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Powerハイパーコンバージドの世界が大きく拡大 ~Nutanix AHVがAIXをサポート、PowerVM・PowerVCでもHCIを実現

日本IBMは今年5月に、Nutanix AHV搭載のIBMハイパーコンバージド製品上でAIXが稼働することを発表した。また昨年12月にはPowerVM上でHCIを実現するソリューションをリリースしている。HCIに対するIBMの取り組みが活発化している。

 

 日本IBMが今年5月に発表した内容は、Nutanixの仮想化ソフトウェア「Nutanix AHV(Acropolis Hypervisor)」上でAIX 7.2 TL2以降のAIXが稼働するというもの。さらに、Nutanix AHVを搭載したIBMのハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(以下、HCI)、IBM CS821(以下、CS821)とIBM CS822(以下、CS822)上で、AIX 7.2 TL2の稼働が確認された、というものである。

 CS821とCS822は、2017年5月に発表されたHCI。POWER8のLinux専用モデルであるPower S821LCおよびPower S822LCにNutanix AHVを搭載し、それぞれ3台のマシンで構成されるシステムである。

 CS821は10コアのPOWER8(2.09GHz)を2個、メモリは128GBまたは256GB、ディスク(SSD)を480GB、960GB、1.92
TBの3種類から選択可能。CS822は11コアのPOWER8(2.89GHz)を2個、メモリは256GBまたは512GB、ディスクは、480GB、960GB、1.92TB、3.84TBのSSDから選択可能である。OSとしては、LinuxまたはAIXが稼働する(図表1)

 このCS821とCS822の後継となるPOWER9ベースのHCIは、2018年8月現在、まだ発表になっていない。早期の登場を期待したいところだ。

 

IBM iをNutanix AHVへ
移植すべき、と米メディア

 ところで、米オンラインメディアの『The Four Hundred』は2018年5月14日付けの記事(Getting Hyper and Converged with IBM i)において、「IBMがAIXに対して行ったことは何でもIBM iに対して実施可能」としたうえで、次のようにコメントしている。→『The Four Hundred』原文記事へ

「IBM i、AIX、Linuxのワークロードが単一のクラスタ上で稼働するハイパーコンバージド・プラットフォームは、IBM iユーザーに強くアピールするだろう。IBMは、IBM iのNutanix AHVへの移植を真剣に考えるべきだ」

 調査会社IDCは、国内HCI市場の2016年?2021年の年間平均成長率(CAGR)を31.3%と推定し、毎年2ケタの高成長が続くと予測している。IBM iユーザーの間でも最近、HCIのメリットを高く評価し、分散するWindowsサーバーをx86系HCIシステムで統合し、管理の容易性やシステム利用の柔軟性を求める動きが出始めている。そうした状況のなかでIBM iが稼働するHCIが登場すれば、『The Four Hundred』が指摘するように、大きな動きとなるだろう。

 

Nutanix AHVを使わず
PowerVMでHCI

 一方、Nutanix AHVを使わずにPowerVMでHCIを実現するソリューションが、2017年10月にIBMから発表されている。

「PowerVC Manager for Software Defined Infrastructure 1.4」(以下、Power VC for SDI)がそれで、ストレージ管理ソフトの「Spectrum Scale Data Management Edition 5.0」(以下、Spectrum Scale)を合わせて使うことにより、PowerVMが稼働する3台以上のPOWER9サーバーをHCIシステムとして利用できる(図表2)。

 

 PowerVCは、OpenStackベースの基盤構築・管理ソフトウェア。PowerVMで仮想化されたマシンの起動やイメージの管理、仮想ネットワークの提供、認証機能などの機能をもつ。

 PowerVC for SDIは、このPowerVCの機能を単一のPower Systemsから複数のPower Systemsで構成されるソフトウェア定義基盤(SDI)へと拡張するもので、各マシン上に配置された仮想化管理インターフェース「PowerVM Novalink」と通信しながら、SDI全体のリソースの管理・コントロールを行う。

 さらに、Spectrum Scaleとの連携によって各マシン内蔵のストレージを仮想化し、SDI環境にある複数マシン間でスケールアウトさせることが可能になる。ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)を使うことなくSDS(ソフトウェア定義ストレージ)環境を実現できるソリューションである。

 ライセンス料金はソケット単位で、1ソケットあたり25万6000円(1年間)、年間保守料は6万4000円。

 

IBM iの稼働は
テック・プレビュー中

 PowerVC for SDIによるHCI環境上でPowerVMのゲストOSとして利用できるのは、「目下のところ、AIXとLinuxだけ」と、日本IBMの久野氏は話す。そしてIBM iの稼働については、「テック・プレビュー中」と言う。

 HCIは、「オンプレミスのクラウド環境」とも言われる。AIX、Linuxに加えてIBM iがHCI対応となれば、IBM iのクラウド的な利用が大きく前進するものと思われる。今後の展開が注目される。

[i Magazine 2018 Autumn(2018年8月)掲載