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01 開発・モダナイゼーション

IBM i市場を支える
3つの開発ツール群

IBM i市場には、大きく分けて3つの開発ツール群がある。すなわち、「RPG活用型ツール群」「オープン系ツール群」「独自ツール群」である。

まず、RPGという歴史の長い開発言語による資産やスキルを開発に活かすのが、「RPG活用型ツール群」である。

IBM iの誕生当時から提供されてきたRPGは、今も多くの企業で利用されており、システム部門にはRPGによる開発・保守のスキルが蓄積されている(現在IBMにより機能拡張が実施されているのはRPGⅣ、すなわちILE RPG であるが、既存資産の多くはRPGⅢで開発されている)。それらを活かしながら新しいニーズに対応する狙いで提供されているツール群であり、代表的な製品には「SP4i」「Profound UI」「openlook」などがある。

またJavaやPHP、JavaScriptなどオープン系の世界と共通する言語やツールを使って、Webやモバイルなど新しいアプリケーションに対応していくのが、「オープン系ツール群」である。

これにはたとえば、Javaアプリケーションを自動生成する「GeneXus」、JavaScriptを生成する「Valence」、intra-martをIBM iのPASE上でネイティブ稼働させる「POWER iAP on i」、PHPを利用する「Zend Server」や「Web Smart PHP」、IBM iのDBと連携してExcelベースのアプリケーションを開発する「EVOLIO」などがある。

そして高い開発生産性を備えた独自の統合開発環境を提供し、基幹システムからクライアント/サーバー、Webアプリケーションまで幅広く対応するのが「独自ツール群」である。代表的な製品には、「LANSA」「SOFLA AG」「Delphi/400」などがある。

最近ではRPGの運用が長いユーザーでも、既存システムの改修や追加開発は今までどおりRPGで行うものの、新たな業務要件への対応、あるいはWebやモバイルアプリケーションなどの新規開発には、RPG以外の言語やツールを選択するケースが増えつつある。

資産を活用して先へ進む
IBM iのモダナイゼーション

IBM i市場での開発動向で今、注目されているのが、「モダナイゼーション」である。

前述したように、IBM iユーザーは運用年数の長いRPGアプリケーションを、新しい業務要件やニーズに対応させていく必要性に迫られている。また長年にわたり改修・追加開発を繰り返してきた結果、仕様書や設計書などのドキュメントは失われ、システム構造をよく知るベテラン担当者の退社・異動などにより、システム内容のブラックボックス化が指摘されている。

こうした課題に対応するため、今ある資産を最大限に活用・継承しつつ、今後求められる業務要件や新しいITの利用モデルに対応していく動きが、IBM iのモダナイゼーションである。

その最初のステップは、RPG資産の可視化にある。既存のRPGソースやオブジェクトを分析し、その構造を見える化し、必要に応じてドキュメントを作成する。最近では「SS/TOOL-ADV」「Arcad OBSERVER」「Trinity」「ADT」など、モダナイゼーションを視野に入れた各種の可視化ツールが提供されている。

IBM iユーザーが最も着手しやすいモダナイゼーションの代表格は、画面のWeb化/GUI化に代表されるインターフェースの刷新である。

IBM iで使用される5250画面は、いわゆる「グリーンスクリーン」と呼ばれるCUI画面である。データ入力の効率性は高いが、Windowsやブラウザの操作に慣れた目から見ると、時代遅れのイメージが強く、画面の表示にも制限がある。そこで既存の5250画面をWeb化/GUI化することでインターフェースを改善し、使い勝手をよくしようというわけだ。

この領域の製品はすでに2000年代初頭から提供されており、昨今では単純に5250画面をWebへコンバートするだけでなく、多彩な編集機能や自動化機能を加えたツールとして進化している。代表的な製品には、「aXes」「RAMP」「KONA2」「Profound Genie」「looksoftware」などがある。

インターフェース領域は年々拡大しており、なかでも注目されるのがモバイル化への動きであろう。最近では、さまざまな業務でモバイル端末を活用するケースが増えてきた。

既存のビジネスロジックに手を加えることなく、最新のスマートデバイスで基幹データを活用できるモバイルアプリケーションは、IBM iの資産を活かして業務の生産性向上やビジネススタイルの変革に結び付けるモダナイゼーションであると言える。

RPGでネイティブアプリケーションの開発が可能な「LongRange」や、定義済みの検索条件(クエリー)に合致するデータを、表やグラフ形式でリアルタイムにモバイル端末で表示・照会する「Business4Mobile」など、モバイル開発に特化して機能を充実させた個性的なツールが登場している。

IBM iの世界と
オープンを融合する

IBM iの世界では現在、オープン系の世界で標準とされている開発手法や開発環境との統一を図る動きが見られる。

IBM iの開発・運用環境や人的リソースを孤立させることなく、IBM i技術者のスキルアップを図るとともに、オープン系技術者がIBM iの開発で感じる違和感を払拭し、開発の人的リソースを幅広く流用して充実させるのが狙いだ。

IBM iはその歴史的経緯から、独自のテクノロジーのみで構成されていると思われがちだが、オープン系の世界にも広く門戸を開いている。前述したように、JavaやJavaScript、PHPなどは、いずれもIBM iで利用可能。たとえば「Rational Developer for i」ではEclipseベースでJavaやPHPと同じように、RPGやCOBOLの開発が行える。

またRPGではあるが、オープン系の言語記述方法と親和性の高い「フリーフォーマットRPG」(以下、FF RPG)もリリースされており、RPG開発の新たなスキルアップを促す意味で注目されている。オープン系技術者から見たRPGに対する違和感を解消できるとも指摘されており、最近では既存のRPGⅢのソースをFF RPGへ変換する「Arcad TRANSFORMER」というツールも登場している。

さらに個々の属人的なプログラミングスキルに依存することなく、効率的かつ生産性の高い開発・保守を維持していけるように、プログラムの自動生成機能を備えたノンプログラミング型開発ツールの活用が増えている。

たとえばJavaアプリケーションを生成する「GeneXux」、RPGⅣのソースを生成する「Profound UI」や「openlook」、JavaScriptを生成する「Valence」、自動生成プログラムに業務ロジックのみを記述すればRPGやCOBOLプログラムのほとんどを自動生成する「SP4i」など。また「SOFLA AG」は、ITの知識やスキルのない担当者でも設計・開発が可能で、高品質なシステムを構築できる独自のノンプログラミング型ツールである。

完全自動生成型ではなくとも、コンポーネントやフレームワーク、ウィザードなどを最大限に活用することで、可能な限りプログラミング作業を軽減する工夫は、さまざまな開発ツールで見られる。IBM iの開発ツールは、進化し続けている。[i Magazine編集部]

図表1 画像をクリックすると拡大します】

 

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●記事で紹介したツールのベンダー

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三和コムテック
ソルパック
ミガロ.
ランサ・ジャパン 
ソフラ
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