日本IBMの釘井睦和氏(テクノロジー事業本部 Powerテクニカル・セールス部長)がPower11の技術的な特徴を解説した。

まず釘井氏は、Power11の技術的な先進性は次の5点にあると説明した。
消費電力を最適化
SLAを損なうことなく、消費電力を最適化するエネルギー効率の高い新しい動作モードを搭載。相反する関係であるクロックと消費電力について、ユーザーの業務に影響を与えることなく最適化するアルゴリズムを搭載した。
熱効率を向上
新しい2.5統合スタック・コンデンサと革新的な熱技術により、消費電力を最適化。これはパッケージテクノロジーの改善によりもたらさられた。インターポーザーと呼ばれる中間基盤にコンデンサを搭載した点が新しく、これにより高クロック、すなわち高パフォーマンスで動作している(=高い電圧がかかっている)ときのノイズを除去し、熱効率を高めることに成功している。
ノイジーネイバー問題を解消
Resource Groupにより、ワークロードの分離をより厳密に実行して、パフォーマンスの向上に寄与する。数多くのVMが稼働している場合、ある区画がビジーになり他の区画が影響を受ける現象がPowerプロセッサでは極小化されているが、Power11ではこれが限りなくゼロになっている。いわゆるノイジーネイバー(リソースを占有して他のワークロードのパフォーマンスを阻害するワークロー)問題が解決されている。
メモリ帯域幅の向上
3倍のDDR帯域幅を備えた次世代メモリにより、メモリを大量に消費する大規模なアプリケーションやインメモリ・データベースの優れたパフォーマンスを提供する。
AIアクセラレータを搭載
IBM Spyre(スパイア)をベースとした新しいオフチップAIアクセラレーションをPower11に搭載する。IBM Spyreアクセラレータは、IBM Z用のマイクロプロセッサ「IBM Telum」向けに開発されたAIアクセラレータで、Powerに搭載されれば、AIコンピューティング機能を大きく向上させる。専用のI/Oドロワーに8枚のカードを実装する。これにより、生成AIのユースケースに対応した設計となる。実装予定は2025年第4四半期(10~12月)。
今回発表されたのは、以下の6モデル。出荷開始はいずれも7月25日である。
◎スケールアウトモデル
IBM Power S1122/L1122(2ソケット・サーバー)
IBM Power S1124 / L1124(2ソケット・サーバー)
◎エンタープライズモデル
IBM Power E1150(4ソケット・サーバー)
IBM Power E1180(4ソケット・サーバー)
◎クラウドモデル
Power Virtual Serverでは、Power11と同時に提供開始予定。当初は米国と欧州で提供開始。東京・大阪リージョンでは、その後に順次開始する。
またエッジモデルであるS1112は、2026年のリリース予定となる。
Power搭載サーバーの歴史のなかで、スケールアウトモデルとエンタープライズモデルの同時発表は今回が初めてとなる。
いずれのモデルでも、Power11の性能向上により、コア・パフォーマンスは最大15~25%向上。新しい30コアPower11デュアルチップ・モジュール(DCM)により、システムパフォーマンスは30~45%向上。メモリ技術の改良により、データ速度は最大50%向上している。
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