政府、今後5年間の「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」、物流DX・物流標準化を推進へ

物流大綱

今回の大綱では、日本の物流が今後目指すべき方向性として後述の3つの観点を掲げているが、今直面する課題として、次の4点を挙げる。

・物流産業における労働力不足の社会問題化
・災害の激甚化・頻発化により露呈した物流ネットワークの脆弱性
・国際物流を取り巻く環境の変化
・物流における新技術の導入の進展

そしてこれらの課題は、新型コロナの流行とそれによる社会の劇的な変化とも相まって、「より先鋭化・鮮明化している」と、大綱は指摘する。

「昨今の災害の激甚化・頻発化や新型コロナウイルス感染症の流行により、有事においても機能する物流ネットワークの構築が一層重視される状況となっているほか、グローバルサプライチェーンの脆弱性が顕在化し、その多元化等の必要性も高まっている。加えて、物流事業者の海外展開や農林水産物・食品の輸出等のほか、SDGsやグリーン社会の実現を目指した取組など、経済や地球環境の持続可能性を高めるための取組も積極的に推進すべき状況にある」

日本の物流が今後目指すべき方向性は、次の3つの観点である。

① 物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(「簡素で滑らかな物流」の実現)
② 労働力不足対策と物流構造改革の推進(「担い手にやさしい物流」の実現)
③ 強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(「強くてしなやかな物流」の実現)

「前大綱においては「強い物流」の構築が大きな目標であったが、新型コロナウイルス感染症の影響による社会の劇的な変化により、既存の慣習や様式にとらわれずに施策を進める環境が醸成されつつあることから、「強い」という概念に限らない、「簡素で滑らかな物流」、「担い手にやさしい物流」、「強くてしなやかな物流」の実現に向けた施策を推進していく。

この認識は、直接物流に携わる事業者、労働者だけでなく、製造事業者、荷主、一般消費者など物流に関わる全ての関係者に共有されることが重要であり、上に掲げた今後の物流が目指す方向性の実現に向け、あらゆる関係者が一致協力して各種の取組を推進していく必要がある。

また、この目標の達成のためには、これまで「競争領域」とされる部分が多かった物流について、「協調領域」もあるという前提のもと、協調領域を積極的に拡大する方向で捉え直すことも重要である」

物流大綱

①の「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」の内容は、次のとおりである。

(1)物流デジタルの強力な推進
   ・手続き書面の電子化の徹底
   ・サプライチェーン全体の最適化を見据えたデジタル化
   ・デジタル化を前提とした規制緩和や手続きの特例の検討
(2)労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進
   ・サプライチェーン全体の自動化・機械化の推進
   ・倉庫等の物流施設における自動化・機械化の導入に向けた取り組み
   ・幹線輸送における自動化・機械化の導入に向けた取り組み
   ・配送業務における自動化・機械化の導入に向けた取り組み
   ・中小企業における自動化・機械化を促すための方策
   ・ロボット産業の競争力強化のための環境整備
(3)物流標準化の取り組みの加速
   ・モノ・データ・業務プロセス等の標準化の推進と社会課題としての発信
   ・加工食品分野における標準化・商慣習改革のための推進体制の整備と周辺分野への展開
   ・業種分野ごとの物流の標準化の推進
   ・国際化やデジタル化を視野に入れた標準化の推進
(4)物流・商流データ基盤の構築等
   ・SIP 等のデータ連携基盤の構築と社会実装
   ・データ基盤の共有や接続を通じたエコシステムの形成
   ・国内の物流データ・情報と輸出入等の手続・プロセスとの連携
   ・物流MaaSの推進
   ・データ提供時における情報セキュリティ確保の徹底
(5)高度物流人材の育成・確保
   ・物流DXを推進する人材に求められるスキルの明確化
   ・各階層への学習機会の提供

②の「労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進」については、IT化に特に関係する「ラストワンマイル配送」の項目をここでは挙げる(全体は末尾リンクから参照してください)。

(5)過疎地域におけるラストワンマイル配送の持続可能性の確保

「離島や山間部等におけるトラックや船舶の代替配送手段として、ドローン物流の社会実装に向けた取組が進められている。今後は、医薬品や農作物の輸送、買い物支援など具体的な用途を念頭に置きながら実証を進めるとともに、運航コストの低減を含めた経済合理性や社会受容性の確保等の課題の解決策の検討・整理を行い、ドローンの利活用促進のためのガイドラインを策定し、実証の成果を社会に示すことで近い将来の社会実装を確実なものとする」

③の「強靱で持続可能な物流ネットワークの構築」の内容は次のとおりである。

(1)感染症や大規模災害等有事においても機能する、強靱で持続可能な物流ネットワークの構築
   ・ポストコロナ時代における非接触や非対面、デジタル化等に対応した物流インフラの整備
   ・大規模災害時の物資輸送の円滑化
   ・物流拠点と既存インフラとのアクセス強化や物流拠点の防災対策
   ・物流を支えるインフラや各輸送モードの安全性の確保
(2)我が国産業の国際競争力強化や持続可能な成長に資する物流ネットワークの構築(細目は省略)
(3)地球環境の持続可能性を確保するための物流ネットワークの構築(細目は省略)

物流大綱

「総合物流施策大綱」目次

Ⅰ.総合物流施策大綱策定の意義
 (1)物流が果たす社会インフラとしての役割
 (2)我が国が直面する課題
 (3)総合物流施策大綱策定の意義

Ⅱ.物流を取り巻く現状・課題と今後の物流施策の方向性
 (1)前大綱策定以後の物流を取り巻く環境の変化
 (2)前大綱において講じた主な施策
 (3)物流生産性及び労働力不足に関する代表的指標の状況と分析
 (4)新型コロナウイルス感染症に伴う物流を取り巻く環境の変化
 (5)今後の物流施策の方向性

Ⅲ.今後取り組むべき施策

1:物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化 (簡素で滑らかな物流の実現)
  (1)物流デジタル化の強力な推進
 (2)労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する自動化・機械化の取組の推進 (3)物流標準化の取組の加速
 (4)物流・商流データ基盤の構築等
 (5)高度物流人材の育成・確保

2:時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進 (担い手にやさしい物流の実現)
 (1)トラックドライバーの時間外労働の上限規制を遵守するために必要な労働環境の整備
 (2)内航海運の安定的輸送の確保に向けた取組
 (3)労働生産性の改善に向けた革新的な取組の推進
 (4)農林水産物・食品等の流通合理化
 (5)過疎地域におけるラストワンマイル配送の持続可能性の確保
 (6)新たな労働力の確保に向けた対策
 (7)物流に関する広報の強化
3:強靱性と持続可能性を確保した物流ネットワークの構築
 (強くてしなやかな物流の実現)
 (1)感染症や大規模災害等有事においても機能する、強靱で持続可能な物流ネットワークの構築
 (2)我が国産業の国際競争力強化や持続可能な成長に資する物流ネットワークの構築
 (3)地球環境の持続可能性を確保するための物流ネットワークの構築
4:代表的な指標 (KPI)について

Ⅳ.今後の推進体制等
 (1)本大綱の計画期間等
 (2)本大綱の推進体制
 (3)まとめ
 (別表)

・「総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)」を閣議決定 https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000560.html
・「総合物流施策大綱(2021 年度~2025 年度)」(本文) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001408878.pdf
・総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)の概要」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001408879.pdf

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