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日本のCIOはレガシー・アプリケーションの刷新に注目 ~ Gartnerが「2022年 CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ」の調査結果を発表

ガートナージャパンは2022年2月8日、世界のCIOとテクノロジ・エグゼクティブを対象にした「CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ」最新版の結果を発表した。

同調査は毎年実施されており、今回は世界85カ国のあらゆる主要業種に属する2387人のCIOとテクノロジ・エグゼクティブ(以下、CIOと総称)を対象にしている。日本からの回答者数は212人。

それによれば、日本企業の「ビジネス・コンポーザビリティ」は世界全体の平均より低く、競合他社と比べて自社の競争優位性が高いと評価する割合が世界平均を大きく下回る、ことが明らかとなった。

ビジネス・コンポーザビリティとは、ビジネス情勢の変化を企業が察知して即応できるようにするマインドセット、プラクティス、ツールを組み立てる能力を指す。Gartnerは、その土台となるのは「モジュール化をビジネス資産に適用する」ことであると唱えている。

図表1 コンポーザビリティとビジネス・パフォーマンスの関係(出典:Gartner 、2022年2月)

「全社的なビジネス・パフォーマンス」「売上/賃金提供の増加」「ビジネス・リスクの軽減」「運営コストの削減」の4項目に対する自社のパフォーマンスへの評価を尋ねたところ、ビジネス・コンポーザビリティが高い企業ほど、自社のビジネス・パフォーマンスが同業や競合他社と比較して高い (「先行している」または「大幅に先行している」) と回答した割合が高くなった。

日本企業は全体として、世界のビジネス・コンポーザビリティが低い企業と同程度であり、改善の余地の大きいことが伺える。

同調査ではIT予算の伸び率、および各テクノロジー領域に対する投資意欲についても尋ねている。日本企業のCIOは、2022年のIT予算の平均増加率を4.3%と予測しているが、世界の全回答者の平均は3.6%、ビジネス・コンポーザビリティが高い企業でも4.2%であった。このことから日本企業のIT予算増加率は、世界企業平均よりも高いと言える。

また世界のCIOは、以下の順でテクノロジー領域への投資を増やすと回答している。

(1)サイバーセキュリティ/情報セキュリティ (66%)
(2)ビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクス (51%)
(3)クラウド・プラットフォーム (48%)

これに対して、日本企業のCIOの優先順位は以下のようになる。

(1)サイバーセキュリティ/情報セキュリティ (62%)
(2)レガシー・アプリケーション近代化 (47%)
(3)クラウド・プラットフォーム (44%)

「サイバーセキュリティ/情報セキュリティ」や「クラウド・プラットフォーム」を重視する点は、日本企業と世界の動向に違いはないが、日本企業で特徴的なのは、「レガシー・アプリケーション近代化」の優先順位が高い点である。

前回調査では同じ質問に、日本企業は「クラウド・サービス/ソリューション 」(60%) 、「基幹システムの改良/刷新」 (59%)、「サイバーセキュリティ/情報セキュリティ 」(57%)という順で回答しており、やはり「レガシー・アプリケーション近代化」(前年度の表記は「基幹システムの改良/刷新」) の投資順位の高さは変わらない。

ガートナージャパンは、日本企業がレガシー・アプリケーションの近代化に注力し続けている主な要因として、基幹システムのアップグレードが大量に積み残されていることを挙げる。その複雑さと、顧客にレガシー・アプリケーションを素早く破棄させたくないと考えているベンダーへの依存度の高さから、日本企業ではレガシー・アプリケーションの近代化が先送りにされ、業務効率化などが遅延しているとの指摘だ。

ちなみに日本では経済産業省が2018年9月に「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表して以降、レガシー・アプリケーションの弊害が再三指摘されていることから、日本のCIOがこの問題に目を向けていることも理由に挙げられるだろう。

ガートナージャパンでは、世界のCIOは新型コロナウイルス後のニーズに対応する中で、より先を見越してテクノロジー投資のバランスを見直そうとしており、日本企業も、そのように先を見越してテクノロジー投資のバランスを再検討し、レガシー・アプリケーション、インフラストラクチャ、データセンター・テクノロジーへの支出削減に努めるべきであると指摘している。

 

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