ブラブジャパン株式会社
<IBM i 継続のシナリオ>
2018年にPower Systemsのディスク障害が発生し、社内にIT専任要員をもたない現在の体制に不安を抱く。クラウドサービスへの移行を考え、オープン系の販売管理パッケージを検討するが、機能が足りずに導入を断念。そこにIBM iのクラウドサービスである「IBM Power Virtual Server」を提案され、サーバー運用の課題が解決できると即決した。
本社:東京都千代田区
設立:1998年
資本金:1億円
従業員数:8名
事業内容:スポーツ用品の製造・輸入・販売
https://brav.co.jp/
ノルウェーに本拠地を置き、スポーツ&アウトドア分野の有名ブランド「SWIX(スウィックス)」を展開するブラブグループの日本法人である。もともとはノルディックスキーで使用するワックスの研究開発からスタートし、国際ブランドの買収・統合を重ねながら、SWIXをはじめTOKO、 Ulvang、Lundhags、Helsportなど、アウトドアや各種スポーツ関連商品をカバーする総合ブランドに成長してきた。現在は米国と日本に子会社を擁し、30カ国以上に販売網を広げている。
ディスク障害を契機に浮上した
「このままでいいのか」という不安
ノルウェーに本拠地を置くSWIXスポーツグループは2018年にBRAVグループへ、グループ名を変更した。ブラブジャパンもそれに伴い、2021年に現在の社名に変更し、同時にノルウェー本社の100%子会社となった。萩野武久氏が代表取締役に就任したのはその年、2021年7月のことである。
萩野氏が入社したのは、約20年前に遡る2001年で、社長に就任するまで営業および管理系業務全般を担当してきた。
同社は2000年に導入して以来のIBM iユーザーであり、パッケージ製品を大幅にカスタマイズして、輸入・在庫・販売・請求管理の各業務を支える基幹システムを構築している。
システムを管理してきた社内SEが2005年に退社して以降、専任のIT担当者は不在のまま、萩野氏が時間を見つけながら管理系業務の1つとしてシステム運用を担当してきた。
当初からサーバー導入・保守、カスタマイズ開発やアプリケーション保守を担っていたベンダーがIBM iビジネスから撤退したため、少し間を置いて2013年からは、アプリケーション保守などの業務をオムニサイエンスに委託している。BIツールとして、「PHPQUERY」(オムニサイエンス)などを導入しつつ、全体的には大きな変更・改修なく、従来からの基幹システムを運用している。
「日本法人はわずかに8名の小所帯ですから、専任IT担当者を置くのは難しいというのが実情でした。ただ実際のところ、それで運用に支障をきたすことはありませんでした。運用性に優れたIBM iというプラットフォームだったからこそ、問題なく使ってこられたのだと思います」(萩野氏)
そんななか、「このままでいいのだろうか」と初めて疑問を抱くきっかけとなったのが、2018年に発生したPower Systemsのディスク障害であった。
システム停止には至らなかったものの、レスポンスが極端に劣化し、30分程度で終了するはずの締め日の処理に半日近くを要するようになった。
「安定的な運用が続いたなかでの初めてのトラブルだったので、とても苦労しました。このときは結局、Power Systemsを交換して問題を解決したのですが、サーバーやシステムに何かトラブルが生じたとき、当社の体制では迅速に対応できないことに気づき、初めて不安を覚えました」(萩野氏)
そこで同社は、オンプレミス運用でのIBM iから離脱し、クラウドサービスへの移行を検討し始めた。多忙をきわめる業務の合間をぬってネットを検索し、クラウド型のオープン系販売パッケージを2つほど探し出したのである。
クラウドサービスであれば、最小限ではあるものの日々発生している運用管理業務、たとえばテープ交換などの作業や、定期的なハードウェアの更新およびバージョンアップといった作業から解放される。このままIT専任者がいなくても、クラウドであれば安定的なサーバー運用を期待できると考えたわけだ。
しかし何人かの社員を交えてパッケージ製品のテスト運用に臨んだものの、「現行システムに比べると、すべてが足りない」との結論に至り、導入は見送らざるを得なかった。
「急速に変化するビジネス環境やユーザーニーズに対応せねばならず、ノルウェーの親会社からの要求事項も多い。正直に言って、それらに比べるとIT対応の優先順位は高いとは言えませんでした。それに加え、私を含めて当社にはITの知識をもった人間がいないので、どう解決すればいいのか、どういった製品や価格であれば妥当なのか、それさえも判断が難しかった。不安を抱えつつ、具体的にどう踏み出せばいいのかわからない状態でした」(萩野氏)
IBM iのクラウドサービスであれば
現在の問題や不安を解消できる
2020年に入るとコロナ禍が深刻化し、東京の本社オフィスの縮小と各地の在宅拠点でのテレワークが一気に進展した。
本社に設置するサーバーの運用管理が手薄となるなか、運用への不安はさらに増し、外部からコンサルタントを迎えるべきかと萩野氏が悩んでいた2021年5月末、オムニサイエンスからIBM iのクラウドサービスである「IBM Power Virtual Server」(以下、PVS)の提案があった。
「PVSであれば、アプリケーションを現状のまま継続しつつ、サーバー管理の一切から解放される」と、同社はこの提案を即決した。萩野氏の代表取締役就任をはさみ、6月初頭に正式契約、約2カ月の移行期間を経て、8月からPVSの運用を開始した。
「単純にコア当たりの利用コストやネットワークコストを5年で試算した場合、オンプレミスよりPVSのほうが割高であるのは確かです。しかしサーバー管理業務が一切なくなる、ずっと抱えてきた将来への不安から解放されるメリットは、何にも代えがたいと考えました」(萩野氏)
PVSの環境はPower System S922で0.25コア、メモリは4GB、ストレージは160GB。OSはクラウドサービスへの移行を機に、7.1から7.4へバージョンアップしている。
アプリケーションの移行やネットワークの設定などは、オムニサイエンスにすべて任せた。現在までのところ、まったく支障なく運用が進んでいる。
「オムニサイエンスという信頼できるパートナーがいなければ、クラウドサービスで問題を解決できるとわかっていても、このタイミングでPVSの利用には踏み切れなかったでしょう。さらに言えば、社内SEが不在となり、当初の導入・カスタマイズを担当したベンダーが離れたとき、オムニサイエンスに出会わなければ、すでにIBM iから離脱していただろうと思います。IBM iというプラットフォーム自体の優位性はもちろんですが、当社のように専任のIT人員を社内に確保できないユーザーにとって、信頼できるパートナーを得ることが、IBM iを継続していくうえで欠かせないと考えています」と、萩野氏は語っている。
今後の予定として挙げられるのは、ノルウェーの本社が運用する基幹システムとリアルタイムなデータ連携を進めること。そして従来のB2Bに加え、2021年8月に軽井沢に直営ショップをオープンさせてB2Cへ参入したこともあり、これらをトータルに支援するWebサービスの構築にも力を入れていく計画のようだ。
[i Magazine 2022 Summer(2022年7月)掲載]