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IBM Power Virtual Server最新情報 ❶ 注目の機能拡張 ~Transit GatewayによるVPC環境との接続、ストレージ機能によるレプリケーション、FalconStor VTLサービスの利用

Text=澤田 英寿、樋口 裕美 日本IBM

IBM Power のパブリック・クラウドサービスである IBM Power Virtual Server (以下、PowerVS)が2020年10月31日より東京リージョンでサービス提供を開始してから、約3年が経過した。2023年8月時点で世界7カ国、18のデータセンターにて利用が可能であり、日本は東京と大阪でサービス提供されている(図表1)。

図表1 PowerVSが利用可能なデータセンター



サービスについても、さまざまな機能拡張がされている。2022~2023年の主要な拡張機能は、以下のとおりである。

・AIX7.3、IBM i 7.5、RHEL 8.6、SLES 15SP4サポート
・Transit Gateway によるVPC環境との接続で構成が容易に
・ストレージ機能によるレプリケーションへの対応(2023年8月時点では米国のデータセンターのみ対応)
・FalconStor社のVTLサービスへの対応
・Shared Processor Pool 構成への対応
・Hyper Protect Crypto Services (HPCS) への対応 (AIX、Linux)
・データセンターの追加
・イベントログの提供

この中から興味深い機能拡張について、いくつか解説してみよう。

Transit GatewayによるVPC環境との接続で
構成が容易に 

PowerVSはIBM Cloudに隣接するコロケーション・スペースに設置されているため、今まで両者を接続する場合はCloud Connectionを作成していた。

たとえば、ある拠点と別拠点のPowerVS間をネットワーク接続する場合には、それぞれのPowerVSでCloud Connectionを作成し、IBM Cloudのグローバルネットワーク経由でアクセスする必要があった。

しかし2022年7月に、Transit Gatewayを使用してIBM Cloud Classic およびVPC環境と接続可能になったことで、ネットワーク構成が非常にシンプルになった(図表2)。

図表2 PowerVS間の接続方法の違い

詳細については、「異なるDCのPower Systems Virtual Server同士をTransit Gateway経由で接続する」を参照。

ストレージ機能によるレプリケーションへの対応 

ストレージ機能によるデータセンター間でのグローバル複製サービスは、2023年8月時点では米国のデータセンターでのみ対応しているが、今後は日本のデータセンターでも実装予定となっている。これを利用することで、拠点間のPowerVSでデータ・コピーが容易になる(図表3)。

図表3 ストレージ機能によるデータ・レプリケーション

FalconStor社のVTLサービスへの対応 

IBM iのユーザーは多くの場合、LTOテープ装置(もしくはDell DataDomainのような仮想テープ装置)を利用している。こうしたユーザーのオンプレミスシステムをPowerVSに移行する場合、現状と同じテープ保管操作を実行できないことが課題となっていた。

今までPowerVS環境でのIBM iのデータ保管は、Cloud Storage Solution for i (5733-ICC)とIBM Cloud Object Storage(ICOS)との組み合わせによるデータ保管が主流であった。

この方式では、まず自区画のディスク内へのバックアップが必要になることで、ディスク容量の増大、保管速度や運用面での課題があり、日常的に大量のデータ保管を必要とするユーザーには適していなかった(一応目安として、この方式でのバックアップは2TB以下向けとしている)。

しかしFalconStor VTLという新しい仮想テープ装置がPowerVSで利用可能になったことで、その課題が解決された。FalconStor VTLとは、PowerVS上のAIX、Linux、IBM i上で利用できる仮想テープ・ライブラリー装置で、下記のようなメリットがある。

① バックアップとリカバリーのプロセスを自動化し、ユーザーフレンドリーな操作を実現する。

② 小規模の構成(1テラバイト)から、ペタバイトまでのスケールアップが可能である。

③ IBM iの場合は、通常使っているSAVLIBやSAVOBJコマンド、BRMSでの操作が可能で、オンプレ環境と同様に運用できる。

④ VTLサーバーは複数のIBM i/AIX/Linux区画から共用できる。

⑤ 図表1にあるように、オンプレミス環境やクラウド環境を含め、VTLコンソールから一元管理できる。

⑥ オンプレミス環境・クラウド環境のVTLのデータ・レプリケーションが可能である。また東京・大阪のPowerVS上のVTLでもレプリケーションできる。

⑦ 重複排除、圧縮機能、また重複排除ストレージのICOS化により、大容量バックアップが必要な場合のストレージ容量を抑え、安価に運用できる(図表4)。


図表4 FalconStor VTLによるPowerVSのバックアップ

 

著者
澤田 英寿氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
Power 第二テクニカルセールス
Power Technical Specialist

IBM Power、とくにIBM iのお客様を中心に、システムの設計および構築を幅広く経験。現在は、主にIBM iユーザー向けに、テクニカルセールスとして、営業活動支援やOS関連の最新情報発信などを行っている。

著者
樋口 裕美氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
Power 第一テクニカルセールス
Power Technical Specialist

IBM Power、とくにAIXのお客様、保険・金融のお客様を中心に、ユーザー要件のヒアリングからシステムのアーキテクチャ設計、構築、テスト等上流から下流まで幅広く経験。現在はテクニカルセールスとして、営業活動支援、最新情報発信などを行っている。

*本記事は筆者個人の見解であり、IBMおよびキンドリルジャパン、キンドリルジャパン ・テクノロジーサービスの立場、戦略、意見を代表するものではありません。


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