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多種類の業務データを「注文くん」で外部公開 ~4種のDBを「リンクサーバー」で統合し、実現 |株式会社松沢書店

株式会社松沢書店
本社:東京都板橋区
設立:1968年
資本金:1000万円
売上高:46億円
従業員:75名
事業内容:楽譜、音楽書籍・雑誌、輸入楽譜などの卸販売。音楽大学や専門学校への教科書卸販売、ピアノ教室向け公開講座やセミナー、コンサートの企画など。https://www.musenet.co.jp/

松沢書店は「商品流通センター」と「情報発信基地」という2つの顔をもち、楽譜・書籍などの卸業のほかに、音楽ファン向けの講座、フェア、イベントや販売店向けの販売ノウハウや情報・商品の提供など多面的な活動を展開している。「楽譜ナビ」はその2つの顔をあわせもつWebサイト。その情報量の多さ、使いやすさ、豊富な機能でアクセス数を伸ばしている。

山口氏は「注文くん」を含め同社システムの構築・運用で、多くのベンダーから技術支援を受けてきたことに感謝を表明している。

10年がかりで楽譜の
在庫管理システムを構築

松沢書店の「楽譜ナビ」は月間38万ページビュー(PV)を稼ぐ人気サイトである。もともとは楽譜・書籍の検索サイトだったが、2018年に「注文くん」をメニューに加えてからアクセス数が増え始めた。

また、楽譜ナビには楽譜を在庫している店舗を探せる「近隣店在庫」という音楽ファン向けのサービスもあり、検索場所から半径50km以内の在庫店舗を探索できる。照会できる店舗数は現在100店強。音楽ファンを実店舗へ誘導する施策もはじめている。

注文くんは、楽譜・書籍の発注・売上管理・在庫管理・棚卸しなどの機能を提供する小売店向けのSaaSサービスである。たとえば発注機能は、楽譜ナビから注文くんページにログインして、「発注」→「出庫履歴から」→「前回出庫分との差分」→「検索」へと進むと、販売後に補充されていない商品が一覧表示される。そこで注文する商品の冊数を決定して「発注」ボタンを押すと、発注が完了するという仕組みである。

また棚卸し機能は、注文くんへのログイン後に「棚卸し」をクリックして「棚番号」を選択するとカーソルが点滅するので、ハンディターミナルで商品のスキャンを開始。1つの棚のスキャンを終えて「棚卸し完了」を押すと、スキャンした商品の一覧が表示されるので、そこで商品を確認し「棚卸しを在庫に適用」をクリックすると在庫に反映されるという仕組みである。

読者は、これらの仕組みをごく一般的な注文・棚卸し機能と思うかもしれない。しかし、システム部の山口昌一部長は「注文くんを実現するのに10年かかりました」と話す。

「楽譜は商品の種類が膨大で、かつ薄くて扱いにくいので、商品1点1点の管理は無理という考えが定着していました。そのため在庫管理システムを提案しても長い間賛同が得られず、棚上げになったままでした。そうした事情は小売店でも同じだったようで、あるとき取引先の担当者に注文くんの構想を話すと、それがあったらすぐに導入したいと言われ、業務の合間に開発を進めました。リリース直後は数店舗のご利用でしたが、そのうちに小売店のほうから評判が聞こえてくるようになり、当社でも導入することになりました。現在は全国に600ある楽譜取り扱い店のうちの約100店舗でご利用いただいています」

山口 昌一氏

「注文くん」はデータに基づく
サービス提供の基盤

注文くんの仕組みは、社内のデータベースに散在するさまざまなデータを統合するSQL Serverと、その統合されたデータを活用するPHPベースの注文くんアプリケーション、それに対する小売店からのWebブラウザによるアクセス、の3つの要素で構成されている。

「注文くん」のシステム概要

 

社内のIBM iには商品マスターと在庫データ、SQL Serverには商品検索データと注文くんを利用していない店舗からの発注データ、Oracleには商品データ、MySQLには小売店のPOSレジからリアルタイムに送信されてくるPOSデータがある。

注文くんの開発では、各データベースとSQL Serverの連携をODBCで行い、データの統合はSQL Serverのリンクサーバー機能を使って実現した。1日に1回、SQL Serverから各データベースへ自動でSQLを発行し、データをインポートする仕組みである。また注文くんからSQL ServerへもSQLによってデータを取得し、アプリケーションに反映させるシステムとした。

「こうした仕組みを導入することによって、分散している各種データの自動抽出が可能になり、取引先や当社のユーザーが簡単にデータを活用できるようになりました。これにより当社が蓄積しているさまざまなデータの活用範囲が大きく広がったと感じています。また取引先に売れ筋情報などをリアルタイムにお届けできるようになり、データに基づくサービス提供の基盤が整備できたと考えています」と、山口氏は導入効果を述べる。

同社は2021年に注文くんの新機能として、「返品くん」をリリースした。AppStoreやGoogle Playからダウンロードして使用するiOS・Android用のアプリで、スマートデバイスのバーコード読み取り機能を使って商品をスキャンし、返品作業をスタートする。商品をスキャンするとPCに商品名と店舗在庫数や売れ筋ランキングなどが表示されるので、効率のよい返品作業が可能になる。

「今後のシステム化の方向は、倉庫業務の高度化といったさらなる効率性の追求と、会社の売上に直結する仕組みの導入と考えています。注文くんはサブスクリプション制を採用したことによって取引先とWin-Winの関係を築くことができ、当社の新しい収入源にもなりました。目下、当社の資産をいかに取引先や音楽ユーザーにとって価値あるものにするか、構想をめぐらせているところです」(山口氏)

 

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