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事例|ヤマサ醤油 PHPQUERYを導入しデータ活用基盤を整備、データ提供の迅速化を実現

クエリー作成の属人化など従来の問題を幅広く解決し、システム部門の負荷を軽減

 

江戸時代から372年間続く
「伝統と革新」

ヤマサ醤油の創業は1645年。江戸幕府第3代将軍・徳川家光の時代に、紀州(現・和歌山県)の商人・濱口儀兵衛が下総国(現・千葉県)銚子へ移って醤油醸造を始めたのが発端である。以来372年間、銚子を拠点に醤油一筋に業を営み、現在も本社・拠点工場を同地に置く。

経理・総務本部 情報システム管理室の菅井健一氏(室長代理)は、同社の特徴を「伝統と革新」と語る。「伝統の味と品質を営々と受け継ぎながら、新しい価値を不断に創造し提供していくことをモットーとしています」(菅井氏)

 

管理室の菅井健一氏(室長代理)

 

近年では、醤油の酸化を防止する画期的な容器の「ヤマサ 鮮度の一滴」シリーズを発売し、「鮮度」を醤油の価値として浸透させるとともに、鮮度ブームの先駆けとなった。また、この8月に味をリニューアルした「まる生ぽん酢」は、「4つの生素材を使ったぽん酢」という新しいコンセプトが好評である。

同社のこうした「革新」は、消費者と市場動向に関する精緻な分析から生まれている。

醤油市場は1994年から年々出荷量が減少し、その一方で醤油をベースとするめんつゆやタレ類の生産量は年々増加が続く。この背景には、食習慣の変化や食嗜好の多様化、バラエティに富む調味料の登場などがあり、それらが複雑に絡み合って巨大な変化が進んでいると言われる。つまり、消費者や市場動向の分析なくして、醤油も含めた食品ビジネスの進展はあり得ないのである。

 

ユーザーへのデータ提供で
5つの問題が顕在化

菅井氏は、「基幹サーバーをメインフレームからIBM iへ切り替えた2003年あたりから、社内でデータ活用・分析がさかんになりました」と振り返る。

従来は、ユーザーからデータの要求があると、その都度、システム担当者がQuery/400やSQLを用いてクエリーを作成し、データを取得してExcelやプリントなどで提供していた。Query/400で作成したクエリーの総数は約9000本。同社がいかに活発にデータを利用していたかがうかがえる。

ただし、この運用にはいくつか問題があった。クエリーの作成方法に基準がない、作成方法が属人化しノウハウが共有されない、システム部門の負荷が非常に大きい、スピーディにデータを提供できない、データの提供方法がばらばら、などである。これらは、データの利用が活発になるにつれて、徐々に顕在化してきた。とくに属人化の問題は、「醸造工程に精通したシステム部員が定年退職したことによって解決すべき問題となっていました」と、菅井氏は話す。

そこで同社は、Query/400で作成したクエリーをSQLに置き換えた(図表1)。「SQLにすることでクエリー作成の条件を見える化し、ノウハウ部分をわかる形にしておく」(菅井氏)狙いである。

 

図表1 画像をクリックすると拡大します】

 

その一方、生産性向上の観点から業務データの高度な活用を進めるなか、その方法とツールの再検討が2015年から始まった。同社では2011年に国内で2番目となる成田工場を竣工させ、生産をスタートさせていた。同工場は、食の安全を確保する最新鋭の設備と、多品種変量ロットの生産に対応する先進的なラインをもち、東京ドームの広さに匹敵する巨大物流センターを併設する一大拠点である。つまり、どのような商品企画や販売企画であろうとも機敏に対応できるインフラが整っていたのである。

データの活用方法については、従来からの問題の解決も視野に含めて、次のような方針を立てた。

「ユーザーへのデータの提供はある程度できていたので、標準となるツールを導入してユーザーが同一の手順で利用できる環境を整えれば、データ活用の促進と提供の効率化を併せて実現できると考え、計画を練りました」(菅井氏)

 

クエリーを定義すると
すぐにWebに公開できる

ツールに関しては、自社開発、パッケージ、Excelの活用などを含めて多角的に検討を重ねた。その結果、最終的に選択したのはオムニサイエンスのクエリーツール「PHPQUERY」である。菅井氏は採用の理由として、「使い勝手のよさ、低価格、オムニサイエンスの対応のよさ」の3点を挙げる。

「検討の段階では、クエリー定義をSQLで行える機能はありませんでしたが、要望したところ、ほどなく対応してもらえました。こうした対応ならば今後のサポートも期待できると考え、採用を決めました」(菅井氏)

また、経理・総務本部 情報システム管理室の吉田武夫氏(主任)は、「Query/400の抽出結果をExcelに出力するとフィールド名がアルファベット表記になってしまいますが、PHPQUERYは日本語のカラムヘディングでの出力が可能で、ぱっと見ただけで内容を理解できます。さらに、クエリーを定義するとすぐにWebアプリケーションに公開できるのは非常に大きなメリットで、その簡便性に驚きました」と、PHPQUERYの機能を高く評価する。

 

経理・総務本部 情報システム管理室の吉田武夫氏(主任)

 

「データの提供に要していた負荷を大きく軽減できるのに加えて、よく利用されるテーブルにさまざまな抽出条件をもつクエリーをあらかじめ作成しておけば、ユーザーからの依頼・問い合わせを減らせるのではないかと期待しています」
(吉田氏)

PHPQUERYは今年2月から試用を開始し、7月に採用を決定。8月から本番環境での利用をスタートさせている。現在は、ユーザーからの新しいデータ要求にPHPQUERYで対応するとともに、従来のSQLベースのクエリー資産を取捨選択・統合し、PHPQUERYへの移行を進めている最中である。

「PHPQUERYの導入と運用方法の確立によって、データ活用・分析の基盤を整備できたと考えています。今後はこれを基本にして、データの抽出・加工・分析を自ら行いたいというユーザーへの対応や、さらに高度な活用方法をシステム部門から提案していく予定です」と、菅井氏は抱負を述べる。

 

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COMPANY PROFILE

ヤマサ醤油株式会社
本社:千葉県銚子市
創業:1645年
設立:1928(昭和3)年
資本金:1億円
売上高:555億円(2016年12月)
従業員数:792名(2016年12月)
事業内容:醤油、各種調味料、医薬品類の製造・販売など
https://www.yamasa.com/

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i Magazine 2017 Winter(11月)掲載