは、オンプレミス、SaaS、IBM Cloud上のホスティング、主要IaaS(AWS、Azure、GCP)へのライセンス持ち込み、IBM Cloud Pak for Dataなど、柔軟な導入オプションを提供している。

・IBMのビジョンは、プランニング/レポート/分析を共通のポータルで統一し、あらゆる場所でアナリティクスを適用するためのロードマップをもっている。販売戦略は、CognosとIBM Planning Analytics with Watsonを、IBMの幅広いポートフォリオとリンクさせながら販売することである。

◎注意点

・IBMは、IBM Cloud Pak for Dataを中心にマーケティングを展開している。このビジョンは、技術的にはオープン性とコンバージェンスも包含しているものの、メッセージは製品導入評価者の心に響いていない。Gartnerによるユーザー調査では、Cognosは改善されているにもかかわらずIBMの中ではますます周辺に追いやられている、との報告がある。

・IBMは幅広いデータ&アナリティクスサービスと強力な地域戦略をもつにもかかわらず、Google WorkspaceやMicrosoft Officeのようなエンタープライズアプリケーションがないため、顧客とのタッチポイントが限られ、市場拡大の波に乗れていない。

・Cognosのサブスクリプション価格は、新規顧客向けに1ユーザーあたり月額で大幅に引き下げられ、小規模または独立系ベンダーの価格と同程度になった。ただし、ユーザーあたりの価格は、他の大手クラウドプロバイダーよりも高い。

 

・レポート「2022 Gartner® Magic Quadrant™ for Analytics and Business Intelligence Platforms」(英語) *リンクはQlik社サイト
https://www.qlik.com/us/gartner-magic-quadrant-business-intelligence?ga-link=hpr1-gartmq-us

[i Magazine・IS magazine]

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