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IDC Japan、国内の産業用メタバース/デジタルツイン市場動向の調査結果を発表 ~「人」をXRで取り組むことがカギに

IDC Japanは2月6日、国内の産業用メタバース/デジタルツイン市場の動向の調査結果を発表した。

2021年以降、メタバースが大きな注目を集める一方、IoT(Internet of Things)やIndustry 4.0といった分野では、到達すべき実現目標としてデジタルツインを追求してきた。

デジタルツインとは、リアル(物理)空間にある情報をIoTなどで収集し、送信されたデータを元にサイバー(仮想)空間でリアル空間を再現し、さまざまなシミュレーションを行う技術を指す。リアル空間と再現された仮想空間がデジタルの双子であるという意味で、デジタルツインと呼ばれる。

最近は、デジタルツインを推進してきた一部のベンダーが、メタバースブームに乗ってデジタルツインを「産業用メタバース(Industrial Metaverse)」と言い換えるようになっている。

今回の調査結果からは、国内の産業用メタバース/デジタルツイン市場は以下のようなステップで発展し、これによってよりよい働き方、より高い生産性、CO2排出量の削減、安全安心な社会などを実現するとしている。

図表1 産業用メタバース/デジタルツイン市場の発展のステップ(Source: IDC Japan, 2/2023)

同市場の発展の重要な鍵となるのが、3D CAD、IoT、XR(eXtended Reality、AR/VR/MRの総称)を含む現実世界と仮想世界をデータでつなぐ技術と、仮想世界でこれらをモデル化するためのデジタルツイン基盤技術である。

近年、とくに重要性を増しているのが、XRによって「人」を産業用メタバース/デジタルツインに取り込むことである。

その理由として、主に以下の3つが挙げられる。

(1)人とロボットの協働の促進
多くの産業現場では今も主な働き手は人であり、少なくとも2020年代中に目指すべき姿は、完全無人化ではなく、人とロボットの協働である。人を仮想世界に取り込むことで、両者の協働の促進が可能になる。

(2)人同士のコラボレーションと働き方の改革
人は仮想空間に参加することで、対象物に関する直感的な評価や判断が可能になる。まだ実際のモノがない段階で異なる工程の担当者が仮想空間でコラボレーションすることにより、品質向上や手戻りの削減による生産性向上が期待できる。また離れた場所にいる人同士が、同じ場所にいる感覚で協働することも可能になる。

(3)人の安全性や快適性の向上
危険が多く快適でない職場には労働者は集まらない。産業用メタバース/デジタルツインを使って危険を回避し、人が快適に働けるようにすることは、人手不足解消の重要な施策になると考えられる。産業用メタバース/デジタルツインを事故防止のトレーニングに活用する動きも増加している。

同調査では、産業用メタバース/デジタルツイン技術の普及シナリオとしては、以下の図表のような市場の広がりが考えられると指摘している。

図表2 産業用メタバース/デジタルツイン技術の普及シナリオ(Source: IDC Japan, 2/2023)

初期の主要顧客は、社内に設計と生産の両部門を有する大手製造業や大手建設業者(ゼネコン)である。この時点では市場の広がりはまだ限定的となるが、その後、これら初期の顧客が、産業用メタバース/デジタルツインの構築に必要なデータを、彼ら自身の顧客へと引き継ぐ。そして引き継いだ顧客が、自社が保有する建物やそこで使用される装置などの運用に産業用メタバース/デジタルツインを活用するようになると、市場は急速に拡大する。

さらにこれらを人流、交通流、物流、サプライチェーンなど広域のデジタルツインなどと組み合わせることによって、社会全体のデジタルツイン化が可能になる。このようなデジタルツイン上で高度なAIやシミュレーション機能の活用によるロボットや設備の自律的な運用を実現することで、よりよい働き方、より高い生産性、CO2排出量の削減、安全安心な社会が実現するとIDCでは考えている。

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