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03 印刷・アウトプット

印刷・アウトプットのニーズ

モバイルやビッグデータといった華やかな話題の陰に隠れて注目を集めることの少ないソリューションが、印刷・アウトプットである。しかし、基幹業務を運用するIBM iユーザーにとって印刷・アウトプットは、日々の業務に密着したきわめて重要なテーマである。それゆえに印刷・アウトプットに対する多様なユーザーニーズが継続して生まれ、それに対応するさまざまな製品が、サードベンダーを中心に提供されてきたという経緯がある。

印刷・プリンティングに関する現在のユーザーニーズとしては、次のようなキーワードを挙げることができる。

・ オープン化
・ 効率化
・ コスト削減
・ 付加価値のある帳票
・ 電子化/電子保管
・ e-文書法
・ 外部配信

オープン化、効率化、コスト削減

IBM i環境では帳票印刷のためのプリンタとして、伝統的に専用のラインプリンタやドットプリンタが使われてきた。これらは高速印刷が特徴で、大量の帳票印刷に向いたプリンタである。現在も、印刷会社やDM発送会社などで多く利用されている。また、専用プリンタが一般のオフィスプリンタと並んで配置されているのも、依然としてよく目にする光景である。

しかし、これらの専用プリンタは一般的なオフィスプリンタと比べて高額であり、帳票の表現力も非常にシンプルである。また、連続帳票や事前印刷の専用帳票を用意する必要があり、コストがかさむ要因となっている。

オープン化とは、この専用プリンタで行っていた印刷を、社内に多数導入されているオフィスプリンタや複合機へ切り替えようという動きである。

ユーザーが印刷・プリンティングのオープン化に乗り出すのは、専用プリンタの保守契約切れや印刷・アウトプット基盤の再構築を行うタイミングが多い。図表2の、専用プリンタ、オフィスプリンタ、複合機など多様なプリンタに対応する「統合帳票ソリューション」の各製品を利用することにより、プリンティング基盤の統合や統一化を図ることができる。「PrintPro 2.0」「PrintPro 2.0 Server」「UT/400ファミリー」「UT/400-iPDC」「WilComm」などが代表的なツールである。

また、オープン化は効率化やコスト削減のニーズと一体となって進められることが多いが、統合帳票ソリューションやスプール管理ツールの利用によって、それまで手作業で行ってきた帳票の仕分けや配送を自動化したり、複数の帳票を1つの帳票として印刷するなどの効率化が可能になる。

アイエステクノポートの「UT/400-SPA」は今年4月リリースの帳票仕分けに特化した新製品で、仕分キーやページ閾値による仕分け、複数帳票の仕分・結合、複数帳票の仕分・帳合、結合などを簡単な設定で行える機能を備える。仕分けのこうした管理・コントロールによって実現する省力化やコスト節減効果は小さくない。

付加価値のある帳票

帳票に会社ロゴなどを添付して見栄えをよくしたり、バーコードや2次元コードを利用して伝票処理を効率化したいというニーズは相変わらず多い。

図表の「統合帳票ソリューション」と「帳票設計」の製品は、帳票のビジュアル化や高度化を実現するツールである。

 

図表 画像をクリックすると拡大します】

 

このうちインフォテックの「Create! Form」は、多種多様な入力ソース(データ形式、文字コード、図形・画像など)や、レイアウト(罫線・表、マルチフォームなど)、データ表現(グラフ・チャート、バーコード・2次元コード)などに対応し、さらにPDFやExcel、Wordなどの帳票ファイルをフォームとして取り込むこともできる。

つまり、既存の帳票を活用して精細な作り込みを行い、目的に応じた帳票をすばやく作成できるということである。

また、フェアディンカムの「WilComm」では、帳票の配信方法やプリンタの機種に依存しない汎用的なオーバーレイが提供され、それを自由にカスタマイズすることにより目的の帳票をスピーディに作成できる。バーコードも1つのオブジェクトとして設定可能だ。

さらにJBアドバンスト・テクノロジーの「PrintPro 2.0」は、スキャナーを利用した台紙イメージからフォームや罫線を取り込むことができ、それを直観的な操作で作り込むことにより、高精細な帳票を設計できる。オブジェクトの位置を0.1mm単位で指定できる帳票作成機能をもつ。

 

電子化/電子保管

最近の業務では画面のプレビューで作業が完結し、帳票の印刷は不要というケースが増えている。たとえば、ファイル送信サービスを使って送られてくる発注書や見積書がそれである。

しかし印刷は不要としても、業務の証跡としての文書保管は不可欠である。この要件に対応するのが電子帳票ツールだ。また、紙の帳票を電子化して帳票保管のスペースを減らしたり、電子化によって管理の容易性や検索性を高めたいというニーズも増えている。これに対応できるのも電子帳票である。

JFEシステムズの「FileVolante(ファイルボランチ)」は、アイエステクノポートの「UT/400-iPDC」と連携してIBM iの帳票データを電子保管できるほか、オープン系の帳票システムで生成されるPDFデータにも対応している。

電子帳票機能としては、保管した帳票を直感的な操作で検索できる機能、必要な明細だけを抜き出して2次帳票を作成可能な編集機能、そして帳票の参照権限や保管データの暗号化、アカウントのロック機能といったセキュリティ機能を豊富に備えている。

 

図表 画像をクリックすると拡大します】

 

e-文書法

e-文書法とは2005年4月に施行された法律で、紙文書での保存が義務づけられていた文書の電子的な保管を認めたもの。2015年3月に大幅な改正が行われ、あらためて注目が集まっている。

2015年3月の改正では、従来、額面3万円以上の領収書や契約書としていた金額基準が廃止され、すべての領収書や契約書が対象となった。また、電子署名を不要とするなど大幅な規制緩和がなされている。

JFEシステムズの「DataDelivery」は、長期保存が必要なデータをコンパクトにアーカイブし、セキュアな活用環境を実現する「データ保存・配信ソリューション」である。

保存のデータ形式が独自なためデータの改竄を防止でき、強力な圧縮機能により、少ないディスク容量でも長期の保存が可能になる。また、高速のデータ検索機能のほか、高度なセキュリティ機能とアクセスログによる監視機能も備える。

JFEシステムズではこのほか、e-文書と税務関係データの保存をトータルにサポートする、DataDeliveryベースの「e-文書保存ソリューション」も提供している。

 

外部配信

IBM iユーザーの間では、帳票のFAX送信業務を自動化したいというニーズが多い。手動によるFAX送信は、手間や工数がかかるうえに、誤配信や不着の場合の対処が煩雑だからである。また、印刷済みの帳票をスキャンしてメール添付で送るという業務の効率化を求めるニーズも高い。

こうした場合、IBM i環境では2つの選択肢がある。1つは、帳票ツールとFAX/メール送信サービス(ツール)とを連携させて自動化するソリューション。もう1つは、FAX/メール送信機能をもつオールインワン型の帳票ツールの利用である。

前者の代表的な例は、UT/400-iPDCとコクヨの「@Tovas」との組み合わせである。@Tovasは、帳票データ(PDF、CSVなど)を配信するクラウドサービスで、セキュリティや情報トレーサビリティ、ファイル往復便、私書箱送信など、多彩なサービスも提供している。また、API連携によって@Tovasを企業の帳票プログラムや業務システムに容易に組み込めるのも、大きな特徴である。

後者の代表例は、日鉄日立システムエンジニアリングの「PaplesWeb」である。同ツールは電子帳票をコア機能として、帳票作成やFAX自動送信の機能も備える。

 

図表 画像をクリックすると拡大します】

印刷は、企業の活動そのものを如実に示すアウトプットと言えるだろう。印刷・アウトプットを効率的に運用することは、そのまま企業の効率的な活動につながる。企業システムの利用とともに始まった印刷・アウトプットは、今なお最新のテーマである。それらのソリューションをあらためて見直すべき時期に来ている。[i Magazine編集部]

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●記事で紹介したツールのベンダー

アイエステクノポート
JBアドバンスト・テクノロジー
フェアディンカム
インフォテック
リコー
ウイングアーク1st
エイチ・オー・エス
兼松エレクトロニクス
コベルコシステム

JFEシステムズ
NTTデータビジネスブレインズ
日鉄日立システムエンジニアリング
三菱電機ビジネスシステム
インフォコム
コクヨ
アイ・ディー・シー
エンザントレイズ
コベルコシステム