事例|野田スクリーン IBM iベースのクラウド利用、資産継承性や運用性でコスト効果を向上

Windowsのバージョンアップで新たなライセンス料が発生し、基幹システムを再考

 

 

内部統制対策に向け
国産ERPパッケージを導入

今やあらゆる電子機器に搭載されているプリント配線板。その製造プロセスの中でも、半導体パッケージなどに使用される高密度実装基板の製造には、高精度かつ最先端の技術が要求される。野田スクリーンは、創業時から培ってきたスクリーン印刷技術や平滑研磨技術などの加工技術を進化させ、こうした高密度実装基板の加工に活かしている。

同社が事業を飛躍的に拡大したのは、PCが爆発的に普及した1990年代後半にかけてだ。また2000年代に入ってからは、真空印刷技術の開発により、0.1mm以下の小径穴の加工と高アスペクト仕様への対応を可能にし、事業領域をさらに大きく成長させた。

このほかフッ素化成品を中心にした化学材料分野の育成にも力を注ぐ。フッ素が備える撥水・撥油、防湿、防汚、絶縁などの特性を活かし、モバイル機器から産業機械まで幅広い分野で製品を提供している。

同社は2008年5月、それまで利用していたWindowsサーバー上の会計および販売管理の業務パッケージを、やはりWindowsサーバー上で稼働する国産ERPパッケージに移行した。

移行理由は、監査法人の助言を受け、上場企業に求められる内部統制対策に着手するためであった(マネジメント・バイアウトの実施により、2013年に上場を廃止)。この時はIBMのBlade Center上に、Windows Server 2003用の3台のサーバーを搭載し、会計、販売管理、生産管理の各システムを国産ERPパッケージで、ワークフローの運用を別システムで開始している(図表1)。

 

【図表1】旧システム全体図

同社ではこの移行を検討し始めた当初、可能な限り、ERPパッケージに業務を合わせる方針を掲げた。その方針どおり、会計システムはほぼ100%、販売管理システムも帳票など一部を除いて、大半の機能をそのまま利用することを決めたという。

しかし導入を進めるにつれ、製造指図書の作成から工程管理を軸とする生産管理システムについては、プリント配線板加工という業務の特殊性から、パッケージ機能のままでは運用が難しいと判断し、結果的にはシステム機能の半分近くをカスタマイズ開発で実現することになった。

 

Windowsでの継続に
コストや運用性の問題が浮上

同社では、この運用を2008年5月から約7年続けたのち、2015年5月になって、基幹システムをIBM iベースのクラウド環境へ移行した。その経緯を詳しく見てみよう。

同社が基幹システムの移行を考え始めたのは、2013年も半ばを過ぎた頃である。きっかけは、2014年4月に予定されていたクライアントOSであるWindows XPのサポート切れ、および2015年7月に予定されていたWindows Server 2003のサポート切れであった。

利用していた国産ERPパッケージを、クライアントおよびサーバーOSの次バージョン、すなわちWindows 7 およびWindows Server 2012に対応させるには、国産ERPパッケージの新バージョンを導入しなければならないが、これにはライセンスの再購入が必要になる。さらにそれに、生産管理システムで大量にカスタマイズしているプログラムの改修費が加わることになる。

つまり2008年に国産ERPパッケージの運用を開始した当時の初期コストとほぼ同額の費用が必要になると判明したのである。

「我々としては、できれば使い慣れた国産ERPパッケージの運用を継続したいと考えていました。しかし以前と同じ導入コストが再び発生するのであれば、これを機会に再度、『当社に最適な基幹システムとは何か』を検討し直してもよいのではないかと考えるようになりました」と、当時を振り返るのは経営企画室の山本学室長である。

導入コストの問題に加え、機能性や信頼性・安定性についても少なからず不満が生じつつあったと、山本氏は次のように続ける。

「国産型のERPパッケージは海外製に比べると柔軟で、カスタマイズへの対応力が高いと言われており、事実そのとおりだと思います。しかしそれでも、当社の業務要件やニーズのすべてにきめ細かく対応できるわけではなく、業務をシステムに合わせる必要があります。システムのさまざまな部分を運用でカバーすることで、逆に効率性を妨げる場面も増えていました」

さらにシステムの不安定さも目立つようになっていた。

同社では、導入後も継続的に追加カスタマイズが発生していた。とくに2010年10月にハンディターミナルを導入し、バーコードによる工程管理を開始してからは、一気にデータ量が増え、メモリ不足に起因すると見られる障害やシステム停止が発生し始めたという。

「メモリ不足を解決するため、基幹サーバーから別サーバーに一部のプログラムを移すといった対策を実施していましたが、このことがシステムの複雑性を増し、システムの信頼性を阻害する一因になっていたと思います」と語るのは、経営企画室業務課の森成広氏である。

同社では業務課に所属する森氏が、IT担当として1人でシステム運用を担っていた。もともとは他の業務との兼任であったが、その頃はシステム運用が手一杯で、事実上IT専任とならざるを得ない状況に陥っていたという。

 

IBM iベースのクラウドサービスで
カスタマイズ前提のパッケージを運用

こうした状況を背景に、2013年半ば、基幹システムの再検討プロジェクトをスタートさせることになった。

新システム導入の検討対象となったのは、国産ERPパッケージの継続利用を含めた8社のベンダーである。

大半は、Windowsサーバー上で稼働する国産のERPもしくは統合業務パッケージであったが、その中で1社だけ、ほかとは異なる提案が目を引いた。IBM iをベースにしたクラウド環境で、カスタマイズを前提にした「SOFLAパッケージ」を利用するソフラ(株)の提案である。

「ソフラの『Windowsに縛られないシステム構築』という言葉に引かれ、内容を詳しく検討することになりました」と、山本氏。

ソフラだけがIBM iによるクラウド、他7社がWindowsのパッケージ製品(その中で1社だけがSaaSに対応)。ここから2013年11月までに3社に絞り、最終的にソフラの提案を採用した。その理由は主に3つある。

まず、Windowsのバージョンアップに左右されず、システム資産を継承できること。次に、業務要件に合わせたカスタマイズが可能であること。そしてクラウドサービスの利用により運用管理業務を軽減できること、の3点である。

「今回も検討当初は、システムに業務を合わせるべく、カスタマイズは最小化する方針を打ち出していました。しかし検討を重ねていくうちに、本当は自分たちの求める機能、自分たちが使いやすい方法をシステム側で準備してくれるのが最善だと考えるようになりました。SOFLAパッケージはカスタマイズが前提であり、こちらが業務要件を出すと、標準機能とカスタマイズをうまく組み合わせながら要件をクリアしてくれます。当社側が『これは標準機能、これはカスタマイズ』と1つ1つ考える必要はまったくありませんでした」(山本氏)

ソフラ側は当初からクラウドサービスで提案していたが、2014年1月に竣工した独自のデータセンター(ソフラクラウドセンター)が、クラウドの採用を後押しすることになった。このクラウドセンターは、ソフラの本社がある姫路市に立地し、J-Tierレベル3、JEITA(安全対策適合証明)、ISO27001など、高度なデータセンター要件をクリアしている。

「ソフラの専任スタッフが常駐するので、当社からの要望にもスピーディに対応してくれます。またSOFLAの通信手法により、クラウドを感じさせないレスポンスを実現しています。当時の基幹サーバーは本社内のサーバールームに設置していましたが、安全性の高いクラウドセンターに移設することで、災害対策レベルを高められると考えました」と語る山本氏に続き、森氏も次のように指摘する。

「IBM iは、かねてから信頼性が高いと聞いていましたが、実際のところ、OSを含むシステムの内容については、まったく知識がありませんでした。当社はIT担当が私1人で、Windowsしか知りません。まったく未知のシステム運用を1人だけで抱え込む自信は、正直なところありませんでした。しかし運用一切をクラウドサービスとしてソフラに委託できるので、IBM iの採用に踏み出すことができました」

 

プログラムの資産継承性が
コスト効果を引き上げる

ソフラの正式決定は2013年12月。翌2014年4月から、システム概要の把握と要件定義がスタートした。同年7?8月に基本設計、9月からカスタマイズ開発に入り(一部の開発は先行的に開始)、翌2015年2月にテストとネットワーク環境の整備に着手。同年4月、無事にクラウドサービスでの本稼働を迎えている(図表2)。

 

【図表2】新システム全体図

またクライアント環境は、2014年5月にまず、国産ERPパッケージを利用していない約70台のWindows XP搭載PCをWindows 7へ入れ替えた。そして新システムの本稼働を経た2015年9月に、残り約50台の業務用端末をWindows XPからWindows 7へ移行している。

新システムは5250画面ではなく、「スクリーンジェネレータ」と呼ばれる専用ビューアで操作する。ソフトウェア的なシン・クライアント環境で実行するGUI画面であり、Windows時代と比べても操作に違和感はないという(図表3)。

 

【図表3】新システムの画面イメージ


「以前はユーザー利用数ごとにライセンス料金が発生していました。しかしソフラのクラウドサービスでは、SOFLAの接続ライセンスがあるだけで、基幹システムに課金はありません。無制限のSOFLAライセンスであれば、仕入先や取引先へ利用が拡大した場合も、追加コストを考慮する必要がなくなります」(森氏)

それでは国産ERPパッケージを継続利用する場合と、IBM iベースのクラウドサービスで利用する場合とを比較したコスト差はどうだったのだろうか。

「月額料金によるソフラクラウドサービスを5年間利用した場合と、国産ERPパッケージを5年使用する前提での初期導入コストおよび保守料金を比較すると、クラウドサービスのほうがやや高かったのは確かです。しかし今後、Windowsがバージョンアップするたびにライセンス購入やカスタマイズシステムの改修費が発生することを考えると、今後も長く使用できるIBM iベースのシステムのほうが、少し長い目で見れば割安であると考えています。クラウドサービスによる運用管理業務の軽減や信頼性・安全性、さらに災害対策レベルの向上なども考え合わせれば、さらにコスト効果は高いと考えています」(山本氏)

Windows時代はシステム運用に手一杯であった森氏だが、バックアップ作業やクライアント側モジュールのメンテナンス作業、さらに障害やシステムダウンへの対応など、多くの運用管理業務がその手を離れた。それにより今では本来あるべき、他業務との兼業が可能になっている。そのことを考え合わせれば、IBM iとクラウドは正しい選択であったと言えそうだ。

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COMPANY PROFILE

株式会社野田スクリーン

本社:愛知県小牧市
設立:1984年
資本金:4億8000万円
売上高:28億円(2016年4月)
従業員数:180名
事業内容:電子部品(プリント配線板、半導体パッケージ基板)の加工、化学材料の開発・製造・販売、電子部品製造装置の販売
http://www.nodascreen.co.jp

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山本 学氏

経営企画室
室長

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森 成広氏

経営企画室
業務課

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i Magazine 2016 Summer(8月)掲載