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WindowsCEベースの業務端末ソフトをiPadへ移植、GUIを拡張しインボイス制度に対応|堀川産業株式会社

 

堀川産業株式会社

本社:埼玉県草加市
創業:1948年
設立:1952年
資本金:6億500万円
売上高:317億558万円(2022年9月期)
従業員数:879名(2023年1月期)
事業内容:ガス・電気・石油製品などのエネルギー事業のほか、リフォーム事業・住宅設備機器の販売など多角的に展開。
・堀川産業:https://www.horikawasangyo.co.jp/
・エネクル:https://enecle.com/

今年創立72周年を迎える。昨年9月に小売部門を分社・子会社化し、株式会社エネクルを誕生させた。本事例のガス検針では、検針メーターのIoT化を進めた結果、「第一号認定LPガス販売事業者」として認定された。現在は対象の約90%が自動検針化を終え、早期に100%を目指している。2019年からサッカー浦和レッズのトップパートナーを務める。

外部委託から内製化へ
LongRangeで推進

読者が浦和レッズのファンならば、選手のユニフォームに「Enecle」のロゴがあるのをご存じかもしれない。そのロゴの会社こそ、今回紹介する堀川産業である。

堀川産業は、関東一円と福島県、長野県、奈良県などを主な事業エリアとするマルチエネルギーサプライヤーである。1948年の創業から5年目にLPガスの取り扱いを始め、1960年代に石油製品、2010年代には太陽光発電、都市ガス、電気販売などのエネルギー事業に参入してきた。

エネルギーサプライ分野は現在、小売事業はすべて自由競争である。そのため競争力の強化やサービス向上が各社にとって大きな命題となっている。

1971年のシステム/3の導入以来、IBMミッドレンジ機のユーザーである同社では、2016年に顧客のガス機器・設備の保安点検作業のフローを用紙への手書きからiPadへの入力に切り換え、システムの自動更新を実現した(従来は帰社後、CUI画面で手入力しシステム更新)。

「グラフィカルな画面に対する要望は以前からあり、ツールを使って試行したこともありました。2010年代に入ってタブレットなどの機種も揃ってきたので、まずは保安点検システムからと考え、導入に踏み切りました」と、取締役の小林浩氏(情報システム部部長)は振り返る。

小林 浩氏

取締役
情報システム部
部長

 

iPadの台数は約600台。このときはIBM iと連携するWebアプリケーションサーバーをApache・PHP・MySQLを使って自社開発した。そして小林氏は次のように話を続ける。

「ユーザビリティに優れるiPadはすぐに現場に溶け込み、使いやすいと好評でした。そこで次を検討し始めたところへ、インボイス制度の導入が平成28年度税制改正で決まりました。ならばガスメーターの検針・集金・灯油販売などで使用中の専用ハンディターミナルをiPadへ切り替え、システムをインボイス制度対応にするのと同時に、『デバイスを1台に統一』『よりグラフィカルで直感的操作感のGUIを提供』『ツールによるリアルタイムのデータ反映』の観点でユーザビリティを向上させようと考えました」

従来、専用ハンディターミナルのシステムは外部に開発・保守を委託してきた。しかし制度変更のたびに改修を外部委託するのでは、費用がかさむばかりになる。

そこで内製化に切り換えることにしたが、 「内製化にあたって、RPG技術者にも簡単に使えるモバイル開発ツールを探しました」と、小林氏は話す。

その結果選定したのが、ランサ・ジャパンのLongRangeだった。LongRangeは、RPG・COBOL・CLのスキルだけでiPhone・iPad・Android用のネイティブアプリを開発できるツールである。2018年のPower S914(IBM i 7.3)へのリプレースにあわせて導入した。

そして手始めに、先にiPad化した保安点検システムの一部をLongRangeで書き換えることにした。ガスメーターに貼付されているQRコードを読み取り、顧客管理システムから顧客情報を抽出して表示する一連のプログラムである。

QRコード機能開発担当の原田郁美氏(情報システム部主任)に協力した堀切裕二氏(情報システム部主任)は、「私たちにはRPGのスキルしかなくHTMLやObjective-Cなどの知識はありませんが、スムーズに開発を完了できました」と感想を述べる。

堀切 裕二氏

情報システム部
主任

 

RPGとLongRangeで
内製化を強化へ

ガス検針などのシステムは従来、IBM i上のRPGプログラムとWindowsCEハンディターミナル上のUIプログラム、携帯プリンターの3点セットで運用してきた。

プロジェクトは、WindowsCEベースのUIプログラムをLongRangeを使ってiPad用に書き換え、次にそのプログラムを拡張してインボイス制度に対応させる計画とした。

2022年1〜6月に「灯油配送販売」と「集金業務」用プログラムのiPadへの書き換えを完了。2022年11月から「ガス検針業務」「転出業務」用プログラムの書き換えをスタートし(1月現在、進行中)、今後は2023年3〜5月にインボイス制度対応の拡張を行い、6月から新規に導入するA6版プリンターとの連携・印刷テスト、その後、46カ所ある営業拠点ごとに順次導入していき、8月から全社で本稼働させる予定である。またRPGプログラムは2023年5月までに改修を終える計画とした。

「インボイス制度対応では、税率ごとに区分した消費税額など多くの項目の記載が必要ですが、LongRangeならばレイアウトの細かな作り込みも難なく行えます。運用開始後のメンテンスも容易だろうと感じています」と、堀切氏は話す。

運用では、パートタイムの要員に委託するガス検針業務と灯油配送販売はiPhoneで、社員にはiPadを携帯させる予定という。 「LongRangeはレスポンシブ対応なので、デバイスの画面にあわせたサイズ変更も容易で、開発者にとって便利な機能です」(堀切氏)

同社では今後、各種システムのiPad・GUI化を拡大していく考え。また「システム部員全員がLongRangeを扱えるようにする計画」(小林氏)という。

「社員の機動力やお客様へのサービス向上が強く求められている現在、システムの機敏かつ柔軟な構築・運用は今後ますます重要になります。RPGおよびLongRangeによる内製力を強化しつつ、内製化と外注化の線引きをさらに明確にしてシステム部門の生産力を上げていくつもりです」と、小林氏は抱負を述べる。

[i Magazine 2023 Winter(2023年2月)掲載]