事例|グリーンコープ生活協同組合連合会 ~内製主義は維持しつつ、効果的にアウトソースできる人員体制を目指す

ほぼ初めてのキャリア採用に踏み切り、人材の多様化に挑戦


グリーンコープ生活協同組合連合会
住所:福岡県福岡市
設立:1988年
供給高計:561億6000万円
組合員数:41万5954世帯
出資金総額:256億4000万円
(いずれも2020年3月)
https://www.greencoop.or.jp/

1988年にグリーンコープ連合として発足。現在は九州・中国地方、兵庫県・大阪府・滋賀県に展開する15の生協と約42万人の組合員から構成される。組合員自身の手により開発し、安全で環境にも配慮した商品や、産直による農畜産物をカタログや店舗で共同購入することで、大きく成長・発展してきた。2007年には生協と商品事業を担うグリーンコープ連合とで「グリーンコープ共同体」を設立。設立30周年を迎えた2018年、グリーンコープ連合の名称を現在の「グリーンコープ生活協同組合連合会」と改めた。

◎IT人員構成
情報システム本部:10名
20代:0名
30代:2名
40代:3名
50代:5名

生協の現場業務を経て
ゼロからIBM iを学ぶ

 グリーンコープは1988年、規模も歴史も異なる地域生協が集まり、生活協同組合連合会として発足した。現在は九州・中国・関西地方に展開する15の生協と約42万人の組合員から構成されている。

 情報システム本部には10名の職員が所属する。30代が2名、40代が3名、50代が5名という体制だ。一般企業と異なり、グリーンコープの職員はまず各地の生協で採用され、そこでの業務を経験したのちに、最初は出向で、のちに転籍などの形でグリーンコープに所属を変える。

 情報システム本部も例外ではなく、ほとんどの職員は生協での勤務を経てIT業務に従事している。同本部に配属された時点ではITの開発経験はなく、ゼロからの教育がスタートする。

 今までの例でいけば、配属が決まるとすぐに、当時のIBMユーザー研究会(現在は解散)が提供していたITおよびIBM iの基礎を教えるeラーニングコースを受講し、それから昔のEOLや自社で作成した教材などを使ってデータベースやRPGでのプログラミングを学ぶ。そして業務の合間を見ながら先輩職員が指導し、配属から3カ月を経ずにOJTに入る。

 同本部では2人1組でチームを組み、1週間単位でスケジュールされた運用業務を担当する。たとえばテープバックアップ、オペレーションの監視、夜間バッチ処理の実行、問い合わせへの対応、請求・入金の定例業務などがある。

 3〜4週間に1度の頻度でこれらの運用業務を担当しながらスキルを付ける一方、先輩の指導を受けて実際のRPGによるプログラミングを覚えていく。

 ITの素養のないところからスタートして、多少は個々人の得手・不得手はあるものの、3年ほど経つと、完全に仕事を任せられるようになるまで成長する。このようにして、情報システム本部では管理職を含む全員がRPGの開発スキルを備えている。

 商品系システムを中心にしたプログラムの改修依頼が年間300件ほど寄せられるが、RPGアプリケーションの改修はすべて内製で実施している。「LongRange」(ランサ・ジャパン)を導入しているので、スマートフォンで基幹データを活用するモバイルアプリケーションなどもRPGを使って自社で開発する。

 その一方、オープン系の技術を要するWebアプリケーションなどは、外部ベンダーに委託している。

新しい人材を迎えるため
キャリア採用に踏み切る

 情報システム本部長を長く務めてきた亀田親男氏は今年度に定年を迎えるが、ここ数年、人員の世代交代がうまく進まないことに焦りを覚えてきた。

 同部の人員構成は、前述したように生協での勤務経験を経て配属される状況にあるせいか、20代がおらず、年齢バランスはやや高めである。

 ここ4年の間には3名が定年退職を迎え、部門全体の人員も減少傾向にある。グリーンコープが発足した1988年に基幹システムが開発され、それから改修や追加開発を重ねつつ今に至っている。システム構築時を知るベテラン職員が退職し、開発時のコンセプトやシステム構造を知るメンバーが少なくなり、確実にブラックボックス化が進んでいる。

「RPGという言語の開発容易性によって、ITの素養をもたない職員でも一人前の開発者に育てられます。だから現在の基幹システムを維持・改修していく分については、それほど心配していません。RPGには強いと自負していますし、過去のプログラム構造を可視化するツールの導入も決定し、ブラックボックス化を解消する努力もしています。しかし基幹システムを開発してから40年近くが経過し、新しい時代に対応するための機能やサービスが次々に求められるなか、現在の人員やスキルでそれに応えていくのは難しいと感じています。計画的に若手を育成してこなかったという反省もあり、実際のところ人員不足から、『やりたいこと』『やらねばならないこと』の多くに手を付けられない状況にあります」(亀田氏)

亀田 親男氏
情報システム本部長

 ここ何年か議論を重ね、Web系を中心に基幹系も含めて、新しいシステムやサービスは全面的に外部ベンダーへ委託する、すなわち内製主義を改め、アウトソーシングの割合を高める方針に転じることも検討してきたという。

「しかしアウトソーシングへの依存が高まれば、要件伝達に要する時間やコストが増える懸念があり、さらに社内にノウハウが蓄積されず、人的財産として残らないのではないかという心配がありました。結果的にシステム部門の体制は縮小し、ITを使いこなす力も弱まると考えられます。外部に依頼するとしても、ある程度は技術の内容や構築ノウハウを理解しているメンバーが内部にいないと、対等にコミュニケーションできないという不安がありました」(亀田氏)

 内製体制は維持しつつ、効果的に外部ベンダーへ依頼するためにも、新しいスキルを備えた人員を育成したい。そうした方針の下、情報システム本部では今春、ほぼ初めてと言えるキャリア採用に踏み切り、中途採用でのIT人材を募集した。目標とする採用人数は4名。IBM iの開発経験があれば理想だが、ネットワークやWeb系などIBM iとは別のスキルを備える経験者でも歓迎したいと考えている。今までの経験から、IBM iのスキルは内部で身に付けられると実感しているからだ。

「RPGの教育カリキュラムは長年の経験のなかで確立してきましたが、日々の業務に追われて、新しい技術を学ぶことにはなかなか時間を使えません。そこでネットワークやWeb系など新しいスキルをもった職員を迎えれば、既存のメンバーがそこから学び、新しいノウハウを内部で共有・獲得していけると期待しています。そうした新しいスキルを獲得すれば、さまざまな部署に内在する課題に対して、ITを使った解決策を提案できる人材、新しいチャレンジを可能にする人材が育っていくのではないかと思います」と期待を込めて語るのは、今年2月に情報システム本部長に着任した川本賢一氏である(今年度は本部長2名体制となる)。

川本 賢一氏
情報システム本部長

 RPG技術者を育成してきた土壌に、今までとは異なるスキルを備えた人員が加わることで、新たな挑戦が可能となるに違いない。

 

[i Magazine 2021 Spring(2021年4月)掲載]

 

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