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IBM i 開発ツールエンジニアの雑記帳|Valence6.0 最新版進化のポイント(尾崎 浩司)

 

皆様、こんにちは。株式会社ミガロ.の尾崎です。今回から、当社が取り扱う3つの開発ツール(Valence、SP4i、Delphi/400)に関する技術的なトピックスや最新情報を順にご紹介していきたいと思います。 

今回は、2020年12月に登場した最新版Valence6.0の進化点をご紹介します。

 

Valenceバージョンアップの推移

Valenceは、IBM i に「最高のユーザーエクスペリエンスをもたらす」ことをコンセプトに、米シカゴにあるCNX社が開発し、2008年より販売している開発ツールです。

2017年より、日本国内での製品販売と技術サポートを当社ミガロ.が行っています。以下に当社での取り扱いを開始した2017年以降のバージョンアップの推移をまとめてみました。

バージョンアップの推移

 

当社が取り扱いを開始した2017年のValence5.1は、画面作成にSenchaと呼ばれるJavaScriptをベースとしたフレームワークを使用し、ロジックをRPGで作成するというWebアプリ開発ツールでした。

Senchaは、業務アプリ構築に最適なUIフレームワークで、使い勝手のよいWebアプリが構築できるのですが、開発にはSencha自体のスキルやJavaScriptの理解が必要なため、若干敷居が高かったのも事実です。

その課題が改善したのが、2018年に登場したValence5.2となります。Valence5.2からは新たに「Valence App Builder」が追加され、SenchaやJavaScriptのスキルがなくても簡単に設計/開発できるよう、「ウィジェット」と呼ばれる部品を組み合わせて簡単にアプリが作成できる仕組みが用意されました。

これにより、IBM iの使用したローコード開発が可能になりました。

さらに、2020年6月にマイナーバージョンアップとしてValence5.2+(プラス)となり、Webエミュレータ機能である「Fusion5250」が追加されました。

単にブラウザベースのエミュレータというだけでなく、App Builderで作成したWebアプリとの連携も可能なので、1つのValence環境上で、既存のPC5250アプリとWebアプリとの融合が可能になりました。

このように着実に進化してきたValenceですが、2020年12月にメジャーバージョンアップし、Valence6.0となりました。新バージョンでは、「新しいUIの採用」「セキュリティ機能の向上」そして「App Builderの大幅な機能強化」により、ツールの性能が大幅に底上げされています。

 

新しいUIの採用

まず、1つ目のポイントである「新しいUIの採用」についてですが、Valence6.0では、全般的にUIが刷新されました。Valenceの実行/管理に向けて用意されたポータル機能「Valence Portal」は、フラットなUIとなり、より現代的な画面へと進化しています。

また、従来の白基調(ライトモード)のテーマに加え、新たに黒基調(ダークモード)のテーマが選べるようになりました。ユーザーの好みにより、自由にテーマを変更することが可能です。

テーマはValence Portalだけでなく、私たちがApp Builderで開発したアプリも自動的に反映されるので、これまでに作成してきたアプリもそのままダークモードに変更できます。

新しいUIの採用

 

セキュリティ機能の向上

2つ目のポイントである「セキュリティ機能の向上」についてですが、ログイン認証が強化された点が挙げられます。

ログイン方法としては、従来からIBM iユーザープロファイルを使用したログイン、Valence独自のユーザーを定義してのログイン、さらに社内にあるLDAPサーバー(ActiveDirectory等)を使用したログインをサポートしていましたが、いずれの場合もユーザー/パスワードによる認証のみでした。

Valence6.0では新たに2段階認証機能が追加され、スマートフォンに導入した認証アプリ上に表示された確認コードの入力をログイン認証に追加できるようになりました。

これにより、たとえユーザー/パスワードの情報が漏洩したとしても、利用者個人のスマートフォンがないとログインできないので、安全性が向上したといえます。

セキュリティ機能の向上

 

また、アプリ開発機能App Builderの使用可否制御も強化されました。これまでも、Valence Portalのグループ(権限)管理により、ユーザーごとにApp Builderを使用したアプリ開発が可能か不可能かを制御できましたが、開発可能なユーザーは、制限なくすべてのApp Builderの機能が使用できていました。

Valence6.0では、App Builderの3つの作成ステップである「データソースの作成」「ウィジェットの作成」「アプリケーションの作成」のそれぞれについて、権限設定がユーザー単位に実行できます。

また、部品を定義する「ウィジェットの作成」でも、「Edit Grid」といったデータの更新を伴う特定のウィジェットのみ使用不可にするといった制御も可能です。

これにより、従来は社内の一部(開発担当者)のみ、App Builderを使用したアプリ作成が可能であるといった運用が必要でしたが、これからは、たとえば開発担当者が用意したデータソースを使用して、一般ユーザーでも自由にグラフやグリッドを使用したウィジェットやアプリの作成が行えるといった運用が可能になります。

 

App Builderの大幅な機能強化

3つ目のポイントである「App Builderの大幅な機能強化」についてご紹介します。

まず部品となるウィジェットですが、データを一覧形式で閲覧するウィジェットは、これまで表形式で表示する「Grid」とクロス集計表を表示する「Pivot Grid」の2つでした。

これに対して、新バージョンでは新たにタイル形式で一覧表示する「Tiles」ウィジェットと時系列に一覧表示可能な「Timeline」ウィジェットが追加され、一覧画面の表現力が向上しました。

App Builderの機能強化

 

もちろん、既存のウィジェットも機能が強化されています。

たとえば、データの詳細を表示/編集する「Form」ウィジェットのレイアウト設計の自由度が向上し、直接画像を表示したり、フォントや色の設定が自由にできるようになりました。

App Builderの機能強化

 

さらに「Form」ウィジェットで、入力項目の値をユーザーが変更した時に、即RPGを呼び出せるようになりました。

これまで必要だったボタンのクリック等といったユーザー操作のトリガーなしに、RPG呼び出しが行えるため、インタラクティブな画面制御が実現できています。

さらに、データの一覧表示と編集機能を併せ持つ「Edit Grid」ウィジェットも機能が向上しました。

これまでのグリッド(一覧表)の行クリックでレコードを選択し、ポップアップ形式の別画面で明細を入力する方法に加え、グリッド上で直接セル編集が行えます。

いわゆるPC5250画面プログラムでのサブファイル形式の入力画面と同様の入力操作が実現できます。

Valenceは、「PCブラウザ」を使用したWebアプリの実行に加え、スマートフォンやタブレット上にインストールした「Valence Portalアプリ」を使用したモバイルアプリの実行をサポートしています。

このモバイルアプリ開発機能もValence6.0で強化され、たとえばデバイスのカメラで撮影した写真をそのままIFS上にアップロードしたり、カメラを使用したバーコードやQRコードの読み取り機能をモバイルアプリに追加できるようになりました。

今回、すべての機能強化点をこのページ内で紹介することはできませんが、Valence5.2から使用できるようになったローコード開発機能であるApp Builderは、今まで開発作業を簡素化するために機能はできるだけシンプルに実装していました。

しかし今回のバージョンアップでは、全体的に操作性や機能性を向上させており、「こんな機能があれば便利」とご要望いただいた機能をトータルにサポートすることで、大幅に機能強化したのが最大のポイントとなります。

 

まとめ

今回は、2020年12月に登場した最新版Valenceの進化ポイントについてご紹介しました。

Valenceをすでにご利用いただいている方は、製品の無償バージョンアップが可能ですので、ぜひバージョンアップいただき、新機能をお試しください。

また、Valence製品に少しでも興味をお持ちいただいた方は、当社にて製品オンラインセミナーを随時開催しておりますので、ご参加いただければ幸いです。

次回は、Delphi/400で使用可能なEnterprise Connectorsについてご紹介したいと思います。お楽しみに!

 


IBM i 開発ツールエンジニアの雑記帳

第1回 3つのツールの使い分けのポイント(1)
第2回 3つのツールの使い分けのポイント(2)
第3回 Valence6.0 最新版進化のポイント

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