事例|テレビ東京 30年ぶりの本社移転を機に印刷基盤の再整備とセキュリティ対策を実施

ICカード認証付きふくごうきとSpoolEyeを採用し、セキュリティを実現

ICカード認証付き複合機とSpoolEyeで
セキュリティを実現

ここ数年、業績と視聴率の好調が続くテレビ東京は、2016年11月に本社を東京・港区の神谷町から六本木へ移転した。1964年の開局以来、2度目となる移転で(1度目は1985年)、今回は関連会社の施設・社員を含めて大所帯の引っ越しとなった。移転に合わせて、地上デジタル放送とBS放送の各基幹システム(営業放送システム)の統合という大プロジェクトも進められたが、今回レポートするのは、もう1つの大きなプロジェクトであった印刷・アウトプット基盤の再整備とそれに関わるセキュリティの取り組みである。

同社では従来、部・課ごとにさまざまなメーカーのプリンタや複合機を配置していた。社員は自分のPCから基幹システム(IBM i)や業務用サーバー(Windows)へアクセスし、手近なプリンタや複合機へ出力する運用形態であった。

ただしこの運用では、誰がいつ、どのような印刷を行ったかが把握できない。セキュリティ上、問題があるという声がかねてより社内で上がっていた。

「個人情報や機密情報の漏洩が大きな社会的事件となるなかで、報道を司る会社の内部でセキュリティに甘い部分があるのは大きな問題との認識が以前からありました。今回の基盤再整備と印刷セキュリティ対策は、従来の運用が抱えていた問題の解決策として実施されました」と説明するのは、テレビ東京システムの猪又吉仁氏(運用技術部 主務)である。テレビ東京システムは、テレビ東京ホールディングスの100%子会社で、テレビ東京の主要システムの開発・運用を担当している。

 

テレビ東京システムの猪又吉仁氏(運用技術部 主務)

 

今回のプロジェクトを進めるにあたって検討の俎上にのせたのは、(1)個人認証(ICカード認証)を行う複合機をどれにするか、(2)現行のプリンタや複合機をどのように整理・統合・集約するか、(3)印刷時の個人認証の仕組みをどう構築するか、(4)PDF化機能をもつ印刷ツールを何にするか、の4点であった。PDF化機能は、スプールの内容をすべて印刷するのではなく、画面上で取捨選択し、必要なものだけを印刷できるようにするのが目的である。

(1)(2)に関しては、従来のプリンタ・複合機をICカード認証機能付きのキヤノン製複合機へ切り替えて一新し、さらにそれを部課ごとに配置するのではなく、各フロアにプリンタエリアを設置して整理・統合・集約を実現した。

(3)の個人認証の仕組みについては入念な検討を繰り返した。というのも、ExcelやWordなどのオフィスツールの印刷では、PCへのログインに使用した情報の付与で済むが、基幹システム(IBM i)へのログインは部・課・グループ単位で行っていたので、印刷物への個人認証情報の付与をどうするかが問題となったからである。

また(4)は、(3)とも関連するので慎重に検討を進めた。猪又氏は「複数のメーカーの印刷ツールを慎重に調査・検討しました」と、振り返る。

 

SpoolEyeの
ライセンス体系に着目

その結果、採用したのはエンザントレイズのIBM i用スプールツール「SpoolEye」である。ただし、検討の過程で「カスタマイズの可能性を打診」(猪又氏)し、同社から拡張の確約を得たうえでの採用だった。

SpoolEyeの従来の機能では、IBM iのスプールファイルのリストをPC上で表示し、それを選択することで印刷できたが、IBM iから命令を受けて自動で起動し印刷処理を行うような連携機能はなかった。猪又氏らが求めたのはその連携機能で、それが可能になることによって、IBM iの印刷物への個人認証情報の付与が実現できる。次のような仕組みである(図表1)。

 

【図表1 画像をクリックすると拡大します】

 

ユーザーから基幹システム(IBM i)へは従来と同じ方法でログインし、何かのデータに対し印刷指示をかける。するとスプールファイルが作成され、データ待ち行列(DTAQ)にスプール情報が出力される。次に常駐プログラムがDTAQの情報を受け取り、次いでIBM iからリモートコマンド(IBM i Access for Windowsを利用)が発行されてPC上のSpoolEyeが起動される。このときSpoolEyeにはIBM i上の当該のスプール情報が渡されているので、SpoolEyeはIBM iからスプールデータを取得して表示、印刷・保存が可能になる、という仕組みである。ここまでがSpoolEyeのカスタマイズ機能による一連の処理フローである。そして印刷の指示・処理の工程はPC上での作業となるので、印刷の際にPCへのログイン情報を付与することで個人認証が実現できる。

数あるIBM i用印刷ツールのなかでSpoolEyeに着目したのは「ライセンス体系でした」と、猪又氏は語る。SpoolEyeを利用するには、クライアントごとにSpoolEyeのモジュールをインストールする必要があるが、ライセンス体系はサーバー(区画)単位なので、クライアント数にかかわらず利用できる。

「テレビ東京のようなクライアントPCが約1000台もあるような規模のユーザーになると、クライアント単位の課金ではそれだけで費用がかさみます。ライセンス費用の安さに着目し、機能のカスタマイズが可能になったので採用を決めました」(猪又氏)

プロジェクトは、2014年8月に印刷・アウトプット基盤の検討を開始し、2015年末に複合機やSpoolEyeを選定、2016年1月から開発をスタートして7月にカットオーバーした。

利用を開始して約1年。システムは不具合を起こすことなく、順調に稼働してきた。「SpoolEyeは大容量のスプールデータでもすんなりとPDF化でき、変換スピードが速いという印象です」。これが猪又氏の利用1年目の感想である。

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COMPANY PROFILE

株式会社テレビ東京

本社:東京都港区
設立:1964年
資本金:89億1095万7000円
売上高:1124億3300万円(2017年3月)
従業員数:743名(2017年3月)
事業内容:放送事業(デジタル7チャンネル)、ライツ事業
http://www.tv-tokyo.co.jp/

株式会社テレビ東京システム
本社:東京都品川区
設立:1987年
資本金:1000万円
従業員数:24名(2017年4月)
事業内容:ソフトウェアの企画・開発・管理・その他コンサルティング、情報処理サービス、ソフトウェア・パッケージの販売など
http://www.systx.co.jp/

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i Magazine 2017 Autumn(8月)掲載