富山薬品工業株式会社

プロセス配合型の生産管理が製品選定を困難に

富山薬品工業は、半導体やリチウム電池といった種々の電子部品等で使用される高純度化学薬品(ファインケミカルス)に特化した専業メーカーである。

同社は1995年にAS/400上で、IBMの「X-PACK」や「D-PACK」などのパッケージ製品を使って構築した販売管理・購売管理・会計の各システムを運用してきた(一部出荷管理システムのみを自社開発)。しかし原価計算の精度向上、リアルタイムな在庫管理、処理のスピードアップ、各システム間の連携などいくつかの課題が浮上し、2003年春頃から基幹システムの再構築を検討し始めた。

オープン系の統合業務パッケージや旧システムの改良、ゼロからの作り込みなど、構築手法についていくつも検討を重ねたが、製品選定を困難にしたのは、同社の生産管理がプロセス配合型システムであり、一般の生産管理パッケージではほとんど対応していない特殊な業務要件を備えていたことであった。

パッケージ製品では機能要件を満たさず、かと言ってゼロから開発するにはリスクが高く、コストも嵩む。最適な手法を決定できず、製品選定が長引いていた頃、システム構築の責任者であった総務部の小野和也係長は、日本ビジネスコンピューター(JBCC)の「Enterprise Vision(EV)/製造」の存在を知る。同製品は、計画から受注・購買・生産・在庫・販売の一連の処理に必要なDBを備え、機能群をパッケージとして提供しているが、一方でDBの変更が可能で、独自要件のカスタマイズに柔軟に対応できるのが特徴。プロセス配合型という同社の生産管理に沿って、カスタマイズが可能と思われた。

「EV/製造」への評価を高めつつも、なかなか製品を決めきれない中、小野氏は、JBCCの板垣清美氏(さらばレガシー移行センターセンター長)の提案を受け、CPS(Customer Planning Session)を実施しようと決意した。CPSの手法(P.70に詳細解説)にのっとり、経営陣から現場担当者までキーマンを集め、2日間のセッションを開催することで、業務上の課題の洗い出し、解決策、全員の合意を形成する。それにより基幹システム構築プロジェクトを進めるための推進力を得ようと考えたのである。

小野 和也 氏 総務部係長
小野 和也 氏
総務部係長

システムの問題点に対し2日間で全社的合意を形成

CPSの実施は2005年7月の2日間。まず事前に社内40名を対象にアンケートを実施。業務上の課題として、1人が3項目を提出する。そして寄せられた約120項目を、さらに80項目程度に絞り込む。CPSでは、取締役を筆頭に同社から17名(JBCC側からは5名)が参加し、80項目の回答を課題ごとに分類していく。

例えば、技術開発部のある担当者が回答した「少量多品種のサンプル品が棚卸し調査時にある場合、評価に困る」と、製造部からの「製造カードより生産集計を行う場合、原料価格の変動が反映されない」という回答はどちらも、「原価管理システムが構築されていない」という課題に分類する。

80項目がすべて分類されたら、課題をまとめ、優先順位を決めるために全員で投票する(持ち点は10点。1項目に投票できるのは最高5点までとし、10点をどう配分してもよい)。その結果が図表1である。

 

さらにそれぞれの課題を分析し、共通認識を確認し「、結果」(問題点)と「原因」を抽出する。例えば「原価管理システムが構築されていない」という課題がもたらす「結果」(問題点)としては、「期末の原価計算に時間がかかる」「特定のベテランしか処理できない」「棚卸し評価を前年実績からの算出でやらざるを得ない」「営業部は変動の大きな製品の実績原価を予測するため、手間がかかる」など。その原因としては「間接費の配賦の基準が決まっていない」「生産管理システムが対応していない」「部門コードが階層化されていない」などが明らかとなる。

そしてそれぞれの課題・結果・原因の分析から、システム要件を導き出す。上記の場合では、「間接費の配賦基準を決める」「経理システムで部門コードの階層化を実施する」「生産実績・生産集計・マスター・検査実績に関するシステムを構築する」が要件として決定する。

このCPSで決定されたシステム要件は、図表2のとおりである。

 

この結果を基に、JBCCから提案書が出されたのは翌月の8月。そして10月に「i5520」上での「EV/製造」「EV/会計」、および基幹データをExcelで活用するため「NewWorkFriend-FX」、印刷処理を実行する「PrintProシリーズ」の導入が決定した。

CPSに参加した中の13名でプロジェクトチームが発足し、12月から翌年2月末までの3カ月で要件定義、3~5月で外部設計、6~8月で内部設計とプログラム開発を実施し、2006年12月に生産・販売・仕入・出荷・会計の各システムが、計画どおりに本稼働を迎えた。

「CPSで導き出されたシステム要件は非常に大まかで、実際にはその後の要件定義や外部設計で“青写真”を細かく詰める必要があります。しかしCPSの実施により、会社全体が個々の課題を認識し、プロジェクトを自分のことと考えるようになった効果は非常に大きいと感じます。通常は事前に、システム部門が個々の利用部門に対してヒアリングを実施しますが、これはいわば1対1のコミュニケーションであり、個々の部門の問題点は把握できても、システムが連携する他部門の問題は分からず、全社の合意は形成できません。もしこの2日間のCPSを部門個別に実施したら、おそらく半年以上が必要だったように思います」

小野氏はプロジェクトの起点とも言えるCPSの実施を振り返って、その役割と効果をこのように指摘している。

 

COMPANY PROFILE

•設立:1946年
•本社:東京都中央区
•売上高:74億円
•資本金:1億5150万円
•従業員数:139名
•事業内容:キャパシター用薬品、リチウム電池用薬品、原子力産業用薬品、半導体用薬品、試薬、その他 高純度薬品の製造および販売
•http://www.tomypure.co.jp/