事例|株式会社カネサ藤原屋

再起動したノーツサーバーに
アテンションを確認

午後3時の休憩に向け、オフィスでコーヒーが配られ始めた。業務部システム課課長の富樫修平氏もほっと一息ついて、課員と談笑しながらコーヒーカップに口をつけた途端、携帯電話に緊急地震速報を知らせるメールが着信した。怪訝な表情で携帯を手にとり、小さな画面を見つめる。小さな揺れが、すぐに激しい揺れに変わった。パーティションやイスが倒れ、書類が音を立てて床に崩れるたびに女子社員から悲鳴が上がる。

揺れが落ち着くと全員が本社のある3階から、建屋前の駐車場に降りた。カネサ藤原屋は飲食店に酒類や飲料、食料品を販売する一方、仙台市内に3 店の直営店を構える。仙台市若林区の本社が入る自社ビルの1階にも、地酒をはじめさまざまな酒類を販売する店舗がある。富樫氏がその店をのぞくと、瓶という瓶が床に落ちて粉々に割れ、多種多様なアルコールの入り混じった強烈な匂いが店内に充満していた。

停電したその日は午後5時頃から帰れる社員は帰宅の途に。それ以降、ガソリン不足もあり、自宅が遠い社員には自宅待機命令が出た。富樫氏も車通勤で自宅が遠く、停電で本社屋上駐車場のカーリフトが動かず、自家用車を出せないという事情もあって、そのまま自宅で待機した。

本社の通電は3月16日午後6時である(正確に言えば、本社のある地区はその前日に停電が復旧していたが、建物の安全確認を済ませた上で通電させたので少し遅れた)。

同社はSystem i(9406-520)上で販売管理や不動産事業に向けたテナント管理システム、直営店舗のPOSシステムを運用している。このほかノーツサーバー、メールサーバー、ファイルサーバー、CTIサーバーなどを運用する5 台のPCサーバーがある。System iを含めたサーバー群はすべて本社3階にあるサーバールームに設置していた。

また本社と仙台国分町店・盛岡支店・盛岡大通店・八戸支店・古川営業所・山形営業所・福島支店および秋田県大曲営業所の8 営業所は、KDDIのIP-VPNを利用してWANを構成している。

震災当日はファイルサーバーが1台、揺れで転倒した。停電後はUPSの電源供給を受け、System iは自動シャットダウンし、他のPCサーバーは手動でシャットダウンしている。

通電を確認した翌日の17日、富樫氏と2 名の課員で順番にサーバーを再起動した。ラックに収められたSystem iは相当な揺れを受け、設置場所から少し移動していたがシステムに問題なし。転倒したファイルサーバーも正常起動できたが、ノーツサーバー1台にアテンションランプが点灯し異常を知らせた。すぐに保守契約先に連絡するが、ガソリン不足のためようやく22日に来社して、故障状況を確認。結局、物流機能がマヒ状態にあったため、4月5日にディスク交換による修理が完了した。

またサーバー起動後にpingで拠点との回線状況を確認し、ネットワークには異常がないと判明している。

同社が通常業務に復旧したのは結局、震災から11日後の3月22日のことである。

17日以降、システムは稼働していたが、店舗・倉庫を含めて在庫の多くが割れるなどの被害が出たため、実在庫とコンピュータ在庫の差数を調整する必要があったこと。またメーカーや卸しからの商品供給が滞り、ガソリン不足で配送の足を確保できず、さらに顧客である飲食店の多くが一時的に休業したなどの状況を考慮した結果の措置であった。

富樫 修平 氏 業務部 システム課 課長
富樫 修平 氏
業務部 システム課 課長
本社ビル1階にある店舗では酒類の瓶が粉々に
本社ビル1階にある店舗では酒類の瓶が粉々に

現行本番機をバックアップ機に
コールドスタンバイを検討

同社では、使用する520が今年3月末にリースアップを迎えるため、今年度中に新しいモデルへリプレースする計画であったが、当面の処置としてリースを延長することにした。

富樫氏はマシンの更新を計画する際に、クラウド型のホスティングサービスも検討した。ただし、今回の震災で「結局、本社や拠点が停電すると、マシンがどこにあってもシステムが利用不能になる事実に変わりはない」とあらためて痛感し、今はデータセンターへの委託やホスティングサービスの利用は考えていないと語る。

今回、停電の復旧は本社が最後になり、営業所はその前に通電した。顧客である飲食店からの発注は電話やFAX、インターネットで届く。本社の基幹システムが使用できない間、営業所では受注を受けると手書きの仮伝票を発行して商品を納品。システム再稼働後に本伝票をあらためて発行するという代替措置をとったが、それで十分に納品業務は継続できたという。

「 事業継続の考え方は、その事業・業務の性格や特徴に左右されると思います。当社の業務は一瞬の停滞も許されないというような、高い継続性が要求されるケースとは違います。予算との兼ね合いもあり、今のところ早急な災害対策は必要ないと考えています」(富樫氏)

ただ現在の520を新しいモデルへ更新した場合は、現行の本番機をバックアップ機として、秋田県など本社から離れた営業所に設置したいとの考えはあるようだ。

その場合も、HAソリューションなどを導入し、リアルタイムにデータを同期して、本番機停止の際は即座にバックアップ機に切り替えるといったサーバーの二重化が目的ではない。 本番機の停止後に、バックアップ機を起動し、バックアップテープからデータを吸い上げ、約1日程度で本番機として運用可能になれば十分だと考えている。ちなみにバックアップテープは現在、サーバールームの耐火金庫に保管してある。

「何らかのツール導入の予算を確保できれば、本番機からバックアップ機のディスクにネットワーク経由でデータを送信することも考えられます。ただしその場合も、あくまでテープからの吸い上げに要する手間や作業を解消することが目的になります」と、富樫氏は語っている。スクリーンショット 2016-03-14 17.19.02

本  社 宮城県仙台市 震度 6強
停電復旧 3月16日
被災状況 建物等に損傷なし。本社は停電により3月22日まで業務を停止

東日本大震災発生からの主な動き

3 月16日 電源復旧
3 月17日 システム再起動、回線状況を確認、在庫調整作業開始。ノーツサーバーにアテンションを確認⦆⦆
3 月22日 通常業務が完全復旧。保守会社が来社
4 月5 日 ノーツサーバーのディスクを交換・修理完了

COMPANY PROFILE
創  業:1916年
設  立:1982年
資本金:9300万円
従業員数:184名
業務内容:業務用酒類・飲料・食品の販売、飲食物件の紹介等
http://www.kanesa-f.com/