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スプールファイルのPDF化を推進して働き方改革とSDGs、コロナ禍に対応 ~ペーパーレスを起点にオフィス複合機へのダイレクト印刷、請求書の電子配信へと取り組みを拡大 |サンワテクノス株式会社

サンワテクノス株式会社
本社:東京都中央区
創業:1949年
資本金:37億2700万円
売上高:連結1810億円 単体1337億円 (2023年3月期)
従業員数:連結 1094名 単体 625名 (2023年9月末)
事業内容:メカトロニクス関連電気機器および装置、プラント用電気品、電気設備機器の販売および電気設備工事、各種電子部品・電子機器、各種OA機器、FAシステム、通信・情報機器等の販売、半導体関連製造設備、産業用ロボットなどの販売
https://www.sunwa.co.jp/

働き方改革とオリンピック対応
SDGsとコロナ禍

サンワテクノスは世界中の技術をつなぐ独立系技術商社として、設立以来、着実に業績を拡大してきた。2005年に東京証券取引所市場第一部に上場。2022年にプライム市場へ移行。グローバルサプライチェーンのプロフェッショナルとして、全世界に14社、33拠点を展開。中期経営計画「SNS2024」の目標を達成し、サステナビリティを重視した「Sun-Wa Vision 2030」を現在推進している。

同社は2003年に国産メーカーのオフコンからIBM iへ移行し、販売管理を中心にした基幹システム「SAS(Sunwa Able System)」を構築した。

業務効率と商社の特性を活かしたシステムを目指し、約4000本に上るプログラムを主にRPG Ⅲで開発している。それまで各支店にオフコンを導入していた分散型の運用から、IBM iを核にした集中管理型への移行であり、それ以降、ほぼ5年ごとにリプレースを繰り返しながら現在に至っている。 

2022年度にはインフラの全面刷新を実行した。データセンターの移転、それに伴いオンプレミスで運用するPCサーバー群の仮想化、ネットワーク回線の移行・強化、基幹サーバー(IBM Power)のリプレース、そしてストレージやネットワーク機器の刷新など、インフラ環境の大幅な見直しに着手したのである。

インフラの刷新と並行して進んでいたのが、業務効率化への取り組みであった。働き方改革の実現に向けて、そして当初は2020年に予定されていた東京オリンピック開催時の「時差出勤」「在宅勤務」の一環としても、早くから帳票類のPDF化を検討していた。しかし2020年に入ってすぐにコロナ禍が深刻化し始め、在宅勤務環境の整備は喫緊の課題となっていった。

帳票類を自宅で参照できるように、そして紙への出力を可能な限り減らして環境負荷の低減に貢献できるように、基幹帳票のPDF化が待ったなしで進められることになった。

働き方改革、東京オリンピックへの対応、コロナ禍、SDGsの高まり、そして電帳法など法改正への対応など、企業を取り巻く環境の大きな変化が、PDF化への取り組みを加速させたのである。

PDF化ツールの選定を開始したのは、2020年4月のことである。かねてから付き合いのあるNDIソリューションズに相談したところ、提案されたのがIBM iのスプールファイルからPDFを生成する「UT/400-iPDC」(アイエステクノポート)であった。

製品選定の末に同製品の導入を決定したのは、以下の3点が決め手になったという。

1点目は既存のスプールレイアウトを活用できるため開発生産性が高く、開発コストを抑えられること。運用する帳票数が膨大であるため、既存資産を活用できる点が重視された。

2点目はIBM i上で運用でき、別途サーバーの導入が不要であること。

そして3点目はオプションや連携ソリューションが充実していたこと。在宅勤務や物流センターでの利用を想定してPDFを柔軟に運用するために、UT/400-iPDCが用意するファイル転送やバーコード活用などのオプションが豊富であり、将来構想として掲げるファイル送信やFAXとの連携にも柔軟に対応可能である点などが評価された。

「当社では2022年にデータセンターの移転を予定していましたが、区画型からラック型へ移行するため、仮想化などでサーバー数を削減するための取り組みを進めていました。その点で、PCサーバーを別途導入する必要のないUT/400-iPDCのメリットを評価しました。また、IBM iにPDFを作成したとしても、その後、他のサーバーとの連携をどうするかが課題でしたが、UT/400 Auto File Transferやファイル転送オプションを使うことで、手組みで開発する必要がなかった点も大きな評価点でした」と語るのは、情報システム部の和田真紀副部長である。

和田 真紀氏

UT/400-iPDCの導入が決定したのは、2020年5月である。当初は2021年4月以降の予定であったが、コロナ禍の拡大で優先度が高くなり、前倒しでの導入を決定したという。

PDF化によるペーパーレスで
年間200万枚の帳票を削減

情報システム部が推進したPDF化のステップは、2つのフェーズに分けられる。

第1フェーズはUT/400-iPDCを導入した2021年。PDF化のトライアルを開始したのは同年2月、全社展開を開始したのは6月のことである。

このときはUT/400-iPDCをはじめ、生成されたPDFファイルを外部サーバーへソケット通信する「UT/400 Auto File Transfer」、ftpで送信する「UT/400 ファイル転送オプション」、生成されたPDFファイルにバーコードを付加する「UT/400-iPDC バーコードオプション」などの周辺オプションを導入した。

また2021年2月の導入から4カ月後の6月には、スプールデータをもとに必要項目を抽出してExcelやCSVのファイルへ変換する「UT/400-SDP」(アイエステクノポート)も導入された。

同社では基幹データのExcel活用が全社的に進んでいたが、情報システム部にはExcelデータの抽出依頼が頻繁に寄せられていた。そのたびに依頼の受付・確認、基幹データからのExcelファイル作成とエンドユーザーへの送付、そしてエンドユーザー側でツールを使用してダウンロードするといった煩雑な作業が発生し、情報システム部の業務負担が増大していた。

そこでUT/400-SDPを導入し、スプールデータから自動的にExcelファイルを生成することで、上記の作業負担を解消しようと考えたのである。

この第1次フェーズでの取り組みは、基幹システムが出力していた約700帳票の洗い出しと棚卸作業からスタートした。

「全帳票を対象に、出力頻度や活用方法を調査して、利用していない帳票は除外しました。そして在宅勤務時の活用を前提に、約160種類の帳票をPDF化する作業に着手しました。スプールデータの帳票デザインをほぼそのまま活用し、必要な罫線を付加・修正するなどの作業を加えて、ほぼ半年間を費やしましたが、帳票の洗い出し、棚卸しに一番時間がかかりました」と語るのは、PDF化を担当した情報システム部 情報システム課の青柳勝也係長である。

青柳 勝也氏

社員が在宅勤務時に活用する受発注チェックリストを中心に、PDF活用の全社展開を開始したのは2021年6月のことである。

この取り組みではプリンタにはできるだけ出力せず、画面上のPDFで参照する業務スタイルに切り替えることで、全社で年間約200万枚のペーパーレス化に成功した。

この功績が認められて、2021年10月には、同社が毎年社内および関連会社の全部門を対象に実施している、中期経営計画の基本方針に沿った活動を推進する取り組みである「サンワグループアワード」で、見事に「管理部門グランプリ」を受賞した。ペーパーレス、SDGs、カーボンニュートラルへの貢献が経営陣に高く評価された結果であり、情報システム部としての受賞はこれが初めてのことであった。

リコー製オフィス複合機への
ダイレクト印刷を実現

このように帳票のPDF化とペーパーレスに成功したのが第1フェーズである。次の第2フェーズでは、大型レーザープリンタに代わるオフィス複合機を使用して基幹システムからのダイレクト印刷、そして取引先へ向けた請求書の電子配信への連携が課題となった。

まずオフィス複合機での活用から見てみよう。同社では各拠点で合計15台の大型レーザープリンタを利用して、大量の帳票を印刷していた。

しかし前述の取り組みによりペーパーレス化が進み、印刷量が削減されたことに加え、大型レーザープリンタの導入・運用コストの削減やオフィスの省スペース化といった狙いもあり、基幹帳票をオフィス複合機で出力することが検討されていた。

同社ではリコー製のオフィス複合機を利用していたが、それらがちょうど2023年5月にリース満了を迎えるため、この時期を目標に、オフィス複合機へ基幹帳票の印刷を切り替えるようにプロジェクトを進めることになった。 

しかしここで問題が発生した。UT/400-iPDCには、各メーカーのプリンタでダイレクト印刷を実行する各種オプションが用意されているが、リコー製品にだけは対応していなかったのである(ちなみにダイレクト印刷とは、生成されたPDFファイルをプリントサーバーやプリンタセッションを経由せず、IBM i からLAN/WAN経由でダイレクトにレーザープリンタや複合機などに印刷するオプションを意味する)。

リコー製のオフィス複合機へのダイレクト印刷を強く希望する同社の意向を受け、リコージャパン(同社インフラ保守ベンダー)とNDIソリューションズの両社を窓口に、リコーとアイエステクノポートが共同開発を進めた結果、「UT/400-iPDC ダイレクト印刷オプション for RCH」が誕生することになった。正式リリース前の2023年4月からリコー製オフィス複合機に向けたプロトタイプ検証を実施し、同年9月から同社24拠点に設置されたオフィス複合機の最新機種へのリプレース、およびダイレクト印刷を開始している。

この取り組みにより、外部スタッフが常駐する物流センターを除き、合計15台の大型レーザープリンタのうち9台が撤去されることになった。

「@Tovas」との連携で
取引先へ請求書を電子配信

そして導入検討の当初から将来構想として描いていた請求書の電子配信も、2022年から本格的に検討をスタートさせている。

利用するのは、コクヨが提供するFAX/ファイル送信サービスである「@Tovas」、およびスプールファイルを連携させる「UT/400-iPDC @Tovas連携オプション」である。また1ページ目と2ページ目以降のレイアウトが違う請求書を客先ごとに1つのPDFにまとめる必要があったため、複数のスプールファイルから識別情報ごとに帳票を仕分け・分類する「UT/400-SPA」(アイエステクノポート)も導入している。

最初の対象となったのは、@Tovasのファイル送信サービスを利用して、取引先に請求書を電子配信する業務である。

オフィス複合機での印刷は社内ユーザー向けであるが、@Tovasは社外の取引先が対象となるため、ユーザーテストや取引先への説明を慎重に重ね、2023年12月に請求書の電子配信を開始した。2024年1月時点で、956件の取引先へ請求書を電子配信するなど、順調に利用が拡大している。請求書の次は注文書のPDF化など、取引先に向けた取り組みは今後も継続的に進めていく予定であるという。

また2023年6月には、基幹システムからデータを抽出・編集し、オープン形式フォーマットに変換する「i-D2cx」(アイエステクノポート)も導入した。

スプールデータからExcelファイルへ変換するUT/400-SDPと並行して、Db2 for iからExcelファイルを生成し、UT/400 Auto File Transferを使用して自動的に外部サーバーへ転送する仕組みを実現する。現在は、実運用に向けての設計段階に入っている。

「これによりQueryで作成したデータをそのままエンドユーザーに渡せる環境が整い、オンデマンドで基幹データの活用が進むなど、業務のスピードアップに貢献できます」と語るのは、情報システム部 情報システム課の三浦遼悟氏である。

三浦 遼悟氏

情報システム部では2015年のフィリピンを皮切りに、現在海外10社への展開を進め、最終的には全世界14社へ統合システムを展開するグローバルIT構想の推進や、基幹システムとWMSの連携、貿易業務のシステム化など、課題が山積している。

PDF化により働き方改革やSDGsへの貢献を果たした先には、さらなるテーマが待ち受けているようだ。

 

図表 PDF活用の全体像

[i Magazine 2024 Spring(2024年4月)掲載]