日本IBMが7月9日に発表したPower11の技術的特徴は、別記事「Power11発表 ③」でレポートしたとおりだが、本記事ではIBM Redbooks「IBM Power E1180:Introduction and Overview」の内容を基に、Power11の特徴を補足してみよう。
サーバー・ラインナップを簡素化
まずIBMは、Power11ファミリーの「注目すべき変化の1つ」として、「スケールアウトサーバーのラインアップを整理したこと」を挙げている。具体的には、Power9・Power10世代にあったS914、S1014のラインを消滅させたことで、「スケールアウトモデルの数を削減し、顧客の選択肢を簡素化し、導入とサポートの複雑さを軽減した」と述べている。
IBMでは2026年に「エッジモデル」として「S1112」のリリースを予定しているが、具体的にどのようなスペックになるのかは不明だ。
今回発表になったPower11ファミリーは、次の3つのモデル。
◎エントリー・モデル
Power S1122とPower S1124で、部門およびエッジワークロード向けに最適化。(Linux版の Power L1122、およびPower L1124を含む)
◎ミッドレンジ・モデル
Power E1150 は、企業統合およびスケーラブルな仮想化に理想的。
◎ハイエンド・モデル
Power E1180 は、大規模でミッションクリティカルかつ AI 集約型のワークロード向けに設計。
3つの基本原則とPower11における進化
IBMでは、Power11プラットフォームは次の3つの基本原則に基づいて構築されている、という。
信頼性(Trusted)
Power E1180において最大99.9999%(6 ナイン)の可用性を提供し、メンテナンスに伴う計画停止ゼロ、量子安全な暗号化、システム復旧の高速化を実現することで、継続的なビジネス運用を可能にする。
自律性(Autonomous
インテリジェントな自動化や、動的パフォーマンス・チューニング、手作業の削減を通じて運用効率を高める。
モダン(Modern)
オンチップおよびオフチップの2種類のAIアクセラレーションと、Red Hat OpenShiftやIBM watsonxなどとのシームレスな統合により、ハイブリッド環境(オンプレミス、クラウド)全体でAIを組み込んだアプリケーション展開を可能にする(Power11のAI機能については別記事参照)。
そしてPower11ファミリー全体で、以下の進化を達成したとする。:
・ハイエンドシステムで最大6ナイン(99.9999%)の可用性を実現
・量子安全な暗号化とセキュアブートの強化によるセキュリティ向上
・ハードウェアとソフトウェアの最適化を組み合わせ、コアあたり最大15%、スレッドあたり最大25%の性能向上
・ミッドレンジおよびエントリーレベルシステムにおけるスループットの大幅な向上
・DDR5と先進的なメモリコントローラの活用により、メモリ帯域幅を最大50%増加
エネルギー消費削減
Power11ファミリーのこのほかの特徴として、エネルギー消費の削減をIBMでは挙げている。
「Powerプロセッサ・ベースのサーバーは、各世代でワットあたりのエネルギー効率を一貫して向上させており、Power11もこの流れを継続している。Power11は効率性を高め、エネルギー使用量、二酸化炭素排出量、データセンターのエネルギーフットプリントを削減している」
下図は、Power9サーバーをPower11サーバーへ移行すると、同じパフォーマンスで最大60%のエネルギー消費を削減できることを示している。「Power11はx86システムを上回り、ワットあたりの性能で2倍を実現する。Power10と比較すると、Power11はワットあたり最大33%の性能向上が可能であり、S1122が最大の改善を示している」という。
・IBM Redbooks「IBM Power E1180:Introduction and Overview」
[i Magazine・IS magazine]