ブロックチェーン「2.0」の市場動向|仮想通貨からソフトウェアの開発・運用基盤へ

金融・自治体・小売など多分野で50以上の実装・検証が進行中

 

多様な業種・分野で
ユースケースの実装・検証中

2009年に仮想通貨ビットコインの基盤技術として登場したブロックチェーンは、その技術の特質とそこから生まれる価値が注目され、仮想通貨以外の分野での取り組みが急速に拡大している。

調査会社IDC Japanは、国内ブロックチェーン関連市場の成長率を、2016?2021年の6年間で年平均133%と予測し(2017年6月公表、図表1)、米IDCは、2020年までにグローバル取引を手がける銀行の上位25%、メーカー/小売業の約30%、医療機関の20%がブロックチェーンネットワークの利用に踏み切り、2021年までに「フォーブス・グローバル2000」企業の25%以上がブロックチェーンサービスを採用すると見ている。

 

【図表1】国内ブロックチェーン関連ソリューション市場 支出額および年平均成長率予測 2016年~2021年

また、国内でもさまざまな業種・分野で取り組みが進んでいることを、関東IBMユーザー研究会のIT研 H28-6チームが調査で明らかにしている(Part 6でレポート)。それによると、ブロックチェーンの実装・検証が、「金融」を筆頭に「自治体」「証券」「小売」で行われ、そのほかの業種・分野でも、この1年間に同様の取り組みがスタートしている(図表2)。そして、その目的も「情報資産管理」「コスト削減」「新サービス創出」などと多様だ(図表3)。

 

【図表2】ブロックチェーン 国内実証実験の状況

【図表3】ブロックチェーン 国内実証実験の状況 目的別

 

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の高木聡一郎 准教授は、「ブロックチェーンは“2.0”の段階へ進んでおり、イノベーティブなサービスを実現するソフトウェア基盤として、ブロックチェーンならではのユースケースの検証が始まっている」と指摘する(図表4、「ブロックチェーン・イノベーション2017」での発言)。

 

【図表4】ブロックチェーンの発展

その実例の1つとして、埼玉県さいたま市浦和美園地区で実施されている「ブロックチェーンによる電力流通決済システム」の実証実験を挙げる。これは家庭で発電した電力を家庭間で売買し合う自動取引システムを、ブロックチェーンによって実現するものだ。

 

ブロックチェーンの
5つの技術的特徴

ブロックチェーンの定義はまだ定まっていないが、次の5つを特徴として挙げることができる。

・データの改竄がきわめて困難

・実質ゼロ・ダウンタイム(単一障害点がない)

・中央管理者不要の合意形成

・ソフトウェアが稼働するプラットフォームとして機能

・さまざまな価値の登録・移転・流通、台帳管理が可能

つまり、中央の管理者なしに台帳間で合意形成ができ、多様な価値の移転・管理を安全に行えるのがブロックチェーンなのである。

それゆえこの技術は、これまで中央に第三者機関や巨大システムを配置していた既存ビジネスにとって破壊的なインパクトとなる。それと同時に、新しい価値を生み出す可能性もある。第三者機関や巨大システムが不要になるので大きなコストセービングをもたらし、取引のための煩雑なやり取りを省略でき、企業間や工程間の処理を迅速化させるからである。

ただし、ビットコインが基盤としてきたパブリック型のブロックチェーンは万能とは言えない。大量のトランザクションやリアルタイム性を求めるアプリケーションには不向きで、スケーラビリティや取引の秘匿性にも難点があるとされる。

 

パブリック型の課題を克服する
新しいブロックチェーン基盤

そこで2016年ごろから、ベンダーおよびユーザーの間で、パブリック型の問題を克服する、新しいブロックチェーン基盤を開発する取り組みが進められてきた。

ブロックチェーンは、管理主体の違いによって「パブリック型」「コンソーシアム型」「プライベート型」に分類される(図表5)。現在、開発が急速に進んでいるのは、管理者を不要とするパブリック型ではなく、複数の組織または単一の組織が管理主体となり、ネットワークへの参加は管理者の許可を必要とするコンソーシアム型とプライベート型である。参加者を特定・限定することにより、合意形成の方式をパブリック型よりも簡便にし、処理性能の向上などを狙う。

 

【図表5】ブロックチェーンの種別

そのコンソーシアム型の1つであるHyperledger Fabricでは、2017年7月に「v1.0」がリリースされた。公開されていた「v0.6」の課題を改善したもので、プライバシーやスケーラビリティ、開発面で大きな改良が加えられた(図表6)。

 

【図表6】Hyperledger Fabric v0.6の課題とv1.0での対応

本稿に続くPart 2では、日本IBM システムズ・エンジニアリングの佐中晋氏にHyperledger Fabric v1.0のポイントを解説していただく。

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IS magazine No.18(2018年1月)掲載

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