IPA「DX白書」は、企業インタビューとコラムを先に読むべき ~日米企業のDX動向を比較調査、大差の違いが浮き彫りに。全384ページを無償公開 

IPA(情報処理推進機構)は10月11日、「DX白書2021」を公開した。DXをテーマとする白書はIPAとして初めて。A4版・384ページの大型レポートだが、IPAサイトから無償でダウンロードできる(こちら)。

DX白書2021の特徴は、日本と米国の企業のDXへの取り組み状況を調査し、比較・考察した点。日本では今年(2021年)7月5日~8月6日に、米国では7月8日~7月19日に調査を実施し、534社(日本)と369件(米国)の回答を得た。

内容は下記の4部+付録で構成されている。

第1部 総論
第2部 DX戦略の策定と推進
第3部 デジタル時代の人材
第4部 DXを支える手法と技術
付録  AI技術、日米欧中の制度政策動向、コラム

日米企業のDXへの取り組み状況は、次のような結果だった。日本は「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取組んでいる」「部署ごとに個別でDXに取組んでいる」(図表のピンク色より左側)の合計は55.8%であるのに対して米国は79.2%と、20ポイント以上の差がある。また、「取組んでいない」は日本33.9%、米国14.1%で約20ポイントの差があった。

なお同白書では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義し調査を行ったという。

 

DXへの取り組み状況

ビジネスニーズに対応するためのITシステムに求められる機能について達成度を尋ねた調査では、「変化に応じ迅速かつ安全にITシステムを更新できる」「構造が柔軟で外部の有用なサービスと連携して活用できる」「必要で適切な情報を必要なタイミングで取り出せる」「部門間で標準化したデータ分析基盤」の4項目で達成度の差が浮き彫りになった。

 

ビジネスニーズに対応するためのITシステムに求められる機能

 

開発手法の活用状況の調査では、「デザイン思考」「アジャイル開発」「DevOps」の各項目で、活用の度合いに30ポイント以上の開きがあった。白書は「米国企業では、各手法の活用状況の傾向が似ており、各手法がセットで活用されている可能性がうかがえる。顧客に新しい価値提供をするためには、適切な開発手法を選択し活用することは極めて重要である。IT部門と事業部門が連携することによって「デザイン思考」などの活用促進が望まれる」とコメントしている。

 

開発手法の活用状況

 

開発技術の活用状況は、以下のような結果になった。「クラウドに関しては、他の技術と比較して活用の割合が高いが、ハイブリッドクラウドの活用の割合は比較的低い。複数クラウドの効率的な運用がまだできていない可能性がある。「マイクロサービス」や「コンテナ」に関しては、日本企業の導入は一部にとどまっている。ビジネス側からの迅速なシステム更新へのニーズの高まりに対応するためには、今後これらの技術活用を視野に入れるべきである」と白書は述べる。

 

開発技術の活用状況

 

データの整備・管理・流通の課題について尋ねた調査では、日本企業では「人材の確保が難しい」(41.5%)、「全社的なデータ利活用の方針や文化がない」(37.1%)、「データ管理システムが整備されていない」(31.5%)がトップ3だった。白書は「米国企業では、データ分析の活用を推進するChief Data Officerの任命やデータ分析を組織横断的な推進するCenter of Excellenceを設置するなどの施策によって、こうした課題の解決を図っている。日本企業においても組織的な対策が望まれる」と指摘している。

データの整備・管理・流通の課題

 

今回の白書は、DXへの取り組みについての日・米企業の違いを多面的に浮き彫りにした点が大きな特徴であり成果である。DXに取り組む(あるいは検討中の)企業にとっては、白書が示す調査データを自社の状況と照らし合わせ、どのように活用・適用するかが課題になるだろう。

その点で、白書が「付録」としている「企業インタビュー」や識者の「コラム」が参考になると思われる。むしろ、「企業インタビュー」や「コラム」を先に読んだうえで、調査データに目を通すほうが、調査内容をよりリアルに受け取れるとも思われる。

企業インタビューには次の14社が登場する。各社のDX戦略の概要や組織作り、人材、企業文化、DX推進における課題、データ活用の取り組み、成果評価とガバナンス、 将来展望などがレポートされていて、DXの具体的なイメージがつかめ、読み応えがある。

・i Smart Technologies株式会社、旭鉄工株式会社
・旭化成株式会社
・SGホールディングス株式会社
・中外製薬株式会社
・日本郵船株式会社
・株式会社りそなホールディングス
・旭化成株式会社
・清水建設株式会社
・日本郵船株式会社
・株式会社ベネッセホールディングス
・旭化成株式会社
・インフィック株式会社、株式会社まごころ介護サービス
・SBIインシュアランスグループ株式会社、SBI損害保険株式会社
・日本航空株式会社

「コラム」も識者各様の視点があり、DXには多様な取り組み・視点があることが示されている。以下は、コラムタイトル|筆者名。

経営戦略とDXの取組を関連付けるには|株式会社三菱ケミカルホールディングス 執行役員 Chief Digital Officer 浦本 直彦
日本企業に求められる「攻めのDX」|ネットイヤーグループ株式会社 取締役 チーフエバンジェリスト 石黒 不二代
ダイナミック・ケイパビリティをDXに適用する|慶應義塾大学商学部・大学院商学研究科 教授 菊澤 研宗
アジャイル変革とスマートコラボレーション|ハーバードロースクール 特別フェロー Heidi K. Gardner
DXに必要な人材像、エンジニアよりも重要な存在|株式会社日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 所長 戸川 尚樹
海外比較を通じたDXに関する日本の人材育成とリカレント教育|早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部 教授 鷲崎 弘宜
DX時代のリベラルアーツを体現したパターンランゲージ『トラパタ』のススメ|株式会社豆蔵 取締役 グループCTO 羽生田 栄一
人材像の変化と対策|名古屋商科大学大学院 准教授 小山 龍介
データドリブンな企業になるための変革と人材育成|Design for People, AI Transformation Leader Jeff Hunter
AI倫理とは何であるべきか?|札幌市立大学 理事長・学長 中島 秀之
DX推進の困難とそれを乗り越えるための手法|北陸先端科学技術大学院大学 知識科学系 知識マネジメント領域 教授 内平 直志
外部組織を交えたデータ流通におけるブロックチェーンの活用|独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター イノベーション推進部 主任 安田 央奈
量子コンピューティングの自社導入に向けて|独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター イノベーション推進部 主任 鷲見 拓哉
いかにして新しい手法や技術を組織に取り入れるか|Digital Transformation Executive & Principal Consultant Janus Insights LLC Gustav Toppenberg

 

「DX白書2021」https://www.ipa.go.jp/ikc/publish/dx_hakusho.html

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