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DX認定制度の申請書をテキスト分析、大企業は「事業、グループ、戦略」、中小企業は「変革、業務、向上、データ」を多用 ~IPAが発表、企業規模別・業種別、不合格理由も分析

IPA(情報処理推進機構)は1月30日、DX認定制度の審査を通過した申請書をテキスト分析した「DX認定申請書分析レポート ~申請書の記述内容の分析と作成のポイント」を公開した。A4版 101ページのボリュームがある。

DX認定制度とは、DX推進の準備が整っている事業者を国が認定する制度。2020年11月にスタートし、2023年9月までに802事業者が認定を受けている。内訳は、大企業~中堅企業62%、中小企業35%、小規模企業2%。業種別は、「農業・林業」を除くほぼ全業種。最近同制度への認知が広がり、2022年9月~2023年9月のDX認定企業数は「過去の1.6倍」、そのうち中小企業は約2.6倍に伸びているという。

今回の「DX認定申請書分析レポート」は、「DX認定制度の申請書の記述内容を分析し、申請内容の傾向を捉えるだけでなく、DX認定制度の申請を検討している企業の補助資料として活用いただく」のが目的。申請書のテキストマイニングから、申請書で使用されている語句や記述の違いなどを、企業規模別・業種別に分析し、まとめている。

本レポートの目次は以下のとおり。

第1章:導入とDX認定制度の説明
第2章:分析の対象と手法
第3章:認定事業者(審査通過)の申請書のテキスト マイニングの分析結果
第4章:企業規模別による分析結果
第5章:業種例による分析結果
第6章:まとめ
付録1:よくある不備のランキング
付録2:申請書の見本

また、DX認定制度の申請書は、下記の8つの設問で構成されている。回答は自由記述式。

(1) 企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定
(2) 企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策(戦略)の決定
  (2)① 戦略を効果的に進めるための体制の提示
  (2)② 最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的方策の提示
(3) 戦略の達成状況に係る指標の決定
(4) 実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信
(5) 実務執行総括責任者が主導的な役割を果たすことによる、事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握
(6) サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び実施

企業規模別による分析結果

設問(1)「企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定」への回答を企業規模別で分析したところ、次のような傾向が見られた。

・大企業~中堅企業と中小企業に共通する頻出単語・文章
  →dx、お客様、社会、経営
  →「DX推進することで社会の変化に対応」「社会や顧客に貢献」

・大企業~中堅企業に頻出する単語・文章
  →事業、グループ、戦略
  →記述例:「企業経営の方向性に従い、グループ全体として『人を活かすDX』をビジョンとして定めたうえで、グループ各社のDX戦略を統括しながら、以下3つの方向性で情報処理技術の活用を推進しています」

・中小企業に頻出する単語・文章
  →変革、業務、向上、データ
  →記述例:「弊社のDX戦略の目的は、より効率的でスマートな生産プロセスの確立や品質の向上、そして顧客ニーズへの迅速な対応力の向上をはかることとともに、ITを活用した人材の育成に力を入れ、新規事業展開を実現していく事です」

本レポートでは、「大企業~中堅企業では「グループを含めた事業戦略」を記述する特徴があり、中小企業では「データを活用した業務改善、効率向上に注力」といったより業務に近い内容の記述が多いと考えられる」と分析している。

企業規模でわけた認定の申請書の共起ネットワーク
企業規模でわけた認定の申請書の共起ネットワーク

業種別による分析結果

設問(1)「企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定」への回答を業種別で分析した結果のうち、製造業と情報通信業では、次のような傾向が見られた。

・製造業と情報通信業に共通する頻出単語・文章
  →デジタル技術、開発
  →「DX推進から事業を通じて顧客や社会に貢献」

・製造業に頻出する単語・文章
  →事業、グループ、戦略
  →記述例:「DXの導入のビジョンとして、「デジタル技術活用」と「デジタル基盤」の2大施策を柱とし、デジタル集団に進化することで、競争力の強化を図る。デジタル技術活用 研究開発 ・開発スピードアップ ・量産スケールアップ最適化」

・情報通信業に頻出する単語・文章
  →当社、サービス、業務
  →記述例:「グループ全体でDXを推進し「お客さまサービスの変革」と「業務の変革」の実現を目指しています」

本レポートでは、「製造業では「デジタル技術を活用した新技術の開発」について記述する特徴が多く、情報通信業では「デジタル技術を活用した業務環境の変革と顧客へのサービスの提供」について記述する特徴がある」と分析している。

製造業と情報通信業の認定の申請書の共起ネットワーク
製造業と情報通信業の認定の申請書の共起ネットワーク

付録1の「よくある不備のランキング」では、設問(1)~(8)ごとに不備の内容をまとめている。設問(1)の「よくある不備」については、

・記入内容そのものが不十分
・誤記・記入漏れ
・意思決定機関の説明が不足
・(2)の戦略見直しに伴う対応
・CS(チェックシート)と申請書の相違
・CSの不備
・公表媒体が確認できない
・法定様式を逸脱

という項目を挙げ、「記入内容そのものが不十分」については、

・自社の変革の方向性の説明が不足している
・経営ビジョンの説明が不足している
・デジタル技術による社会及び競争環境の変化が自社にもたらす影響について認識の説明が不足している

と、具体的な不備を指摘している。

DX認定制度の認定を受けた事業者を対象としたアンケート結果では、約80%の認定事業者がDX戦略の推進に効果があったと考えており、

・取得するためのプロセスは、自社を見直す大変良い機会になった
・新規営業において、お客様からの反応が良くなり売上増につながった
・デジタル人材の応募が増え、実際に人材確保につながった

という前向きなコメントが多くあり、さらに「自社がDXに積極的に取り組んでいる企業であることを社内外に向けてアピールできるだけでなく、日本政策金融公庫による金利優遇や税制による支援措置、人材育成のための訓練に対する支援措置など公的な支援措置を受けることができる」という効果をあげる声があったという。

・「DX認定申請書分析レポート ~申請書の記述内容の分析と作成のポイント」
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-nintei/nq6ept000000143u-att/dx-nintei-report.pdf

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