IBM iの世界において、生成AIの活用が「本番前夜」を迎えている。
その中で、とりわけ注目に値するのが、日本IBMが独自に進める
日本のRPGユーザーとCOBOLユーザーのための
「IBM iコード・アシスタント」である。同プロジェクトの中核メンバーである
日本IBMの茂木映典、井上忠宣、肥沼沙織の3氏に
IBM iコード・アシスタントの機能と、プロジェクトの進捗状況、
今後の方向性について解説してもらった。
IBM iコード・アシスタントは、長年にわたり蓄積されてきた固定フォームRPGとCOBOLの資産を、次世代へ確実に継承するための極めて重要な橋渡し役である。
IBM iの現場において改良を重ね磨き上げられてきたコードは、単なるプログラムの記述にとどまらず、企業の業務プロセスやノウハウそのものが凝縮された、類まれな「知的資産」にほかならない。
IBM iは、卓越した信頼性、高可用性、そしてセキュリティ性能を兼ね備えた、まさに堅牢なプラットフォームである。一貫した垂直統合型アーキテクチャの採用により、ほかのシステムでは到達し得ない高度なパフォーマンスと高い運用効率を実現している。
そして中でもRPGは、IBM iに最適化された専用言語として綿密に設計されており、複雑かつ多様な業務ロジックを効率的かつ安定的に処理する、傑出した能力を有している。
しかしその一方で、固定フォームのRPG Ⅲ/ILE RPG(RPG Ⅳ)は、業務ロジックを簡潔に記述できるという大きな利点をもつ半面、Javaや.NET環境に慣れた開発者には、その独特な記述スタイルが理解の障壁になり得るという側面も存在する。
このような中、既存のRPG資産をほかのプログラミング言語へリライト(書き直し)したり、システム全体をリビルド(再構築)するというような選択肢が検討されるケースもある。
ところがそのようなアプローチには、往々にして膨大な開発工数と長期に及ぶ工期、それに伴う相当なリスクが内在している。
具体的には、長年培ってきた業務ロジックの再構築や、包括的なテストプロセスの再設計、長期にわたり蓄積されてきた運用ノウハウの再定義などが不可避となり、単純な言語変換の範囲にとどまらない、複雑かつ多岐にわたる課題が生じるのである。そのうえに予期せぬパフォーマンス上の問題や、運用開始後の思わぬトラブルが起きることも可能性を否定できない。
このような理由から、IBM i上でRPGプログラムを継続的に利用し続けることは、極めて重要な戦略的な意味をもつ。既存のRPG資産を最大限に活用しながら、生成AIの革新的な技術を駆使して、RPGコードの可視化や変換、再活用を積極的に推進する。それによって技術の円滑な継承や開発効率の抜本的な向上という、まさに理想的な環境が実現するのである。
IBM iコード・アシスタント・プロジェクトは、IBM iの現場からの声を継続的に反映させつつ発展する動的なプロジェクトである。そしてIBM iが本来もつ真の価値を最大限に引き出す、包括的な支援サービスの提供が最終的な目標である。本プロジェクトの進展に今後も注目をお願いしたい。
[i Magazine・IS magazine]

著者
茂木 映典氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
Power テクニカル・セールス

著者
井上 忠宣氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
watsonx事業部
データプラットフォーム・サブジェクトマターエキスパート

著者
肥沼 沙織氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
Power テクニカル・セールス