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事例|岩井機械工業株式会社 ~ クライアント・ライセンスへの変更では予算オーバー、PHPQUERY採用と巧みな移行策により混乱回避

本 社:東京都大田区
創業:1947年
設立:1957年
資本金:5億1187万円
売上高:283億円(2018年3月)
従業員数:410名
事業内容:流体の食料品・医薬品・化学品向け製造機械の研究開発から設計・製造・販売・修理まで、および製造プラントのエンジニアリングを統合的に手がける。
http://www.iwai.co.jp/
 
お茶やドレッシングなどをボトリングするための流体食品用製造機械とプラントエンジニアリングのリーディングカンパニー。流体処理、施工、制御で高度な技術をもつ企業として知られ、現在は、医薬品や化学品分野にも進出。中国、台湾、ベトナム、タイにも拠点を構え、活動領域を広げている。
 

サーバー・ライセンスが
大きな魅力として映る


 コンビニエンス・ストアやスーパーマーケットに並ぶお茶や牛乳、ドレッシング、ジャムなど。岩井機械工業は、これら流体食品を作るための製造機械やプラントエンジニアリングのリーディングカンパニーで、現在はその技術力・開発力・総合力を医薬品や化学品分野にも向け、事業領域を拡大している。
 
 業務合理化のためのシステム化は早く、1969年に富士通メインフレームを導入。1984年からは生産管理用ホストとしてシステム/38の利用も開始し、さらに1990年に基幹ホストを富士通メインフレームからAS/400(現・IBM i)へ切り替えて一新し、以降一貫してIBM iを使用してきた。
 
 現在、IBM i上では生産管理や販売管理、会計などの基幹システムが稼働する。これらは1990年にホストを切り替えた際に自社開発ないしパッケージソフトウェアをカスタマイズしたものが大半で、システム部門では30年にわたりシステムの改修・拡張を継続してきた。
 
 情報管理グループの秋山嘉隆氏(グループリーダー)は、「業務部門からの改修の依頼はコンスタントにあり、近年高水準の業績が続くなかで昨年(2018年)はかつてないほど依頼が多く、改修や拡張作業に追われました」と話す。
 
秋山 嘉隆氏
経営本部 総務部
情報管理グループ
グループリーダー
 
 同社では2008年にBIツールを導入し、業務部門が基幹データを活用するための基盤とした。システム部門が定義したプログラムに対してユーザーが検索条件を指定し、その抽出データをExcelへ落として利用する使い方で、全社員(410名)の半数以上がユーザーになるなど、業務に欠かせないツールとして利用されてきた。
 
 ところが、2018年に切り替える予定のIBM i(POWER9)環境で利用するにはBIツールのライセンス形態を変更する必要があり、新たなBIツール探しが始まった。
 
「従来のライセンス形態はサーバー単位でしたが、新しいIBM iではクライアント単位になるため、ユーザーが200名を超える当社では予算をはるかにオーバーしてしまいます。そこでやむなく、新たなツール探しを2017年春からスタートさせました」と説明するのは、情報管理グループ チームリーダーの藤田祐次氏である。
 
藤田 祐次氏
経営本部 総務部
情報管理グループ
チームリーダー
 
 しかし、新しいBIツール探しは「すんなりとは決まらなかった」(藤田氏)。一時期は、ノンプログラミングでプログラムを自動生成する開発ツールも検討したが、「仕組みの理解が難しく、カスタマイズに時間がかかり過ぎる」(藤田氏)との理由で、採用を見送った。
 
 そうしたなかで、あるセミナーでオムニサイエンスの「PHPQUERY」を知り、検討を始めた。
 
「最初に注目したのはサーバー・ライセンスという点で、ユーザーがいくら増えても費用に影響しない点が魅力として映りました」と、藤田氏。そして「実際に当社の開発機にテスト導入して調べてみると、データ抽出の定義方法や操作方法が非常に簡単で、これならスムーズに移行できると考え、採用を決めました」と経緯を述べる。
 
 また、情報管理グループ主任の丹澤博氏は、「PHPQUERYにシングル・サイン・オン対応の機能があり、社員がイントラネットにログオンするとそのままPHPQUERYを利用できる点や、IBM iに重い負荷を与えるデータ抽出をクエリーの処理時間や一時記憶域容量の設定によってコントロールできる点を高く評価しました。PHPQUERYがIBM i上で稼働するので管理しやすいのも好都合で、デザインがシンプルで洗練されているのも、システム部員全員が気に入った点でした」と、採用の理由を話す。
 
丹澤 博氏
経営本部 総務部
情報管理グループ
主任
 
 PHPQUERYへの移行は、従来の約200本のプログラムから長期未使用の約70本を除外し、残った約130本のプログラムからそれぞれSQL文を取得し、それを基にPHPQUERYを定義する方法で進めた。丹澤氏は、「移行後にユーザーが混乱しないよう、従来とまったく同じ体裁(カラム数)のExcelにデータを抽出できるように配慮しました」と、プログラム作成のポイントを語る。移行作業は2018年9月中旬に3名でスタートし10月末に完了、12月1日より本番利用が始まった。
 
 
 

利用開始から2カ月間で
全社員の半数以上が利用

 
 本番開始から2019年2月1日までの2カ月間に、PHPQUERYは1万3377回実行された。登録ユーザー数は246名となり、全部門が万遍なく使用中である。藤田氏は、「スタート当初は多少の混乱もありましたが、すぐに終息し、現在はすっかり定着しています。ツールの選択と移行方法は間違っていなかったと考えています」と評価する。
 
 また秋山氏は、「パーツ検索の実行回数が約4000回と飛びぬけて高いのは、システム面で不足するものがあるからとも考えられます。PHPQUERYは、ユーザーの利用状況を細かく把握できるので、システム開発・改修の参考にもなると見ています」と話す。
 
 同社では2018年4月から基幹システムの抜本的な見直しを行う再検討プロジェクトをスタートさせている。PHPQUERYへの移行は、そのプロジェクトや業務部門からの多くの改修の依頼とも重なり、過密なスケジュールのなかでの作業となった。
 
「それでもプログラムの品質・生産性を落とさずに短期間に移行できたのは、PHPQUERYならではの定義のしやすさや使いやすさゆえのことと考えています」と、丹澤氏は感想を述べる。

 

[i Magazine 2019 Spring掲載]