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日本IBMの「2026年のAI戦略」は「3+1」で推進 ~IT変革のためのAI、ビジネス変革のためのAI、統合AI基盤と、IBM AI Lab Japan、AIパートナーシップ

日本IBMは2月10日、「2026年のAI戦略説明会」を開催した。プレゼンターを務めたのは、日本IBM Chief AI Officer(CAIO)の村田将輝氏(取締役副社長 執行役員)。

村田氏は冒頭、「1年前にお客様と会話すると“AIで何ができるか”という質問が大半だったが、最近は“AIでどんな成果を出すか”へと変わっている。日本IBMはこの期待に応えるべく、測定可能な成果を出すことにこだわって、今年のAI戦略を進めていく」と語り、「3+1」という「2026年のAI戦略」について説明した。

3+1とは、「IT変革のためのAI」「ビジネス変革のためのAI」「統合AI基盤」という3つの重点領域と、その推進基盤となる「IBM AI Lab JapanとAIパートナーシップ」を指す言葉。

村田氏は1つ目の「IT変革のためのAI」について、AIソリューションの使い手を、非エンジニア、高いスキルをもつエンジニア、大規模かつ重要システムを開発・保守するエンジニアの3つに分けたうえで、「IBMは、大規模かつ重要システムを開発・保守するエンジニア向けの仕様駆動開発でリーダーシップを取ることを目指している」と語り、「そのために2025年10月に米アンソロピック社と提携し、アンソロピックの大規模言語モデル(以下、LLM)Claude(クロード)を利用して、エンタープライズや重要システムに対応可能なAI駆動開発ソリューションの開発を進めている」と説明した。

IBMはアンソロピックとの提携に基づき、ClaudeをIBMの一部のソフトウェア製品に統合する予定。その第1弾として「高度なタスク生成機能を備えたAIファーストの開発者ツールシステム(IDE)」の開発計画を明らかにした。

そして、このClaudeと連携し「IT変革のためのAI」を実現するツールがIBM Bobである。

IBM Bob

村田氏によると、IBM Bobは「エンタープライズ志向」「ハイブリッド拡張性」「全方位モダナイゼーション」の3つの特徴を備える。そして、Claude、Mistral、Granite、カスタムモデルという各種LLMを「タスクに応じて自動で使い分ける」ことによって、「高品質(正確性・性能・コスト)なAI駆動開発を実現する」とした。IBM Bobは、今年3月にSaaS版、2026年9月までにオンプレミス版が一般提供される予定(その後、IBM Bobは3月24日に出荷開始になることが発表された)。

次に村田氏は、AI駆動開発ツールが性能を高めていくにつれて「人間がボトルネックになる懸念」について触れた。AI駆動開発ツールを使いこなすには、人間が「品質要件を構造化し、ツールに対して的確な指示を与え、品質のレビューと統制を行える必要がある」が、ツールが高性能化すると人間に求められる知見・スキルも高度化し、現実と要求との間にギャップが生じるからである。

IBMではその課題に対して、「IBM独自の大規模開発の能力・ノウハウを組み込んだアセット」と「プロジェクト管理のためのAI」を開発し対応していく計画。

「アセット」は、標準プロセス、成果物テンプレート、ルール、ガイド、コマンド(プロンプト)など開発のノウハウをセットしたもの。「プロジェクト管理のためのAI」は、進捗管理、要員計画・管理、課題・リスク管理、変更管理、実績コスト管理、品質管理をカバーし、開発者を支援するものである。

IBMではこの開発により、「2027年以降にシステム開発プロジェクトで35%の工数削減、開発期間で30%の短縮を実現する」と、村田氏は目標を語った。

またその目標へ向けて、2026年1月に約6000人を対象とする組織再編を実施。「すべての開発プロジェクトに100%AIを適用する取り組みを開始した」という。

「2027年はシステム開発のあり方を過去40年で最も変える年になる。その変化に対応するには、AIファースト時代における人間の役割の再定義とスキルに対する投資、企業文化と行動原則の更新が非常に重要になる。IBMが取り組むべき最大のチャレンジは、そこにこそある」(村田氏)

2つ目の「ビジネス変革のためのAI」とは、ビジネス変革を促し推進するためのAIソリューションである。

IBMではこれをまず社内で実践し、「35%の社内業務で155種類のAIソリューションを実用化した」という。そしてその経験に基づき、「160種以上のアセットを提供可能とし、80弱のプロジェクトで推進中」と、村田氏は説明した。

3つ目の「統合AI基盤」については、AIエージェントの野良化とそれをコントロールし切れない懸念が高まっていることを指摘したうえで、「オープンな業界標準に準拠し、エンタープライズ利用の基準を満たす基盤が必要」と述べ、IBMの「統合AI基盤」について説明した。

IBMの統合AI基盤は、オンプレミスまたはクラウドのハイブリッド基盤の上に、コンテナ/自動化(=Red Hat OpenShift、HashiCorp Terraform)、AI運用、AIセキュリティ、AIガバナンス、AIデータのミドルウェア層があり、さらにその上に、AIアプリケーション、AIエージェント、AIゲートウェイ、LLM、MCPサーバーの各基盤が配置されるアーキテクチャである。IBM Bobは「AI開発ツール」の位置づけで、左の脇に配置されている。

最後の「IBM AI Lab JapanとAIパートナーシップ」のうち、IBM AI Lab Japanは、IBMのグローバルなAI製品開発拠点の1つ。「AIソフトウェアセンター」と「AIハードウェアセンター」の2つの組織で構成され、東京基礎研究所内に設置されている。約400名の人員体制という。

またAIパートナーシップに関しては、「お客様は成果とリスクを共有でき、一緒に進めてくれるパートナーを探している」として、ユーザー企業との間でAIパートナーシップの締結を進めているとした。これは「成果コミット型」の提携という。すでに東北電力、JCB、SIGNATEと締結済みである。

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