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事例|株式会社ジャストオートリーシング ~現場目線をもって、企画・提案できる人材を育成したい

全員が基幹システムとオープン系を担当。効果的なジョブローテーションで業務を平準化

株式会社ジャストオートリーシング
本  社:神奈川県横浜市
設  立:1973年
資 本 金:3億6270万円
売 上 高:65億8400万円(2020年3月)
従業員数:131名(2020年3月)
事業内容:自動車リース業、自動車整備業、自動車販売業、損害保険代理業、自動車に関する一切の事業
https://www.justauto.co.jp/

(株)ジャストカーセールス、(有)ジャストオートサービスを加えたグループ体制を敷き、神奈川県・東京都(南西部)エリアを中心に、自動車に関するサービス全般をコンサルティングするプロ集団として事業を展開する。他社にない自社工場の完備と、「動く整備工場」と呼ばれる自慢の巡回サービスで、リースに欠かせない充実のメンテナンスサービスを提供している。

◎IT人員構成
営業企画部:8名
20代:1名
30代:2名
40代:4名
50代:1名

基幹システムからWeb系まで
ほぼ内製で開発を進める

ジャストオートリーシングは1987年にAS/400を導入し、1988~1990年にかけて、販売管理・会計管理を軸とする基幹システムを構築した。2020年1月にはそれ以来の最大規模となる改修を実施し、新しいリース契約システムが本稼働している。

グループ全体のIT部門としての役割を担うのが営業企画部である。同部はシステム課と営業企画課で構成され、現在の人員体制は合計8名。ここ数年、多少の増減はありつつも、この人員数を維持している。

このうち20代が1名、30代が2名、40代が4名、50代が1名。新卒での配属、他部署での業務経験を経ての異動、ITの開発経験があるキャリア採用などメンバーは多彩である。他部門に比べると頻度は少ないが、それでも現場経験を積むことを狙いに営業企画部から他部署への異動人事も見られる。

前述した新しいリース契約システムなどの新規開発、および日常的な改修・保守はすべて社内の人員で進める。基幹データを利用したモバイルアプリケーションの開発には、「SmartPad4i」(ミガロ.)活用。またホームページをはじめとするWebアプリケーションのほとんども内製で対応する。

「2年ほど前に開発量の急増で業務がひっ迫したため、2カ月ほど外部ベンダーから派遣の開発者を迎えて常駐してもらいました。さまざまなユーザー企業での派遣経験があり、技術スキルも高い開発者だったのですが、当社の業務やシステム内容、開発のやり方などをまず覚えてもらうのに相当の時間がかかりました。このときの経験から、やはり自社で人員を採用し、育成していったほうがよいとの判断に至り、このあとIBM i経験者をキャリア採用して人員を強化しました」と語るのは、営業企画部を統括する中野敦夫執行役員(業務部長 兼 営業企画部長)である。

 

中野 敦夫氏
執行役員
業務部長 兼 営業企画部長

キャリア採用組以外は、IBM iはもちろんIT分野の開発経験はなく、独自のカリキュラムで人材を育てている。

たとえば2019年春に入社した新人社員に対しては、配属された5月以降、まずEOLを使った独習を行い、次に先輩社員2名が指導し、さらに7月からは別の先輩社員がほぼ付きっきりで例題としてのサンプルプログラムの作成、そして実案件のプログラム作成などを指導した。

1年ほどが経過した2020年夏ごろからは、簡単なプログラムであれば自力で作成できるようになっている。その間もコミュニケーションは円滑にし、疑問があれば積極的に質問して解決するような雰囲気づくりを心掛けているという。

中野氏によれば、「開発の実戦力となるまでには、平均して約3~4年の経験が必要」との印象だ。

現場目線と業務の平準化が
人材育成の中心コンセプト

「ユーザー企業のIT部門なので、技術スキルの高さだけを追求するのではなく、使いやすいシステムの構築や業務の簡素化、仕事を円滑に進められるような仕組みを新しい技術によって企画・提案できる人材の育成を目指しています。それには、現場目線をもったサポート部門であるとの意識・対応が重要であると考えています」(中野氏)

人材育成のコンセプトでは、まずこの「現場目線」を養うこと、そして部内のジョブローテーションを活発化して業務の属人化を避け、標準化・平準化を進めることを重視している。

たとえば現場目線を養うための取り組みに、「現場出社」がある。営業企画部のスタッフは毎月1回、現場部門に出社して、そこのデスクでIT業務を行う。

狙いとしては、各部門の担当者とスムーズに会話できるようにする、現場の課題を肌感覚で実感させる、現場に対する積極性を養うことなどが挙げられる。当初は「自分のデスクで仕事をしたい」と抵抗する向きもあったが、今のところこの試みは現場目線を育てるうえで奏功しているようだ。ちなみにコロナ禍による影響で昨年来、この活動は自粛していたが、今期は再開したいとのこと。

またもう1つの標準化・平準化に関する取り組みについて、営業企画部の岸下和幸副部長は次のように語る。

「当部では全員がRPGを使って開発できますし、全員がPCやネットワークを設定できるようにスキル習得を進めています。基幹系とオープン系を分けるような配置はしていません。IT部門では通常、スキルや担当が固定化しやすいですが、当部では、『この業務はこの人にしかできない』という属人化を避けるように努力しています。特定の1人しか実施できない業務があると、退職や異動、あるいは家庭の事情、さらには災害やコロナ禍のような緊急事態で出社できない場合、その業務が滞ることになります。もちろん仕事のレベルに高低はあり、経験の少ないスタッフが何もかもマスターするのは難しいですが、できるだけ全員がすべての業務を経験できるように意識的にジョブローテーションを回しています」

岸下 和幸氏
営業企画部 副部長

効果的なジョブローテ―ションを判断する材料となるのが、Excelにまとめられた「業務分掌」である。ここには同部で発生するすべてのIT業務についてジャンル、項目、関連部署、対応内容、担当者が記載されており、定期的にスタッフ全員の実施状況を3段階でチェックしている。すなわち対応可能が「〇」、経験ありが「△」、経験なしが空欄で、スタッフ全員の業務経験レベルが一目で把握できる。

また対応可能な人数が少ない業務(特定の1人しか遂行できない、など)も、すぐに判断できるなど、きわめて視認性が高く作成されている。

同部では定期的にこの業務分掌を見直し、「対応人数が少ないので拡充が必要」「1人が長く担当しているので交代が必要」「全員対応可能とされるが、実際には対応者が固定している」「対応者不在時のリスクが高い」などを判断して、業務の担当を計画していくという。

現場目線と業務の平準化。この2つを柱に、同社のIT人材育成はさらに前進していくことになりそうだ。

 

[i Magazine 2021 Spring(2021年4月)掲載]