生成AIとOLAPデータベースによる
データ分析ソリューション
日販テクシードは、出版取次大手の日本出版販売(以下、日販)をルーツとする日販グループのIT事業を幅広く手掛けている。2019年に日販のIT部門が分離・統合され、日販コンピュータテクノロジイから現在の社名に変更した。
もともと日販がIBM iユーザーであることから、同社では早くからIBM iを強みとしたシステム開発を手掛けてきた。IBM iを基盤とするグループ全体のシステム開発を担う一方、そのノウハウを活かし、2006年からはIBM i上で稼働する出版社向けの業務システム「LEAD」を提供してきた。
さらに2025年4月からは、出版以外の業界、たとえば製造業や流通業といったユーザーに向けても、IBM iのノウハウを活かしたITビジネスを展開すべく、組織改革に着手し、積極的に活動してきた。
その中心部隊であるエンタープライズソリューション事業本部では、メインフレームやIBM i、オープン系の技術者・開発者を揃え、出版業界以外のユーザーも対象に、基幹システムが稼働するIBM iと各種クラウドサービスとの連携、AIの導入といったDXの提案に力を入れている。
IBM i向けの品揃えを強化するなか、注目のソリューションとして2025年11月から提供を開始したのが、「AIデータ分析ソリューション」である。これは生成AIを活用し、IBM iをはじめオンプレミスかクラウドかを問わず、多様なデータを対象に分析処理を実行するソリューションである。
最大の特徴は、分析処理に特化した高速データベースである「ClickHouse」をハブにしていること、そして生成AIにより自然言語での分析を実現していることである。
ClickHouseは、世界で広く使用されている列指向・分散型の高速なOLAPデータベースである。データを列単位で格納することで、必要な情報だけを読み込み、高速な集計・検索を実現。データをまとめて一括処理する高速なクエリー処理機能を備え、複数のサーバーを連携させる分散処理により、データ量や利用負荷に対応した柔軟なスケーリングが可能となる。
通常、クエリーの量と複雑さがデータ分析における最大の課題となる。しかしClickHouseであれば、IBM iに蓄積された基幹データをはじめ、オンプレミスかクラウドかを問わず、企業内外に存在する多様なデータを対象に高速な分析処理を実現できる。
また生成AIにより、自然言語、つまり日常使用している言葉によって分析処理が可能となる。たとえば、「先月と今月の売上比較をレポートして」といったように、複雑なデータベースの構造を知らなくても、誰でもデータ分析できる。
同ソリューションでは生成AIの種類は問わない。OpenAI、Gemini、Claudeなど企業が利用しているような代表的な生成AIに対応可能である。

ちなみにClickHouseを核とする同ソリューションは、必ずしもIBM iユーザーだけを対象とするわけではなく、IBM iが存在しない環境でも利用できる。ただし、IBM iのノウハウをビジネスの強みにしている同社では、今のところIBM iユーザーを中心に同ソリューションの訴求を図っているようだ。
自社データ×オープンデータで
新たな成長領域を見出す
導入ステップは、「① 要件とデータの整理」「② データ分析基盤の構築」「③ 範囲拡大と全社展開」の3ステップとなる。
①では、分析の目的・対象を明確化し、データ構造やデータごとのリアルタイム性の要否などを整理する。
②では、データ分析基盤を構築する。具体的にはClickHouse Cloudをクラウド(AWS、GCP、Azure)上で利用可能にし、対象となるデータベースもしくはデータソースと連携する。さらに生成AIを利用するためのMCPサーバーの構築や、必要に応じてBIソリューションの整備なども実施する。この基盤構築は、最短2週間程度となる。
そして③では必要データを追加し、利用部門と分析領域を拡大していく。
①はコンサルティングフェーズになるが、ユーザーの多くは、「今保有する自社データを使って、どのような分析が可能になるか」といった思考になりがちだという。
そこで同社ではもっと視野を広げるべく、ユーザーが必要とする本来の分析結果やインサイトは何かを検討し、基幹システムのデータ、クラウドやSaaSのデータ、そしてオープンデータを組み合わせることで、直感的なデータ分析やAIからのインサイトの重要性を提案することになる。
ちなみにオープンデータとは、気象データや人口動態など、国や自治体が公開している公共のデータであり、誰でも無償で自由に二次利用が可能である。こうした多種類のデータと自社データを組み合わせることで、「新たな成長領域」を見出していこうというわけだ。
同社では、このソリューションを本格的なDX実現に結びつけるための一種のドアノッキングツールに位置づけている。生成AIへの関心の高さもあり、「AIデータ分析ソリューション」に興味をもつユーザーは多い。
自社にどのようなデータ分析とインサイトが必要かという課題からスタートし、本格的なモダナイゼーションやDX実現に向けての道のりを描くことで、同社は新規ユーザーの獲得を目指していこうとしている。
日販テクシード株式会社
https://techceed-inc.com/
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