Home Watson-AI-IBM i関連 IBM iクラウド導入9パターン ~IaaS利用は300社、本格導入はこれからが本番

IBM iクラウド導入9パターン ~IaaS利用は300社、本格導入はこれからが本番

by kusui

IaaSとしてのIBM i利用は
300社程度

 
 IBM iを対象にしたクラウドサービスは、2013年ごろからベンダーによるビジネスが本格化し始めている。2011年にクラウド事業部を発足させたJBCCでは、このころから急ピッチで導入企業を増やし始め、ベル・データでは、従来データ・バックアップのみを対象にしていたサービスを2013年から本番機全体へと拡大、クラウド専業ベンダーのIIJグローバルソリューションズはこの年にIBM i向けサービスをスタートさせている(Part 3で、主要5社の取り組みをレポート)。
 
 一方、IBM iユーザーの動きはどうだろうか。それを示す市場調査などはないが、調査会社ガードナージャパンが「日本におけるクラウドコンピューティングの採用率(IT市場全体が対象)」という興味深い調査データを公表している(2017年4月)。それによるとクラウド全体の採用率は16.9%(IaaS=16.1%、PaaS=16.3%、SaaS=31.7%)で、現在の状況は「本格利用前夜」という(図表1)。
 
 
 
 アマゾンウェブサービス(AWS)が日本でクラウドビジネスを開始(2010年)してから丸6年後の状況が「本格利用前夜」という指摘は、IBM iユーザーの動向を考えるうえでも参考になる。Part 5で取材した主要5社の導入企業数は、合計でも300社程度。IBM i市場全体で見れば数パーセント程度のごく小さな割合である。IBM iユーザーの本格利用は、まさに「これからが本番」と見ていいだろう。
 
 

丸ごとの移行
丸ごとのサポート

 では、導入済みのIBM iユーザーはどのような利用を進めているだろうか。これについて、注目すべき動きが1つある。
 
 それは、オンプレミスのIBM iを丸ごとクラウドへ移行する動きである。特にSMB(中堅・中小企業)ユーザーの間で顕著で、SMB企業にフォーカスしてパブリッククラウドビジネスを推進するベル・データでは、導入企業45社のうち約3/4が丸ごとの移行である(図表2)。SMBユーザーが多い福岡情報ビジネスセンターでも、導入企業の約80%がクラウド上でIBM iシステム全体を稼働させている。
 
 
 
 
 これは、小規模な周辺システムからスタートして徐々に基幹システムへと拡大していく一般的なクラウド利用と比べて対称的で、この「基幹システムから」と「丸ごとの移行」は注目してよい動きだ。
 
 これには、IBM iユーザー特有の事情が反映している。
 
 IBM iユーザーの多くは、RPG技術者の不足や運用負荷の増大、システムのタイムリーな導入・展開などで多数の課題を抱えている。とりわけ少人数で運用中の企業では、これらが事業継続の脅威となり、待ったなしの状況にある。
 
 そうした場合に、クラウドサービスの導入が問題解決の最適解になっているのだ。それが「丸ごとの移行」の背景にある。
 
 そしてこの動向を踏まえて、IaaSとしてのIBM iの提供だけでなく、その上位層のアプリケーション(運用・保守・構築)も視野に入れた対応力強化を図るベンダーが出始めている。IaaSに主軸を置くベンダーは、アプリケーションに強いパートナーとのエコシステムを構築しつつある。つまり、「丸ごとのサポート」への動きが進んでいるのである。
 
 一方、大規模ユーザーの間でも変化が見られる。「IBM iを数十台ももつユーザーが、本格的なクラウド導入を検討し始めている」と、日本情報通信は証言する。増加する一方の区画の管理やシステムのクイックな導入を可能にする点が、その動機の1つという。
 
 

「保守サービス終了」が
クラウドへの移行を加速する

 
 図表3は、IBM iユーザーがクラウドサービスを採用する主な理由をまとめたものである。前述の要員不足や運用負荷増大への対応に加えて、コスト最適化、システムの柔軟な利用、事業継続レベルの向上など、さまざまな課題の解決策としてクラウドサービスが浮上している。
 
 また、昨年(2017年)9月にPOWER7搭載モデルなどの「保守サービス終了」が発表されたが(関連記事「2019年の保守サービス終了に向けて Power Systems市場が動く」)、これへの対応策としてIBM iのクラウドサービスを選択する動きが加速すると、ベンダー各社は見ている。「保守期間やコンピューティング・リソースなどで、メーカーの意向に左右されない自由な環境の選択」が、その大きな理由という。
 
 図表4は、現在登場しているIBM iクラウドサービスである。多様なベンダーが、特徴あるサービスを提供している。
 
 
 
 

さまざまな活用が進む
9つの導入パターン

 ここからは、Part 3の主要5社への取材を通して見えてきたIBM iクラウドの導入パターンを紹介しよう。要員不足への対応からWatsonなど先進的なサービスの利用まで、バラエティに富んだ展開がある。
 
 

◎導入パターン1 
IBM iを全面移行し、オンプレミスを廃止

 先ほど紹介した、オンプレミスのIBM iを丸ごと移行するパターンである。全面移行によって、ユーザーによるインフラ部分の運用・保守が不要になる。全面移行するSMBユーザーのなかには、業務アプリケーションの保守・サポートを委託し、さらに将来的なシステム構築の支援を期待する例も多い(図表5)。
 
 

◎導入パターン2 
IBM iの一部システムをクラウド上のIBM iへ移行

 オンプレミスのIBM i上に設けていたテスト環境や、テスト用IBM iを廃止し、クラウドへ移行するパターンである。これによって、本番システムへの影響といった懸念が不要になり、テストの期間・規模に応じてクラウドの利用をオン/オフできる。リソースとコストの最適化が図れるパターンである(図表6)。
 
 
 

◎導入パターン3 
IBM iの一部システムをクラウド上のIAサーバー上で構築

 IBM i上のシステムからフロント部分を切り出し、クラウドのIAサーバー上に構築するパターンである。フロントシステムはUI/UX(ユーザー体験)を作り出す部分なので、業務ロジックと比べて変化が多い。IAサーバー上でオープン対応とすることで、外部のエンジニア/デザイナーを活用しやすいメリットがある(図表7)。
 
 

◎導入パターン4 
クラウド上のIBM i機を利用しHAを実現

 IBM iを対象とするクラウドサービスの最初期から提供されているサービスの1つで、ユーザーにとって、初期コストの削減(セカンド機のオンプレミス導入と比較して)、基盤運用からの解放などがメリットになる。ホットスタンバイ、コールドスタンバイなどがあり、料金が異なる(図表8)。

◎導入パターン5 
クラウド上のIAサーバーへIBM iデータをバックアップ

 最も利用されているIBM iクラウドサービスの1つ。オンプレミスのテープバックアップと同等の機能と、同様の操作で利用できるサービスが多い(図表9)。
 
 
 

◎導入パターン6 
クラウド上のIBM i機上で新規システムを構築

 IBM iのリソースに余裕がないためクラウド上で構築し、オンプレミスと連携させるパターンである(図表10)。
 
 

◎導入パターン7 
クラウド上のIAサーバー上で新規システムを構築

 IBM iを必要とするパターン6と異なり、IAサーバーで新規システムを構築するパターンである。IoTやビッグデータ用システムの導入例がある(図表11)。
 

◎導入パターン8 
SaaSサービスを利用し、IBM iと連携

 現在、IBM iと容易に連携できるSaaSサービスが、基幹系・オフィス系・フロント系・セキュリティ系など多数登場している。また、さまざまなSaaSサービスをクラウドサービスのオプションとしてラインナップしているベンダーもある(図表12)。
 
 

◎導入パターン9 
Watsonを利用し高度な業務ソリューションを実現

「先進技術はクラウドから始まる」という言葉があるように、コグニティブやビッグデータ/アナリティクスなどの主要技術/サービスは、クラウド上で提供されている。IBM i ユーザーの間でもパターン9の利用が始まっている(図表13)。
 
 

RESTとJSONを使えば
多様なサービスと連携可能

 ここからはIBM i環境で一般的に利用可能な技術を使って、IBM iとクラウドとを連携させる方法を紹介しよう。なお以下の内容は、この分野で豊富な知見をもつ日本アイ・ビー・エムの菅田丈士氏(Power Systemsテクニカル・セールス アドバイザリーITスペシャリスト)への取材に基づいている。
 

菅田 丈士氏 日本アイ・ビー・エム株式会社 Power Systemsテクニカル・セールス アドバイザリーITスペシャリスト

 

 
 
 最初に「REST」と「JSON」について。IBM iの世界では馴染みの薄い技術だが、REST(REpresentational State Transfer)はWeb上で情報をやり取りするための設計モデル。かつてのSOAPに代わる現在の主流技術で、オープンな環境では今やいたるところでRESTが使われている。開発するシステムやサービスをREST対応にしておけば、さまざまな外部システムと連携可能。そして、そのREST規約に基づくAPIが「REST API」である。一方、JSON (JavaScript Object Notation)は軽量のデータ交換フォーマットで、これもオープンな環境で広く普及している。
 
 IBM iの世界では、IBM iの標準機能である「統合Webサービス・サーバー」が2015年からRESTをサポートしている(IBM i 7.1とIBM i 7.2ではPTF適用が必要)。また、JSONに対しては、2015年以降、継続的に機能拡張が続けられている(IBM i 7.2以上)
 
「この対応によって、REST APIのプロシージャをILE RPGで書けるようになり、それの公開によって、IBM iと外部システムがRESTとJSONで連携できるようになりました。REST APIを備えるIBM iは、外部からはRESTサーバーとして見えています」と、菅田氏は説明する。
 
 ここで、RESTとJSONを用いてIBM iとIBM Watsonを連携させた、在庫照会のチャットボットシステムを紹介しよう。
 
 ユーザー(顧客)がインターネットにつながるPCから「バレーボールはありますか」などと質問を入力すると、受信したWatson API の「Conversation」が内容を判断し、それをもとに在庫照会のクエリーをセットしてIBM i側へ投げ、その結果をWatson API の「Text to Speech」が音声変換して、「在庫は本店に30あります」などと回答する、というシステムだ。
 
 図表14の「Node.jsアプリケーション」は、一連の処理ロジックを記述した業務プログラムだが、このシステムのポイントは、Node.jsアプリケーションとIBM iとをRESTとJSONで連携させていることである(Node.jsアプリケーションとWatsonの連携もRESTとJSON)。
 
 
 
 
 これは、在庫管理システムを呼び出すREST APIをILE RPGで記述し、そのAPIをNode.js側からコールするという仕組みで可能になっている。要するに、IBM i上の在庫管理システムをRESTサービス化したのだ。実にシンプルな方法で、IBM iとWatsonの連携が実現している。
 
 IBM iとクラウドとの連携ではこのほか、IBM i側とクラウド側の双方にNode.jsプログラムを搭載し、相互にやり取りさせる方法もある。Node.jsでは、Db2 for iを操作するためのAPIセット「Db2 for i Access APIs」と、IBM i上のXMLサービスを呼び出すためのAPIセット「Toolkit for IBM i」が提供されている。これを使うと、たとえばクラウド上のアプリケーションからオンプレミスのDb2 for iに対してSQLでアクセス可能になる。
 
「IBM iはこれまで、クラウドから遠い存在と思われることが多かったのですが、連携の土俵はすでに整っており、拡張も続けられています。昨年(2017年)秋の機能拡張で、Db2 for iのデータをJSON形式で書き出せるようになり、クラウドとの連携性がさらに高まりました(IBM i 7.3およびIBM i 7.2)。IBM iは今、基幹システムとクラウド上の多様なサービスをつなぐ強力なプラットフォームへと成長しています」と、菅田氏は強調する。
 
 
[i Magazine 2018 Spring(2018年2月)掲載]
 
 
 
 
 
 
 
 
 

related posts