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Data Integrityに向けたラインナップの充実を目指し積極的なM&Aを展開 ~シンクソート・ジャパン株式会社 北川 晋氏

北川 晋氏
シンクソート・ジャパン株式会社
日本支社代表

 

米国のIBM i市場では現在、アグレッシブなM&Aの下、ソフトウェアの再編が続いている。そのキープレイヤーの1社が米Precisely(旧Syncsort)社である。「Assure MIMIX」や「Assure QuickEDD」など、実績の高い多数のIBM iソリューションを提供する同社の戦略を、日本市場の責任者である北川晋氏に聞く。

SyncsortからPreciselyへ
積極的なM&A戦略を展開

i Magazine(以下、i Mag) 米Precisely(旧Syncsort)社は強力なM&A戦略を展開し、グローバルなソフトウェア市場を再編するキープレイヤーの1社となっています。まずはその戦略の概要を教えてください。

北川 Syncsort社は、もともとはメインフレーム上で稼働するETLツール「Syncsort」を提供してきました。メインフレームをお使いのお客様であれば、おそらくSyncsortの名前をご存じではないかと思います。また、そのテクノロジーをオープンプラットフォームに転用したETL製品、「DMExpress」は、国内ではアシストから販売されており、今なおETL市場では高い実績を誇っています。

これらの2製品を核にビジネスを展開してきましたが、2016年に米国の投資会社であるClearlake Capital Groupから出資を受けて以降は、積極的なM&A戦略に転じました。2017年にはやはり米国の投資会社であるCenter Bridgeからも出資を受け、Trilliumを皮切りに、Vision Solution、Metron、Trader’s、Townsend、EView、SQ Data、そして2019年8月に米国の老舗企業であるピッツニーボウズのソフトウェア部門と、3年間で8社のソフトウェア会社を買収してきました。

2020年には社名をSyncsortからPreciselyに変更し、ブランドイメージの刷新に取り組んでいます。日本法人も、2021年夏を目標に会社名の変更を計画しています。

i Mag 確かに2016年の前と後では、企業イメージがまったく異なる印象を受けますね。一連のM&Aはどのようなコンセプトで実施されたのですか。

北川 お話ししたようにSyncsortは1990年後半からETLツールを提供し始めたのですが、これはいわゆるデータを「器」に集める手段です。しかしETLは長い歴史のある成熟市場であり、すでに多様なベンダーが参入しています。ここだけに立脚していては、ソフトウェア会社としての発展は期待できないでしょう。では、将来的な企業ビジョンをどう描くのか。それは「器」に集めてきた「中身」に着目することでした。つまりサイロ化された多様なデータベースから集めたデータを統合し、理解し、正確で一貫性のある完全なデータとして保証することです。

Preciselyでは現在、「Data Integrity」(データ完全性)の世界的リーダーになるという目標を掲げています。データが爆発的に増加する時代にあっては、データを意思決定の拠り所として的確に役立てるべく、多種多様なソースからデータを集め、統合し、正確性と一貫性を備えたデータとして整備する。これが、Preciselyの目指すData Integrityです。

i Mag 一連のM&Aは、Data Integrityソリューションを確立するための戦略なのですね。

北川 そのとおりです。当社ではData Integrity ソリューションを「Integrate」「Verify」「Locate」「Enrich」という4つのカテゴリに分類し、合計15の製品ブランドをラインナップしています。

まず「Integrate」は多様なソースからデータを収集し統合することで、いわゆるデータ統合やHA(高可用性)などを意味します。IBM iユーザーの皆さまにはお馴染みのAssure MIMIXやAssure QuickEDD、Connectなどのソリューションはここにラインナップされています。

一方、「Verify」は自社のデータを理解し、正確で一貫性のあるデータとして保証すること、いわゆるデータクレンジングなどを意味し、Spectrum Quality、Trilliumなどをラインナップしています。

また「Locate」はロケーションデータを分析して優れた分析結果を得ることで、空間分析やジオコーディング、可視化などを目的としたSpectrum Spatial、Spectrum Geocoding、MapInfoなどがあります。

そして「Enrich」は最新のビジネスデータやロケーションデータ、業界の独自データを提供することで意思決定への貢献を目指します。これにはStreets、Boundaries、Points of Interestなどがあります。社内のデータソースと外部から調達するデータを同一環境で整備し、発展させることが狙いです。

i Mag このなかから主力製品を挙げるとすると、何になりますか。

北川 売上に貢献しているという意味では、Connect、Assure、Trillium、Spectrum Qualityの4本柱ですね。国内ではまだ外部からデータを調達するニーズが少ないので、「Enrich」はこれからの領域になります。データクレンジングを実行するTrilliumなどは、国内金融機関で多くお使いいただいています。

IBM iのデータを広く活用して
「データ完全性」を目指す

i Mag  IBM i市場に参入したのは、Vision Solutionの買収がきっかけですか。

北川 そうです。サイロ化したさまざまなソースからデータを収集する際、オープン系だけでなく、メインフレームやIBM i、UNIX/AIXなどマルチプラットフォーム環境に対応できる点は当社の強みであり、他社にない大きな優位性です。そこで「Connect CDC」(当時のMIMIX SHARE)を有するVision Solutionに着目しました。Connect CDCは、IBM iをはじめLinux、Windows、AIXなどさまざまなプラットフォーム上の異なるDB間でデータの同期・交換・強化を実行するソリューションなので、当社の描くコンセプトに欠かせない存在でした。

つまり言ってみれば、Connect CDCを狙いにVision Solutionの買収へと踏み切ったのですが、いざIBM iビジネスに参入してみると、強固なカスタマーベースに支えられたとても魅力的な市場であることを発見しました。急激な成長が見込める市場ではありませんが、今も企業の中核を支える業務アプリケーションが多数稼動しています。Assure MIMIXやAssure QuickEDDなどのHAソリューションへのニーズは高く、当社の売上に大きく貢献しており、あらためてプラットフォームとしてのIBM iの優位性を実感しています。

i Mag 国内のIBM i戦略はどのようにお考えですか。

北川 海外と日本のIBM i市場では、ユーザーの傾向に少し違いが見られます。海外では欧米・アジアともに、金融機関をはじめとする大手ユーザーが多く、ビジネスの中核部分で多くのIBM iが稼働しています。これに対して国内では、もちろん大手ユーザーもお使いですが、中堅中小のお客様が多く導入されています。そこで国内ではイグアス、三和コムテック、ビーティスの各社様とパートナーシップを組み、中堅中小のユーザーの方々をきめ細かくサポートするように努力しています。

以前のIBM iは、IBM iだけで運用が完結するケースがよく見られました。しかし現在はIBM iと他のプラットフォームを連携し、融合させながらIT環境全体をデザインする必要性が生じています。まさにマルチプラットフォーム環境から集めたデータの「中身」を理解して、効果的に役立てていくことが求められています。当社のソリューションラインナップは、そうしたデータ完全性を実現する意味で、必ずIBM iユーザーのお役に立てると確信しています。

 

北川 晋氏
1995年、富士ゼロックスに営業職として入社。その後、2003年に当時の日本CAに営業職として入社後、シマンテック、日本マイクロソフト、セールスフォース・ドットコムにて営業部門の責任者を歴任。2017年に米Syncsort(現Precisely)社の日本法人、シンクソート・ジャパン(株)の代表に就任し、現在に至る。

 

[i Magazine 2021 Spring(2021年4月)掲載]

 

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