MENU

連載 攻めの要員対策 ~第1回 人材不足に悩むIBM iユーザーと歩みをともにするベンダーの戦略

要員不足に悩むIBM iユーザーに向けた
ベンダーの提案とは

IBM iユーザーの要員不足が深刻である。

歴史が長く、かつプログラムの資産継承性が高いIBM iでは、アプリケーションに改修の手を加えながら、長年にわたり運用を続けているケースが多い。そのため改修の過程がドキュメント類に正確に反映されておらず、技術力や知識が属人化しやすい傾向にある。

経験のある要員は定年退職などで会社を去り、若手人材はうまく獲得できていない。そのため次世代へのスキル継承も進んでいない。

プログラムの資産継承性はIBM iを特徴づける優位性の1つであるが、アプリケーション自体は問題なく稼働しているものの、その開発・運用・保守を担う要員不足ゆえに、IBM iの未来に黄信号が灯る。プログラムは動かせても、それを支える人材がいないのであれば、IBM iを将来にわたって使い続けていくのは難しいのではないかという危機感がある。

ベンダーもこうした危機感を共有している。IBM iに関連する人材が不足しているのは、ベンダー側も同じであるが、その課題を真摯に捉え、積極的に自社のIBM i人材を育成・確保して、「要員対策」という視点でIBM iビジネスを拡大しようというベンダーがいる。

IBM i市場から撤退し、オープン系ビジネスに傾注しようと舵を切るベンダーがいる一方で、要員対策に悩むユーザーと歩みをともにするベンダーが少なからず登場しているのである。このように熱量の濃淡を露わにしつつ、IBM iを取り囲むベンダー地図は描き直されつつある。

アプリケーション保守を
サービスの起点に位置づける

ベンダーからユーザーに向けた要員対策のアプローチは複数あるが、近年目立つのが「アプリケーション保守サービス」である。

冒頭に記したとおり、ユーザー側ではアプリケーションの保守を担える要員が不足しつつある。今まで運用してきた基幹システムがこの先、要員不足という理由だけで利用できなくなる事態は避けたいと考えている。そこでベンダー側が提案しているのが、外部にアプリケーションの保守を委託すること。それがアプリケーション保守サービスである。

従来、ユーザー側では「自分たちの開発したアプリケーションの保守を外部に委託する」、あるいは「アプリケーションを開発したのとは異なるベンダーに保守を委託する」のは難しいと考えられてきた。

確かにもともとアプリケーションの開発に携わっていない第三者がプログラムの構造や内容を把握するには、多くの時間や工数が必要である。それはすなわち保守コストに反映される。今まで存在していなかった外注コストの発生が、アプリケーション保守の外部委託に立ちはだかることになる。

しかし昨今は、アプリケーションを可視化・分析するツールが登場している。短期間でプログラムの構造や修正による影響範囲を分析できるので、以前と比較にならないぐらい第三者によるアプリケーション保守が容易になった。アプリケーション保守サービスを提供するベンダーはほぼ例外なく、開始時点でこうしたツールやサービスを利用してプログラムを分析する。それゆえに以前と比べれば、アプリケーション保守のコストも適正化されていると言える。

ユーザー側もこうした提案を受けて、現実的な選択肢として、「自分たちの手で保守してきたアプリケーションを外部に委託できる」ことに気づき始めているようだ。

要員対策を視野に入れたベンダー側の提案は、アプリケーション保守サービスをはじめ、IT部門全体の機能を担うアウトソーシングサービス、システム開発を担うSIサービス、人材派遣サービス、IT部門の人材を育成する教育サービス、さらにインフラの運用管理軽減を実現するクラウドサービスや多種多様な工数削減を狙いにしたツール/ソリューションの導入など、多岐に渡っている。

どのサービスに力を入れるかが各ベンダーの個性となるが、アプリケーション保守サービスを、その後の継続的なサービスの起点と考えるベンダーは少なくない。

アプリケーション保守は、ユーザーの抱えるシステムの構造や運用状況、業務の内容やその課題を理解するうえで最良のスタートラインとなる。そのためアプリケーション保守サービスを一種のドアノックツールに位置づけ、その後の本格的なSIサービスやアウトソーシングサービスへ拡大させていこうという戦略を描く。

本誌では前号で、「攻めの要員対策」と題した特集を掲載し、IT部門の人材不足に悩むユーザーの現状と、それぞれの状況に応じて積極的な人材戦略を展開する3社のIBM iユーザーの取り組みを紹介した。

今号からはそうしたユーザーの現状に対し、要員対策に視点を据えてIBM iビジネスを展開するベンダーを連載で紹介していく。

アプリケーション保守をはじめ、SI、教育、人材派遣、クラウドサービスやツール/サービスの提供など、どの領域に力を入れているかが各ベンダーの個性となる。

IBM iに対して、熱量のある取り組みを展開するベンダーを紹介していこう。

「要員対策」を見据えたベンダー側のサービス

 

❶日本オフィス・システム株式会社
アプリケーション保守、クラウドサービス、LANSAの3つを軸に要員不足へのアプローチを展開

❷トライビュー・イノベーション株式会社
「IBM iアプリケーション外部保守委託サービス」を起点に、多様なアウトソーシングサービスへ

 

[i Magazine 2024 Spring掲載]