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IBM Zへのあらゆるデータの取り込みを可能にするデータ仮想化技術 ~IBM Data Virtualization Manager for z/OSの機能と技術|メインフレーム技術の最新動向④

 

z/OS上に常駐し
多様な機能を提供 

 データ仮想化は、メインフレームをデータ分析プラットフォームとして利用するための主要な要素である。メインフレーム上の非構造または非リレーショナルなデータベースに何十年にもわたって蓄積されてきたデータは、互換性のあるフォーマットに変換してすぐに利用できれば貴重な資産へと変わる。また、リアルタイムにやり取りされるビジネス・トランザクションからリアルタイムにビジネス・インテリジェンス(洞察)を得られれば、そのために要していたコスト、リスク、非効率を削減し、新しい収益を生み出す契機となる。これらの点でデータ仮想化は、経済的に大きなメリットを生み出すのである。

 ユーザーは、データ仮想化ソリューションであるIBM Data Virtualization Manager for z/OS(以下、DVM)を利用することによって、必要な情報のみを分析できる。以下、DVMの特徴を解説しよう。

 DVMはz/OS上に常駐して実行され、多様な機能を提供している(図表)。以下、主要コンポーネントの特徴を紹介しよう。

データマッピング

 DVMでは、非リレーショナルなデータソースをリレーショナル・モデルにマッピングするためのEclipseベースのツールを提供している。このツールにより、コピーブックやカタログなどの情報を使って簡単にマッピング処理が行える。

キャッシュ 

 2GBの境界を超える領域用のメモリフレームによって、頻繁に利用されるデータをメモリ上で保持できる。これにより、繰り返しアクセスされるデータのI/O発生を回避できる。

MapReduce

 DVMの最も重要な特徴の1つは、大量のデータを短時間で処理できる高い処理性能である。これは、1つのリクエストを多数のタスクに分割するサーバーの並列処理機能により実現している。

並列I/O

 複数のI/Oストリームがアクセス時間の短縮に役立つ場合、対象のファイルがたとえ1つであっても複数のファイルに分割し、自動的に並列I/O処理を実行する。

パフォーマンスの最適化

 DVMは優れたSQLコンパイラを備えている。このコンパイラによってクエリを複数の述語(Predicate)に分解し、それを各データソースに最適に割り当てることができる。

APIサポート

 DVMは、z/OS Connectを介してメインフレーム上の多様なデータベースにアクセスし、DVMの仮想的なアドレス空間にデータを展開して利用可能である。また、クラウドやモバイルのアプリケーションに対しては、REST WebサービスやJSONなどによる疎結合なデータアクセス/統合を提供している。サポートするAPIは、SQL、NoSQL/JSON、RESTfulサービス、 HTTP、HTML、SOAPなどと多様で、新規のAPIも、サーバーのパフォーマンスに影響を与えることなく追加可能である。

 

高度なセキュリティ機能と
診断・トレース機能

 DVMは、高いセキュリティも備えている。システム・レベルとデータベース・レベルの両方のセキュリティをサポートしており、システム・レベルではRACF、ACF2、Top Secret、およびクライアント側も含むSSL、分散プラットフォーム上の証明書ベースの認証、データベース・レベルでは、DB2セキュリティ、IMS PSBセキュリティ、CICSトランザクション・セキュリティ、Adabasデータ暗号化およびAdabas SAFセキュリティをサポートしている。

 また、サーバー上で実行されるすべての操作を追跡する強力な診断・トレース機能もDVMの特徴である。ユーザーは、クライアントからのリクエストの内容やその経過時間、CPUタイムなどを詳細に確認することができる。

 さらにもう1つの特徴は、SMF(System Management Facility)レコードにアクセスできることである。SMFレコードには、メインフレーム上で発生するすべてのイベントが記録されている(データへのアクセス、ユーザーID、データ共有のためのFTPの使用など)。この機能を利用することにより、オペレーションに悪影響を与える脅威に対してに早期に対処が可能である。

 

zIIPで処理を実行し
ZのCPUを使用しない  

 DVMは、費用対効果に優れる。z/OS上のデータソースに直接アクセスし、データを物理的に移動させることなく利用できるからである。また、データの移動が必要な場合はメモリ内にデータ抽出して変換し、データウェアハウスやデータレイクに安全にロード可能だ。

 またDVMを使用すると、メインフレーム上のzIIP専用エンジンで最大99%のデータ変換を行え、メインフレームのCPUを使用しないため、TCOを削減できる。VSAMやIMS、SMF、Adabasといった非リレーショナルな大量のデータには、とくに威力を発揮する。

 データ仮想化は理論上の価値ではなく、企業が収益性と生産性を向上させるためのものである。企業データの70?80%はメインフレーム上に存在すると言われる。データ仮想化は今後、企業が備えるべき必須の条件になると考えられる。DVMは、その中核を担うのである。

 

[IS magazine No.21(2018年10月)掲載]

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