MENU

野村総合研究所が「生成AIのビジネス利用の実態と意向」に関するアンケート調査結果を発表 ~テキスト出力に関する利用が中心、「プログラムの作成」で現在利用している人は23.8%

野村総合研究所(NRI)では、2023年5月に日本のビジネスパーソン約2400名を対象としてインターネットアンケートを実施し、生成AIの「ビジネス利用の現状と今後」について調査した。その結果を6月13日に発表している。以下に要約を記載する。

一般ビジネスパーソンにおける「生成AI」の認知率は50%を超え、男性で高い傾向

生成AIという言葉は、ビジネスパーソンの50.5%と約半数に認知されている。

生成AIの認知率

認知率を性・年代別でみると、全体的に男性による認知率が高いが、男性の年代別認知率に大きな差は見られない。

生成AIの認知率(性・年代別)

女性は、20代から50代にかけて、年齢が高いほど認知率が減少する傾向にある。女性の60代では認知率が47.3%と、20代の49.6%に次いで高い結果となった。

 

AIにはプラスとマイナスのイメージがある

一般的なAIに対するイメージを調査した結果からは、「業務効率・生産性を高める」(46.2%)というイメージが高い一方で、「仕事を奪う」イメージも22.1%ある。

AI(人工知能)のイメージ

「新しい仕事が創出される(21.4%)」「よりよい社会をつくる(15.7%)」というポジティブな面と、「なんとなく怖い(18.9%)」や「不安である(14.4%)」というネガティブなイメージを持っている人もおり、日本のビジネスパーソンにとって、AIは必ずしもプラスのイメージだけではないようだ。

今後、生成AIが浸透することで、具体的に業務でAIを使うようになると、AIがより身近になってイメージが変わる可能性もある。漠然と「AIで仕事がなくなる」と恐れるのではなく、AIの利用が有効な場合はそれを活用し、人間がやるべき仕事を見極めていくことが重要であると同社は指摘している。

生成AIのビジネス利用は、「実際に活用中」が3.0%、「トライアル中」が6.7%

自身の職場における業務の中で、生成AIの導入状況をみると、「実際に業務で利用している」割合が3.0%、「トライアル中」が6.7%、「使用を検討中」が9.5%となっている。

生成AIの職場における導入・検討状況(勤務先の業種別)

実際に利用している割合を勤務先の業種別でみると、製造業、金融・保険、その他サービス業などで高くなる。製造業では、開発などの業務にて、ドキュメント作成やプログラムコード作成などで導入が進んでいると考えられる。金融・保険などのサービス業では、コンタクトセンターでの自動応答での利用や、営業支援などで活用している例が考えられる。

「実際に業務で利用している」割合と「トライアル中」の割合の合計は9.7%になり、この割合までは、今後、比較的早い段階での生成AIの導入が想定される。業種別では、IT・通信、教育・学習支援などの業種で高く、これらの業種では、現在は導入されていなくても、今後、急速に生成AIが導入されていくと考えられる。

また、「使用を検討中」まで含めると、ビジネスパーソンの約2割の職場で、将来的に生成AIを導入することが見込まれる。現在の導入率は低いものの、今後の導入が拡大しそうな業種としては、建築・土木、運輸・物流、公共などの業種がある。現在では、テキストを中心としたコンテンツの生成が中心だが、デザインや地図など画像の生成が進むことで、建築・土木、運輸・物流という業界でも利用が拡大することが考えられる。

現状では「挨拶文や記事の作成」が利用の中心、今後は、「ドキュメントの要約」「マニュアル・議事録」が拡大。「プログラム作成・広告制作」も期待

具体的に生成AIを利用している業務内容と、今後利用できると考えている業務内容を整理した結果、前者は「挨拶文などの原稿作成(49.3%)」「記事やシナリオ作成(43.8%)」など、テキストのアウトプットでの利用が多い。

生成AIの利用用途と今後の活用可能性

現状では、創造性のあるコンテンツを生成するというよりは、定型的でパターン化された出力結果を業務に活用している人が多くなっている。今後の利用については、同じようにテキストを生成する機能の中でも、現在利用されている使い方にプラスして、「マニュアル作成」や「議事録の作成」など、より高度な編集能力を要する使い方を想定している。

テキスト以外での活用分野では、「プログラムの作成」で現在利用している人が23.8%、「挿絵やイラストの作成」が15.1%、「動画の作成」が9.6%となっており、相対的には少ないながらもテキスト以外のコンテツ生成に活用している事例も見られる。

これらの利用内容については、現在利用している割合と、今後の活用可能性を感じている人の割合の差は小さいことが特徴的である。言い換えると、実際にプログラムや画像などの生成ニーズがある職場では、現在でも、ある程度は生成AIを活用していると言える。

これからの生成AIに求められるもの

生成AIが注目されるようになった背景には、①アウトプットの精度の向上、②生成スピードの速さ、③生成関連アプリの使いやすさの向上、などが挙げられる。その結果、ビジネスパーソンや企業での利用が進んだ。現時点では、生成AIの基礎技術、基礎モデルの精度が向上したことで一挙に利用が拡大しつつある。

今後は、基礎モデルを活用したアプリケーションやサービスの拡充が加速することが予想され、利用者の裾野の拡大や、コンテンツ種類の拡大が考えられる。特に、テキストなど1種類の出力ではなく、テキスト、画像、データなど複数の種類をAIが同時に処理する「マルチモーダル」が進むことで、より人間の感性に近いモデルができ、生成AIのビジネス活用が拡大すると考えられる。一方で、偽情報の拡散、生成されるものに対する著作権なの問題も指摘されており、利用者の不安を払拭するためにも、法制度の整備やルールづくりを行い健全な発展を図ることが求められる。

 

図表の出典:NRI「AIの導入に関するアンケート調査」(2023年5月)

 

[i Magazine・IS magazine]

新着